U自然科学的な基礎知識(そのT)

A.山の気象
B.積雪となだれ
C.地図と地形
D.地質と岩石









A.山の気象

山は平地と比べ気象環境が厳しく、天気も厳しく変わる。これは、次の理由による。山は気温が低く、平地が春になっても、高い山は厳冬である。山は風が強い。自由大気中では、風速は高さと共に増加する事が多く、上空では、地形地物の影響がなくなる。山は天気が急変しやすい。低気圧が遥か西方にあって、平地が晴れていても、上空では、いち早く南西風が強まり、地形成の雨雪が始まる。このように、激しい気象変化を予測して慎重な計画のもとに、登頂するためには十分な気象知識を持たなくてはいけない。一般に、局地の天気判断は難しい。天気図を作成して、観天望気を行えば、かなりの程度まで山岳の局地の天気を予想できる。そのためにも、観天望気(空を見て、雲、風、気温などから天気を予測する)を知る必要がある。


1、雲
雲の形には10種類ある。その分類法は、雲の高さとの両方に着目して、雲粒が凍る高度に発生する雲に「卷」の字を、もくもくした 塊状の雲には「積」の字を、また、一様に広がって模様の良く見えないものに「層」の字をつけている。

(1)卷雲(けんうん、すじくも)
青空に、はけを引いたような、また、白いうすいかぎ状の雲。雲のうちでは、最も高空にある。この雲が広がると太陽や月にかさが現れる。低気圧が近づいている時は、しだいに高積雲や高層雲さらに積乱雲に変わっていく。

(2)卷積雲(けんせきうん、うろこぐも、さばぐも、いわしぐも、まだらぐも)
小さな、雲のかたまりが小石を並べたように、またあるときは小さな波状、うろこ形、貝状をなす雲。雲の中では一番美しい。

(3)卷層雲(けんそううん、うすくも)
薄い白みかかったベールを全天に広げたように見える雲。空の一部だけおおう場合もある。太陽や月がかさをかぶる。以上の卷雲、卷積雲、卷層雲を上層の雲といい、雲の高さは5km〜13kmで氷晶からできている。

(4)高積雲(こうせきうん、ひつじくも、むらくも)
丸みのあるかたまり、ロール状をなした白か灰色のくもで普通陰影がある。群をなしたり、綿状、波状になったり、雲量が 増して、全天に広がると悪天の兆し。又、雲塊の縁がだんだん消散していくように見える時は、天気は安定して心配はいらない。上層の風が強い時はレンズ雲になり山岳の風下側に現れることがある。

(5)高層雲(こうそうくも、おぼろぐも)
卷層雲が濃くなって、高度が低くなったような感じで、灰色または青みかかったうす墨色の雲。空の一部が全天をおおう。すりガラスを通したように、太陽や、月が「おぼろ」に見える。この下に黒い雲塊が現れると雨が近い。

(6)乱層雲(らんそううん、あまぐも、ゆきぐも)
暗灰色の厚い雲で、雨や雪のためぼやけて見え、雲の下にちぎれ雲が発生する。この雲からの降水は連続した雨や雪である。多くの場合、高層雲が厚くなって出来るが、積乱雲が広がって出来る事もある。

(7)層積雲(そうせきうん、くもりぐも、うねぐも)
暗灰色の厚い雲で、堤のように連なり、うねうね重なったりする。この雲は、水滴の塊で色々な雲が変化して出来る事が多い。そら一面におおうと本曇り。雲が出ても、近いうち悪天となる場合(雨層積雲)。好転が予想される場合(晴層積雲)がある。

(8)層雲(そううん、きりぐも)
霧のような一様な雲層として現われ、丘や高い建物の上部を隠してしまう事がある。夜間の冷え込みのため山や谷にかかる霧も遠くから見ると層雲である。山すそや山腹にへばりついているもの、又、乱層雲の下のちぎれ雲は、日中になっても消えないので悪天候の層雲である。以上のうち、層積雲、層雲を下層の雲と言い、高さ2km以下。乱層雲は普通中層に見られるが、上層および、下層に広がっていることが多い。

(9)積雲(せきうん、わたぐも)
雲の頭がもくもくと盛上がり雲低は水平で灰色。地表が日射によって熱せられたため垂直に発達したくもで天気の良い日にできることが多い。

