ルーミスシジミ(Panchala ganesa)近年照葉樹林文化という言葉をよく耳にする。照葉樹とはカシ、シイ、ツバキ、クスなどのような光沢のある葉を持つ常緑広葉樹のことである。その分布は日本の西南部から台湾、中国中南部を経てヒマラヤの一部に達する東アジアのモンスーン地帯に広がっている。この地域の文化には共通するところが多く、照葉樹林文化と呼ばれている。ルーミスシジミはこの照葉樹林に生息するチョウであり、分布も照葉樹林帯とほぼ一致している。
しかし、この照葉樹林は人の生活範囲と重なるため、古くは農耕によって、近代は植林や開発によって最も減少した樹林帯となった。徳島県おけるルーミスシジミの分布は局地的で、県南部の山間部にわずかに残された照葉樹林がその生息地である。また、ルーミスシジミの食樹であるイチイガシは照葉樹林内でも優占的な樹種でないため、生息地における個体数は少ない。
生息地近くの集落のある老人は「戦時中の食糧難の時代には食用にするため、シイやカシの実(ドングリ)を採りに町から多くの人が山を訪れ、棄てられたドングリの殻で小山ができるほどであった。戦後になると、シイやカシはほとんど伐採されスギやヒノキが植林された。山に食料がなくなったため野猿が集落に出没して田畑を荒らすようになった。」という話をしてくれた。
現在の生息地はごく限られた地域であり、この照葉樹林がこれからも残されることを祈るばかりである。
なお、ここに掲載した写真を撮影するに当たって佐々木孝明氏に情報提供ならびに撮影協力をいただいた。

ルーミスシジミが生息する森 7/31 1994
次回はチャマダラセセリの予定。