生活技術

山での生活技術は登山行動の中のきわめて重要な要素であり、生活技術のよしあしは以後の登山行動に大きな影響を及ぼす。


1.山小屋も利用については「後から使用する人達に支障をきたさないようにすること」をまず念頭におき、実際にあたり次の諸点に留意したい。

(1)山小屋所在の確認
  
@最新の山小屋情報によって調査しておく。
A地図上での検討を十分行なう。
B山小屋付近の地形や目標物に十分注意をはらう。
山小屋の新設、撤去、倒壊の事例は割合多く、古い案内書と異なる事があるので注意する。
パーティの力を考え、日程に無理はないかを検討し、地図上で小屋の位置及び付近の地形を頭に入れ、実際に
その小屋を発見するための目標物を調べるとともに、道標その他の目標物を良く確認しておく。特に、
積雪期には、積雪のため地形がかなり違ってみえたり、雪で小屋が埋まることもあるので十分注意したい。


(2)山小屋の種類・設備・内容等の調査

@営業小屋か非営業小屋か、または、営業期間や使用方法などについて調べておく。

A宿泊可能人数、食料及び燃料の有無。寝具の状態など調べておく。

B宿泊料金及び自炊の可否について調べておく。

C通信設備(電話、トランシーバーなどあるか)

D非営業小屋にも所有者、管理者がいるので必ず、事前に許可を得ておき、使用料などについて連絡を忘れないようにする。

(3)山小屋使用上の注意

@便所、水場の確認をする。

A整理、整頓を心がける。

B火災予防に万全を期する。

C設備、器具を壊さない。

D同宿者に迷惑をかけない

E積雪期には除雪、換気を注意する。

F小屋周辺の標識が新たに必要な事もある。

火気の取り扱いは最も注意が必要で、無人小屋の撤収時には、残り火の始末に万全を期し、室内の片付け、清掃、戸締り、旋錠
など後から利用する人達がまごついたり、不快の念を抱かないようにする。
積雪期には、生活中、外からの雪を持ち込まないよう極力努力する。戸締りを入念にしないと、隙間から雪が吹き込んできて室内に雪がつまって
しまう事がある。
停滞の日など、保温に気張りすぎて換気を怠ると、一酸化炭素中毒にかかる事もあるので注意する。




2.幕営   

(1)天幕の種類と特徴

@使用目的により形式、材質を考慮する。

A耐久、耐水、耐風、通気性について留意する。
天幕の種類の選択は使用目的や場所によって、その形式、あるいは材質の採用が異なる。
軽量化のみを重視して耐久、耐水、耐風、通気性をなおざりしてはいけない。
夏山では、雨の心配が多いので、ナイロンやテトロンよりビニロンなどの防水性の良いものを選び
さらに、フライシートを用意すると雨に対していっそう強くなるばかりでなく、日中も涼しくなる。



(2)場所の選定

@国有地、私有地、幕営指定地かどうか調査し事前に必要な手続きをしておく。

A無積雪期には、増水、落石、落雷、強風など、積雪期には、なだれ、吹き溜まり、風向きまどに対する安全を確認しておく。

B携帯天幕の形式と大きさにより、適当な幕営地を選定する。

C自然保護と衛生(水質など)に留意する。
設営場所は計画の段階でだいたいの予定を決め、行動が日没を過ぎないよう、少なくとも日没1〜2時間に到着し、暗く
なるまでに天幕を張り、食事も終わって翌日のできあがるぐらいが望ましい。



(3)設営技術

@全員の作業分担をきめる。

A整地、風向、排水、入り口の方向について十分考慮する。

B敏速、確実、適正な順序で行なう。

C積雪期には暴風壁の構築に注意する。



(4)幕営生活上の注意

@食料、燃料などの区分管理、特に物品の紛失に注意する。

A石油コンロ、ガスコンロは使用の前後に特に注意して行なう。

B水場(雪のブロック)の衛生につとめる。

Cゴミ、及び汚物処理に注意する。

D天候の変化に注意し、荒天が予想される時は、保守するか避難するか冷静沈着に判断し実行する。

E積雪期には天幕内に雪を入れないように注意する。

F天幕の周囲に標識を設置する。

天幕の生活ではすべてが乱雑になりやすいので整理、整頓を心がけ、道具を使用したたびにいちいち無精せず片付ける習慣をつける。
寝袋などはぬれることを防ぐ為にも、使わない時はきっちりと巻いておく。テントの入り口の一方側を清潔側と決めて、炊事用具、食料など置き
燃料などと混じらないようにする。特に冬のテント内は寒気も厳しく、湿気が多くなりやすいので衣類、寝袋、特に登山靴を凍らせないよう保管に
十分注意する。

テントの出入り口には、雪を内部に持ち込まないよう、炊事にあたってもなるべく湿気を出さないよう細かい点まで気を配る。
テント内で不用意に動いて、水の容器や鍋などひっくり返す例も多いので、声をかけてから動作する事。



(5)天幕の撤収

@敏速、確実に行なう。

A用具、付属品の数量を点検する。

B現状回復につとめる。

撤収時は、気分もゆるみがちであり、時には荒天の中で短時間でやらないこともある。したがっててぎわよく行なう事が肝要である。
まず、天幕を背負う者を除き、他の者はパッキングをだいたい済ませ、全員靴を履いて外に出る。ついで、全員で張り綱をはずし、飛ばされないように
テントを平らに潰してから、グランドシートのペグを風下からはずし、テント、シート類をたたんで、付属品の数を確認して袋につめる。


(6)不時露営(フォースト・ビバーク)

山行の途中何らかの都合で目的地に到着しない内に緊急、かつ不十分の状態で仮泊を余儀なくされることがある。これを不時露営という。

(1)決定の時期

@天候が激変したり、またはルートを見失った場合、行動を続行すべきかどうか慎重に判断する。

Aメンバーの健康状態が悪化し、そのため行動を中止すべきか、時機を失しないうちに決定する。

B出来れば、より快適な場所を探すくらいの余裕を持って決定したい。(時間的に、体力的に)

(2)露営点の選定

@落石、増水、落雷、なだれ、吹き溜まりなどに対する安全を確認する。

A岩陰、樹木、雪などの地形、地物をどの程度利用できるか考える。

B風、雨、雪を十分防ぐ事を配慮する。予定が狂い、日没が迫ってきた時は、日没1時間ぐらい前からの選定を始める。

(3)不時露営中の注意

@保温、防湿に留意する。
A食料、燃料の管理をしっかり行なう。

B不安感、いらだちを解消するよう努める。
C睡眠を十分とるよう工夫する。
D焚き火をすることを考える

E持っているもの、その場で手に入るものを極力利用する。
F必要により場所の表示を行なう。
 いったん不時露営に入った場合は、荒天時、吹雪など全員疲労のはなはだしい時なので
気を張りつめる。リーダーは全員の気がめいらないように努める。
雨や雪でからだが濡れて眠くなり始めたら凍死の前兆である。
メンバー同士で注意しあい、リーダーはあらゆる手を尽くして、このような事態を未然に防ぐように
出来るだけ保温に努めて、無用な体力の消耗を避けるように配慮する。


(4)脱出
いつ、どのようにして不時露営を切り上げて脱出するかの判断は非常に難しい。
メンバーの体力の消耗を考え、今後のルートを詳細に検討し、リーダーの適切な判断と行動が期待される。

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