(10)積乱雲(せきらんうん、にゅうどうぐも、かみなりぐも)
積雲が一段と発達して、雲の頂が羽毛状に広がって卷雲(氷晶)の層に達すると積乱雲となる。激しい雷を伴って大粒の雨やひょう、突風を起こす。夏、発生する事が多いが、日本海側の地方では、大雪の降る冬でも発生する。積雲と積乱雲の区別は、搭状にのびた雲の頭が繊維状(氷晶)になっているかいなかである。以上の積雲、積乱雲は垂直に発達する雲である。




2・観天望気

(1)現在の位置より西ないし、北の空を注意する。天気は西から変化するが、寒冷前線による天気は北からも変わる。夏には例外として東方からも変わることがある。沢を登っている時、西方に山があって、空がみえない時は、常に頭上の雲の変化に注意する。

(2)卷雲が卷層雲に変わり卷層雲が高層雲にかわり、さらに乱層雲に変わる。このように、雲竜が増し、雲が厚くなり、雲低が低くなると、   天気悪化の兆しである。 この反対は好天の兆しである。卷雲の出現から雨になるまでの時間は、12時間〜24時間。高層雲になってから雨になる時間は、6時間〜12時間。 卷層雲があらわれ、笠がかぶった場合、翌日雨が降る確率は60〜80%。濃厚なかさの時は80〜85%である。

(3)卷雲が西から東に動き卷積雲や高積雲が南西から北東へ流れ、下層雲が南から北に動くと天気は悪い。2000m以上の高い山では、真夏を除いては常に西風で、風が南よりになることは上層の谷の前面にはいっていることで、地上の低気圧の接近を示す。北アルプスでは、北よりの風吹いている時は、天気は良く、風向きが東に変わればやがて、天気は崩れる。

(4)上層雲から下層雲に至るまで、すべて、東から西に雲が流れている時は、真夏では、晴天が続く。真夏以外の季節で3000mの高さに東風が現れたときは台風。強い低気圧が接近している。

(5)風が東または、南に回って異様に暖かくなり、空気が湿っぽくなり、音の聞こえが普段と異なる時、西から低気圧が接近して天気が悪化する。その反対に風が西、北に回って気温が下がり、空気が乾いてきたときは低気圧が通過して好転になる兆しである。

(6)冨士山のような独立峰に美しい笠雲がかかる。中部山岳地帯では、低気圧が九州や、四国南部に近づくとあっちこっちの稜線や山頂に笠雲が現れる。12時間以内に悪天になる確率は冬70%、夏78%である。湿った気流が山の風上側で雲粒を発生させ、風下側で雲が消散する。山頂に綿をおいたようにみえる。

(7)つるし雲は、山の風下側の空間(山の高さと同じかやや高め)に浮かび、いつまでも位置をかえない。これらは、上空の強い西風が山を越えて、風下側で気流が波を打つ、いわゆる山岳波のため発生する。一般に6時間後に悪天になる。

(8)レンズ雲は上空の強い西風の日に発生する。つまり、強い低気圧や活発な前線に伴って現れ、山岳地帯に大雨を降らせることがある。 早いときで3時間、遅い時でも12時間ぐらい内に、山は荒れる。レンズ雲が消えるまで、無理な行動は出来ない。

(9)笠雲、つるし雲、レンズ雲、は高積雲の一種である。この他に、波状雲、波雲、飛行機雲などあり、悪天の前兆である。



3・天気のことわざ

(1)上空の風
「浅間山の煙が東になびく間は天気が良いが西になびくと天気は悪くなる」上空の西風は天気が良いが、東風は低気圧や前線の近づく事を示す。

(2)雲の形
「すじ雲(卷雲)は雨」「こけら雲(卷積雲)がにしから出れば雨」「へび腹雲(卷積雲、高積雲の波状雲)がでれば雨」「羊雲(高積雲)がでれば天気が変わる」 「うす雲(卷層雲)は雨」これらの雲は、低気圧の進行方向に現れることが多い。 「夏、卷雲が急に増えると雷になる」積乱雲の接近、広がりを示している。「土手雲は雨」寒冷前線による綿状の雲の接近をいっている。

