登山技術

基礎技術

1.登山の基本的心がけ

(1)行動前におけるリーダーの留意点
@メンバーとその健康状態の確認
Aパッキングの点検
B各分担の確認
C目的、行程、行動の徹底
D分散行動の時の連絡方法の徹底

(2)行動前におけるメンバー各自の留意点

@パッキング
Aくつ、着衣の点検
 早朝出発の際は寒いので厚着しやすいが、出発すればすぐ体温が高くなり暖かくなるから、少し寒くてもあらかじめ、防寒服は脱いで出発した方が、時間のロスが少ない。
B体調の再確認。

2.登山の基礎的技術

(1)歩き方

@登降法
 体重の移動はスムーズに行い、一歩一歩前に出した足の真上に静かに移動していく。したがって、やや左右にからだが自然に軽く蛇行して行く。特に、登りでは、前に出した足に全体重を移行すると同時にひざをじわじわと伸ばし、上体の前進につれて足が自然に前に出るようにする。踏み降ろした足は膝をじんわりと伸ばす事によって地面を強圧する。体重をリズミカルに移し、足の裏全体にのせたという感じである。

上体は何時も真っ直ぐに保ち、身体全体をゆったりとし、つま先に力をこめて、膝を伸ばして傾斜にフラットに足を踏み出す。この時、決して腰を引いてはいけない。腰が引けると重心は踏み出した足の裏よりあとに残りスリップしやすい。靴紐は登りはゆるめ、下りはきっちりと締めないと爪を傷める。

Aリズムの取り方
 リズムは呼吸の取り方で自然に決まってくる。登山では呼気中に一歩。吸気中に一歩。かくして呼吸と徒度とが合ってくる。歩度が呼吸より早くなると苦しくて登行不可能になる。

B休憩の取り方
山登りは登りに1/3、下りに1/3、余力を常に1/3残して行動せよと言われている。その為には適度の休憩で疲労を取り除くか、又は疲労の進行を防ぐように心がける。休憩時間の配分は、コースの状況、メンバーの体調、天候、全コースの所要時間と睨み合わせて考えなければいけない。大体の標準は40〜50分ぐらい歩いたら5〜10分の小休止をとるが、コース、メンバーの状態により、リーダーは適当な時間配分を考える。小休止では、リーダーは何分休憩するか始めに全員に知らせておかなければならない。休憩の場所は道から外れ、登山者の邪魔にならないようにする。

大休止では、腰を下ろし、足の手入れ、衣類の着脱などやって十分休憩する。行動中の食事の回数は2〜3回に分けた方が、疲労回復の点でよい。特に、朝の出発後や大休止のあとは、10〜20分ぐらい歩いたら一度全員停止してパッキングの不備な点、靴の当たり具合など点検、修正し、また衣類の調整や軽い体操などすると良い。


C水の飲み方
 人間の身体は60%が水で、20%ぐらいの水の不足で脱水状態となり危険となる。したがって、常に水分の補給が必要で、喉が渇いたら適度に水を飲んで新陳代謝を活発にし疲労回復を図る。適度にというのは、一度に多量の水をとらず、少量の水も一度に飲まず口に含めるようにしてから飲み込む。多量の水を水場ごとにがぶ飲みする事は好ましくない。特に極端に冷たい水を飲む事は、食欲を減退させるばかりか、多量の発汗とともに疲労を増し、胃を壊すので慎む事。

D現在地の確認
 夏山では、出来るだけ機を見て実際の地形と地図を比較して、実際の地形が地図の上でどう表れているかを知るようにして、山をみる目を養う。最初はなるべく、見晴らしの良い高いところで、周囲の谷、尾根などを地図と比較して練習する。地図の向きを決めるには多少離れた山頂や小屋などの顕著ないくつかの目標の方向を地図と合わせる。不明の山を見るとき、磁石の北と、地図の北を合わせて、その山の方向にある地図の山頂をみて探す。この様な練習を繰り返すと、地図を見るだけで、地形をある程度想像できる。 さらに、沢などを行動する時は、あらゆる場所で、尾根の特徴とか、沢の出会いの形とか、谷の入り口からいくつめの沢の出会いといった点を見て、今自分のいる位置が何処かを地図上に求め、100%適中できるまでしておく。また、入山前に全員があらかじめ地形を頭に入れおく。