(3)雲の動き
「上層の雲が相反して飛ぶ時は暴風雨がくる」高さの異なる雲が反対方向に動く時は低気圧が近づいている。

(4)その他
「冨士山が近くに見えると雨になる」「夜遠くの音が良く聞こえると雨」「谷川の音が良く聞こえると雨」




4・天気図の読み方

天気図から局地の天気を判断するには、まず、台風、低気圧、前線、季節風などの知識や天気変化の特性を知ることが肝心である。

(1)台風
台風が北緯25度線をこえたら、たとえ小さな豆台風でも山は荒れ、集中豪雨がおこるから注意をようする。台風が自分の山の西方や北方を 通る時は風が一段と強くなる。又、南方を通る時は雨が強くなる。台風の直径が数100kmを超える時もあるので中心が上陸しなくても近く に通れば山は荒れる。

(2)低気圧
気圧が自分の山の北側を通るか、南側を通るかによって、風や雨や雪の程度が変わる。したがって、日本の南岸を通るか、日本海側を通るか、本州を横切って通るかによって、天気が変化する。低気圧の東進速度は、時速40km歩程であるから、今日、東シナ海で発生したら、明日は、中部山岳地帯は荒れる。特に、冬から春にかけてて、東シナ海に発生する低気圧(台湾坊主)は急速に発達して、日本付近を暴風雨雪に巻き込むことが多い。発達する、低気圧の中心気圧は1時間に1ヘクトパスカル下がり、24時間で24hPa気圧が下がる。

地気圧が自分の山の南を通るときは、はじめ東風であったのが北に回り、低気圧が通り去れば、西風となって急に晴れてくる。つまり、風向は、時計の針と反対方向に変化する。 雲は卷雲〜卷層雲〜高層雲〜乱層雲の様に変化する。低気圧が自分の北を通る時は、風向は時計の針の回る方向に変化して、東風から南風に変わる。低気圧が、南を通るときより、北を通る時のほうが遭難が多いのは、寒冷前線による天気の急変がある。

(3)前線
低気圧の中心から東にのびる前線を温暖前線、南西にのびる前線を寒冷前線といい、いずれも北から流れてくる冷たい気流と南からくる暖かい気流とが接触している前線である。天気図上で前線を追跡すること。観天望気によって、北西の空に積雲の雲堤をみつけることが良い。又、携帯ラジオの空電による雑音の増加。異様な暖かさ、気圧の急降下など、前線の接近を知る一つの目安となる。


(4)季節風
11月から3月頃にかけて、しばしば、低気圧が日本海で発達する。この低気圧が北日本を通過するころ、低気圧から南西にのびる寒冷前線が中部山岳地帯を通過する。北方から雲提が押し寄せてきて、通り過ぎるとシベリアから冷たい季節風が吹き出して、冬の気圧配置となる。長い時は、一週間にわたって季節風が続く。この間、日本海側、山岳地帯では、風雪が、太平洋側では、西風が強く、晴天が続く。夏の季節風は、日本の南方海上の小笠原高気圧から日本付近に吹いてくる南風である。



5・山の気象の基本的な知識

(1)気温
山に登り、高さがますにつれて気温がさがる。気温の下がる割合を気温の減率といって高度100mについておよそ0.6度である。したがって1000mでは、平地より6度低い。2000mでは12度、3000mでは18度平地よりひくくなる。普通、山では最高気温は、正午過ぎ、最低気温は夜明けにおきる。晴れた日には、標高の高い山ほど日変化は小さい。

一般に、気温が10度以下に下がる、真夏でも雨に濡れると疲労凍死のおそるがある。体感温度は、風速1m増すごとに1度以上下がる。  氷点下20度の時で風速20mの風が吹いている稜線での体感温度は氷点下40度にもなる。

(2)風
一般に、風は破格高くなるほど強くなるので、、山の上では風が強い。冨士山の高さでは、夏では平地の2倍ぐらい、冬だと平地の5倍ぐらいの強さになる。山頂などの風は、平地と反対で、日没から夜明けにかけて強くなり、日中は弱くなる。特別のことがない限り、早朝の強風は心配する事はない。 風は、地形の影響が大きい。一般に沢筋では、その沢にそって風が吹き、尾根筋では、その尾根に直角に風が吹く。天気の良い穏やかな日には、日射の影響で昼は谷から山に風が吹き上がる(谷風)。真夜中から夜明けにかけては、山から谷に向かって吹く風は(山風)。


(3)気圧
山へ登ると、次第に気圧が下がる。ある場所の気圧は、その頭上に圧し掛かっている空気の重さと考えられる。高く登れば登るほど頭上の空気は少なくなり重さも減ってくる。すなわち、気圧が下がる。この原理を利用して気圧計が出来ている。

(4)雨、雪
春秋に天気が変わる周期は、おおむね4日であるから、4日に1度は雨が降る事になる。したがって、3日以上連続して山へ入ろうとすると、少なくとも1日は雨に合うと思わなくてはいけない。一般に、山の天気は、平地より雨量が多く、又平地よりも早くから雨となり、天気の上がりも遅い。これは、雨のもとになる上昇気流が、普通は低気圧内部や前線にそって起こるが、山ではこれに気流が山腹にぶち当たって這い上がる地形性の上昇気流が加わるためである。

太平洋岸に近い山岳の南東斜面で、台風の接近のため南東風が吹くとき雨量が多くなるのはこのためである。逆に、尾根と尾根との間に挟まれた内陸では、下降気流のため雨量が少ない。大空から降ってくる雪片は、雨量より大気中を落下する速度が遅いから、風の影響や、地形の影響をうけ、降雪量分布は複雑である。冬の季節風による雪の量は脊梁山脈の北西山脈で多くなるが、尾根近くでは雪が風下側の南東斜面に吹き飛ばされるため、南東斜面では、吹き溜まりが多くなり、なだれの危険がある。

一般に、雪は北西の季節風によって降るものでなく、小さな低気圧によっても降る雪もある。春先や、初冬、日本の南岸を通る低気圧によって降る水分の多い雪もある。このような時は、南東風の状態によって決まる。

(5)霧
色々な原因で、気温が下がるために、空気中の水蒸気が凝結して水滴(雲粒)となり、視界が1km以内になると霧とかガスと言う。1km以上 の時はもやと言う。やまから見ると雲であるが、雲の中を歩いている人から見ると霧に撒かれていることになる。夏に山すその盆地や谷に出来る朝霧は、夜間から早朝にかけて晴れ上がって空気が冷却されて出来た霧である。夏の日の暑い、山腹で熱せられた空気が上昇気流となって稜線にまきあげてくる。これらの霧は、天気の良い日にできるもので発生も局地的で、夜になると一般に消えていく。登山も早朝出発して午前中に能率を上げるようにすべきである。





B.積雪となだれ

1.積雪

(1)降雪
   雪の結晶は気象条件によって変わる。低気圧の影響による比較的気温の高い時の降雪はなだれやすい。又、一回に降る雪が多い時、短時間に大量に雪が降るときもなだれやすい。山の降雪は殆ど風を伴う。その風によって稜線の風下側に吹き溜まりが出来、これが、最もなだれやすい。

雪粒の形そのものもなだれに関係深いが、もっとも大切なことは、どこに、どんな状態で、どのくらい積もったかという事である。風上の斜面は、ウィンドクラストしやすいので、なだれには比較的安全である。

(2)積雪の変化
   雪は熱によって溶け、その形を変え、又再凍結によっても形を変える。雪は氷点下の温度でも、昇華によって蒸発し、また、その水蒸気が曲率半径の大きい部分に凍結して雪粒はしだいに大きくなる。積雪内部に温度差があると、高温部の雪が蒸発し、低温の部分で再結晶して、さらさらとすべりやすい霜ざらめを生成する。

雪板:風上側の積雪が風に吹きつけられると、堅いウィンドクラストを生じる。風下側の積雪にも堅いものがある。しかも、非常になだれやすい。サンクラスト、レインクラスト:熱や雨によって溶けた雪が再凍結する事。両者とも、非常に堅くなることがあり、歩行に注意を要するが、なだれにくい。

新雪が、一度融解してクラストを生じた後は、再び湿潤化しても、雪崩は少なくなり、靴にだんごがつくことも少ない。雪の変態によって、大きくなるにつれ、新雪から、しまり雪、ざらめ雪と呼び名がかわる。