(2)尾根登り

@尾根道は山麓から森林帯を抜けて高度を高め、稜線に出て頂上へ登って行く。一口に尾根と言っても広い尾根、狭い急峻なやせ尾根もあり、時には岩登りを必要とする岩稜や、深い森林や熊笹などの生い茂った見通しの悪いところもある。高山帯では1000m以上の高度差のある所が延々と続く場合もあり、一般には水が乏しく、天候が悪い時は吹きさらしとなり、風当たりも最も強い所である。ここを歩くには、一般的には特殊な技術は必要ないので、山の基礎を学ぶには、この尾根歩きから始めると良い。尾根歩きの登行所要時間は、一般に傾斜のきつくない時は、水平距離4kmで1時間。登り300mごとに1時間を加算して計算する。

A登路の確認
道標やケルンのない尾根筋も、尾根の出合い、谷の向き、幅などを見て地形的に位置を確認しておく。霧の中でも古いなた目や踏み後、道標代わりのペンキの跡など注意し、登路をはずはないような判断を尾根歩きの内に養っておく。地形図は1/50000では20m、1/25000では10mの等高線間隔のため凸凹は記されていないので霧の日など頂上と間違いやすいので、注意しなければいけない。

Bやせ尾根
両側の急に落ちているヤセ尾根では、精神的恐怖心が湧き、バランスを崩して足を踏み外し易い。このような所を通過するときは、落ち着いて一歩一歩慎重に足を運ぶようにする。へっぴり腰にならぬよう、また、ぐらついた岩は避け、落石をしないように気をつける。このような場所に取り付けられた古いクサリや針金、草の根、灌木、はい松などは、万一外れることもあるので、絶対に頼らず、バランスの補助程度に手をかけ、枯木に決して触ってはいけない。又、足はすり足で運び、上態は斜面に倒すような事はせず、重力方向に鉛直に足場の上に立ち、草付きの上、浮石の上は出来るだけ避け慎重に移動する。

C悪天候の時の準備
 高山の稜線は、かなり天気のよい時でも風が強く冷たいので、休憩の時、無精せず、一枚重ね着するか、汗を拭きとってから休憩したい。汗を掻いたまま風で肌を急に冷やすことは体力を消耗する結果となり危険である。天候が急に悪化した時は行動を一時中止して待避し、以降の行動については慎重に考慮する。夏など無雪期では、尾根から風下側に20mも下降すると、風当たりはぐっと減少するので、その様な場所のある時は、早めに移動するのもよい。

D水の補給
 尾根道は途中で水を補給する事が不可能な事が多いので、全員水筒を持参し、水場では必ず満タンにしておく。尾根上の水場は池とう等の溜まり水であるので、飲む前に煮沸する事。

E道迷い
 ガスのかかった広い尾根や、森林の中では、ともすると踏み跡を見失いがちである。特に人の余り入らない山域では、獣道と呼ばれる迷路が多い。登山道とけもの道の区別は経験を積まないと非常に難しいが、注意してみると、けものの毛、つめ跡などが発見され、それと知る事が多い。その時は直ちに戻る。広い尾根やガレ場で霧にまかれたり、夜になったりした時は、人間の方向感覚がくるい、一方に曲がる癖を生じ、同じ場所をぐるぐる回りだしいわゆる、リングワンデングを始める。この時は、まず休憩をとり、落ち着いて地図や磁石を出し、位置の検討をつけ、最後のものが磁石を見て真方向を保ちつつ進行する。


3.沢歩きの技術

(1)一般的注意
谷や沢の遡行、あるいは下降は登山の楽しみのひとつである。しかし道のハッキリしたところは別に問題がないが、あまり人の入らない谷や沢を初心者を中心としたパーティで登降するのは非常に危険である。ここでは一般的な沢歩きの注意について述べる。