(3)積雪の層構造
   積雪を掘り下げてその断面を調べると、途中にクラストや氷板のような堅い層、あるいはしまり層、ざらめ雪、また霜ざらめのような再結晶も見られ、積雪は層構造をなすものであることがわかる。あられなどはよくすべる層をつくるが、その上に大量の新雪が積もれば、その新雪の重量だけでもなだれを発進させることが出来る。

(4)ストレス(応力)
   物体に外力が作用すると、物体の中にそれと同じ大きさの力が生じて、外力と対抗してつりあいがとれていると、考えられている。その物体内に生じた力をストレスと言う。急斜面に雪が積もった時、その雪は重力の作用で下流にすべろうとするので、上流部の雪は、引きずりおろされないように引張りのストレスは増加し、いずれは雪の引張りが負け、そこが切断して下流側の積雪はすべりおちる。 

(5)積雪の強さ
   新雪のしまり雪、ざらめ雪、氷と変わっていく間に、その強さが増していく事は誰でもわかるが、降りたての軽い新雪でも多少の強さは持っている。急斜面のしまり雪が、強さが2倍になった時、その密度は3倍に増えたとすれば、」単位断面積のストレスは単純に考えて1.5倍になり、積雪は破壊してなだれを生じていたはずれある。積雪は、温度が上昇するとともに強度は低下する。

(6)雪庇
   雪庇は稜線の風下に張り出す雪のひさしで、大きなものは数mから、時には10数mも張り出す。風上側の斜面が緩いと雪庇はよく成長する。傾斜がきつくなり、およそ45度ぐらいになると雪庇は生じにくい。尾根の両側が急だと、どちら側から風が吹いても雪庇ができず、稜線は刃のように鋭い雪のナイフエッジを形成する。雪庇は、地上にふんわりと積もった雪よりは強いが、その形を見れば分かるように、そのつけ根には自己の重量をささえるため大きなストレスがあるので、雪板と同じく、わずかな、刺激によって破壊する。


(7)雪渓
   雪渓の下を流水が通ると、その部分に空洞っを生じ、空洞は風によって大きく成長する。これが、十分に成長した時、雪渓全体がひとつのアーチ型のスノーブリッジになり、自己の目方をささえるため、大きなストルスが生じる。この時、温度上昇によって強度が低下すると、雪渓はその自重に耐えられず、一瞬のうちに縦横に割れるように自爆する。これがブロックなだれの発生である。斜面の雪渓は各部のクリープの速度が違うのでクルパスを生じる。クラパスはだいたい、雪面に直角に割れるが、雪渓と両側の岩場との割れ目(シュルンド)は雪がひさしのように張り出した形
   

2.なだれ

登山者の遭うなだれの大部分は、乾燥なだれから雪板なだれに至る一連のなだれである。

(1)なだれの発生機構


・点発生なだれ
乾いた砂山の急斜面を指でつつくと、なだれに似た砂の流れを生じる。これと、同じようなのが点発生なだれである。強さが殆どなく、摩擦によって斜面に静止しているさらさらした乾燥雪の表面に見られる。

・面発生なだれ
かなり広い面積にわたり、いっせいに動き出すなだれは面発生なだれ。一般には積雪が上流の最も引張りのストレスの強い部分で切断し、その割れ目の下流の雪が、屋根にほした布団がすべるようにある厚さを持っていっせいに発進する。日本の積雪期登山で問題になるのはこの面発生なだれで、急斜面の吹き溜まりから出る。斜面の角度は35度〜50度のものが多い。

A、ストレスの増加による自然なだれ
B、強度の低下による自然なだれ
C、AおよびBの誘発なだれ

・ブロックなだれ
急なルンゼなど登ると、ブロックなだれに襲われる事がある。

・氷河なだれ
氷河にクレパスが生じ、そのまま崖の上などに押しだしてきたとすると、氷塊が転げ落ち、粉砕されてなだれとなる。


・なだれ判断の諸条件

@地形
尾根のような凸面にもなだれは出るが、谷のつめが一番危ない。

A斜面の方位
季節風の風下か、降雪時の風向にたいして風下かどうか。日射が強く当たる斜面。

B地表面の状態
のっぺりした草つきは、全層なだれが起きやすい。

C積雪量
積雪の多い年は、なだれの事故も多い。積雪の少ない寒冷地では、雪板に警戒する。

D新雪の量と単位時間の降雪量
これが大きいほどなだれは多い

E雪質
あられのようなすべり安い雪の上に積もった雪は危ない。

F風
風は吹き溜まりの原因であると共に、強風は、なだれを発生させる事がある。

G日射、気温、雨

H時刻
日射の始まる時刻と終わる時刻および気温の高くなる時刻。

I偶発条件
雪庇の落下、上流にいる登山者や動物、ジェット機の爆音などによってなだれが起こる時がある。

J積雪情報
とくに最近2〜3日の降雪と天気。

K気象条件
雪が降るか、風が強いか、風向は、季節風は、低気圧は、前線はどうなっているか。

安全度テスト
危険のない斜面の積雪を、まわりの雪を掘って除き、そこに残された塔を手で崩してみる。
もし、特定の層からすっぽり切れて滑るようだったら、上部の斜面の危ない。




(なだれにあった時の対処方法)
危険を感じた時は、リックサックの背負バンドを緩め、ストックの手革やピッケルバンドをはずす。カンジキも脱がなくてはいけない。足元からなだれが出たら、機敏に飛び跳ねて逃げる。上方から襲われた時は、斜め下方に一歩でも多く岸の方に逃げる。なだれに巻き込まれたら、いたずらにじたばたせず、頭を下にしないようにバランスを保つべく努力し、脱出の機会をうかがう。まずは、身軽に逃げる事が一番。脱出のチャンスを最後までねらう。あとは、天命に任すしかない、、、、、、。








C.地図と地形

1.地図の読解力の必要性
安易なところでも、一度道に迷ったら、地図と地形の理解力がなかったら、安全な判断が出来るか疑わしい。困難な登山道の整備されていない山では地図を見ながら、周囲の地形などの判断からコースの難易を考え登路の決定をしていく事が必要になってくる。

2.登山に適した地図
地図には観光用のパンフレットから航空写真に至るまで各種のものがあるが、現在何処でも入手でき、信頼度の高いものは国土地理院発行の地形図である。これには、2万5千分の1、5万分の1、20万分の1の3種があるが、日本全国の図幅がそろっていて利用しやすいのは、5万分の1である。最近は2万5千分の1の地図も充実しているので、それの方が、より詳しいのでベターである。最も良い方法は、2万5千分の1で地形を読み取り、ガイドブック、パンフレット等で細かい知識を得る。


3.地形図の読み方
まず、山へ入る前によく行動に必要な地図を読み頭の中に入れておく必要がある。

(1)縮尺と記号
地図は、地形を縮尺し、記号化したものである。その原理の理解が第一条件である。5万分の1では、1cmは500mである。2万5千分の1では1cmは250mである。実際に10m程度の道路や地形等は省略されたり、あるいは誇大化されたりして表現されている場合がある。
記号は、地形欄外におもな記号が凡例として示されているからまず記号を覚える。とくに、山地における変形(露岩、溶岩、崩壊地帯)はよく覚え実際の地形と地図とを対照しおておく。


(2)方位
地形図は、北を上にして書かれている。したがって実際利用する場合には方位を合わせなくてはいけない。方位の方向が分からない場合太陽の位置、夜は北極星の位置から、方位を知る事が出来る。実際には磁石を必ず持参して方位を知るようにしたい。磁石は北極ではなく、磁北極をさしている。したがって地点により磁針と真の北との差を知らなくてはいけない。日本では5〜9度西に偏っている。改訂された図幅には地図の欄外にその偏角が示されている。磁石を利用する際には必ず水平にして測定する。また、山中では岩石が磁化されて磁石を狂わす事があるので、岩石から1m以上離して使用すること。


(3)郷離と高度の読み方
山道は直線ではなく曲がりくねっており、平面ではなく緩急いろいろに傾斜している。その上、縮尺の関係から細かい曲線はかなり省略されて記入されている。だから歩く距離は、地形図から得た距離感より相当長くなる。地形の高低は等高線であわらしてある。5万分の1では図幅は20m間隔で主曲線は100mである。2万5千分の1は図幅は10m間隔で主曲線は50mである。等高線の間隔の広いところは斜面が緩い。狭い所は急である。尾根と谷は、等高線によって、尾根は凸線上に、谷は凹線状に表現されることになる。地形図の上に尾根を実線で記入し、谷を破線で記入して判読する練習をするとよい