@融雪期、雨後、夕立直後の増水
 一般に谷は、上流に悪場がないときは中流、下流が悪く、上流に悪場がある時は中流、下流に悪場がないと言われている。沢歩きは単なる登山道を歩くのとわけが違い、本格的な沢歩きは岩登りなどと同様訓練が必要である。

A装備
 沢歩きは、濡れる事が多いので、乾いた衣類はビニール袋などに入れておくとよい。衣類はウール製の物がよい。履物は足袋や地下足袋にわらじが良いが、最近沢登り用のフエルトの靴が良い。

B草付き
 沢で草付きのトラバースなど多いが、これも滑りやすい。出来れば4本アイゼンを用意すれば万全である。

C知らない谷への下降
 ルートが分からなくなった場合、沢を下れば早いというので、初心者は、全く知らない沢を下降しがちだが、これは最も危険である。

D高巻き
 沢沿いに行けない時は、山服を高巻きする時があるが、あまり高く巻きすぎると下れなくなる場合が多い。出来るだけ沢沿いに登降することである。

(2)渡渉

余り人の登らない沢へ積極的にルートを求める時以外、橋が流失している時、あるいは、一定の渡渉地点でも、水量が多く流れが急な場合は無理せず引き返し、最寄りの小屋などに戻り、減水を待つ。場合によっては尾根道にルートを変更する。

@渡渉の場所
 やむなく、渡渉する時は、川幅の広く、流れの緩やかな場所を選ぶ。渡渉地点はたいてい一定しており、何かの印がある。急流や滝のすぐ上部を渡らない事。流れが濁っていて、底が見えない時は危険であり、渡渉地点の深さは股下以下に限る。流れが速い時は膝あたりでも危険である。

A渡渉の方法
 水流が少ない時は飛び石伝いに渡るか、直角に渡る。飛び石を渡る時は岩の位置と距離、角度を見定め、調子をつけて飛ぶ。岩は滑りやすく又、動く場合が多い。すべりやすい岩は足全体をつけるようにする。水の勢いが強い時は、杖を作る。杖は径3cm長さ2m程の物が良い。渡渉に先立ち、持ち物を濡らさぬように、パッキングを今一度点検する。服装は水温があまり低くなければズボンは脱いだほうが良い。杖を上流に向かって突き、これを頼りに斜め上流に流れに逆らって渡るのが原則である。杖は、利き腕を下にして握る。足は持ち上げず流れの底をするように運ぶ。途中の岩は避ける。取り付く必要のある岩は、上流が抉られていて深くなっているから、下流から取り付いたほうが良い。姿勢は腰を折り加減に、横身に構える。二人並び肩を組み杖を横に持って渡る。

B渡渉の注意
 流されたり、転んだりしない慎重さが大切。自信のない時は両岸にザイルを張るが、確保は絶対に確実にする事。ザイルに頼りすぎると身体が振られ転倒しやすい。カラビナ利用は安全性をます。トップは空身で先行するが、ザイルの繰り出しはトップの動きに合わせて慎重にする。流されたら浮き上がってから引く。



4.やぶこぎの技術

 尾根歩き、沢歩き、あるいは岩登りと異なり、やぶこぎそれ自体は特別に意味のあるものではない。したがって出来るだけ、やぶは避けるべきである。道のない灌木地帯にルートを求められるのは熟練者に限る。

@やぶこぎの装備
 時に変わったものを必要としないが、ヤブの中では、腕時計、カメラ、帽子など失いやすいからザックかポケットにシッカリしまっておく。服装は手を傷めるので軍手をはめ、シャツは長袖のもの。ザックも大型のものは不適当である。

Aやぶこぎの要領
 やぶにはいる前に、いま一度服装を点検し、コースを見定めておく。ヤブの最も薄いと思われる地帯を選ぶ。やぶのひどいところでは頭からつっこみ、平泳ぎの要領でヤブを押し分けて行く。ヤブこぎのルートは必ず稜線を辿る。途中で近道を求め山服を横断したりするとひどい目にあう。見通しの悪い時は、木があったらあたりの状況を木に登ってうかがうと良い。なた目にも気を配る。けもの道は尾根を横断している事が多く利用価値は少ない。



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