4.山で地図を使用する場合の注意

(1)取り出し易い所に入れ、絶えず地形と照合する。
道が分からなくなってからあわてて地図をとりだしていたのでは、なかなか判断は困難である。登山の初めから地図はリュックサックの取り出しやすいところに入れておき、絶えず行動中に周囲の地形と照合して、自分の位置を確認しておくと共に、地図上でハッキリしている地点、たとえば、一本杉、沢の合流点等では通過時間を必ずメモしておく。もし、道が分からなくなったとしてもメモさえあれば、その最終点からどれだけの歩行時間ということがわかり、さがす範囲は短くなる。


(2)図上での位置確認
晴天の見晴らしのよい日なら地形図上で確認できる。2点を磁石でねらい、そのニ線の交点が自分のいる位置となる。少なくとも1時間に1つ以上に確認しておく事。山行前に目的地の地形をよくあたまの中に入れておいて、その上で、自己の進行方向を磁石や星、あるいは木の枝の方向など確認して、図上に推定位置を記入しつつ進むのがよい。



5.山地の地形と基礎知識

(1)山地の地形について
山地は地球内部の内的営力の造山運動(褶曲運動、断層運動、火山運動)によって造られ、外的営力(主として水、風、生物など)によって浸食され、その形も変えていく。したがって山地の形態は非常に大きな時間的変化にもとづいて論ずることが出来る。一般に山地は古生層、中生層、第三紀層や火成岩のようないわゆる基礎岩石で構成されている。


(2)侵食地形
かつて、日本アルプスには標高2500〜2600mの高さに平坦な山稜が広く発達していたと考えられる。(雲の平)こうした原地形に、まず始めに谷壁(谷の斜面)の急な滝やよどみのある幅の狭い幼年期の谷が刻まれてくる。谷がさらに成長すると谷幅は広く深くなり、谷の上部では谷頭侵食が続けられ、いわゆる青壮年期のV字谷が刻まれる。

@幼年地形
地形は老年期になると地殻の変動で回春し、また幼年期に戻ることがある。しかし、幼年期に移り変わるといっても、それを区別するとこは難しい。山上に比較的単調な平坦な面があり、側面が雨裂状の谷頭侵食をはじめているのが一つの特色である(中国山地の一部、丹沢山地)

A壮年地形
日本の高山は大部分が壮年山地で稜線はするどく、分水線は明りょうで起伏量は大きく稜線部には岩石も、ところどころ露出している。

B老年山地
奥羽地方、阿武隈山地、中国山地などは代表的な例である。侵食が進んだ結果、山頂や稜線は丸みをおびて分水線は不明りょうになり、川は広く流路が曲流している場合が多い。起伏は少なく地表は厚い土で覆われている。



(3)断層地形
丹沢山地や近畿地方の鈴鹿、笠置、生駒などの山地は地塁山地といわれているように断層崖でくぎられた山地である。断層運動の時には非常に激しい熱が断層面付近に加わるので断層面付近には岩石の破砕帯が形成される。四国石鎚山地北側、丹那盆地、飛騨山地東側など。


(4)火山地形
塩基性の溶岩の場合には、流動性に富んでいるので、山体は傾斜が緩く流れる。屋島。月山などはこの例である。中性の溶岩が流れた場合は、いわゆる冨士山型のコニーデとなる。日本の各地方で「何々冨士」と呼ばれている火山は多くこれに属する。トロイデの例としては北アルプスの焼岳、箱根の二子山、中国地方の大山。火山の中には巨大な噴火口(カルデラ)をもち、二重式、三重式の火山も多く、これがだんだん開析を受けて複雑になってくる。(妙義山、荒船山)


(5)氷食地形
雪線以上の山地では、雪は多少は溶けても根雪となって残るから、だんだんと厚さを増し、氷化し、重くなって傾斜にそって動き出すことになる。これが氷河である。日本では現在の気候的雪線は約4000mと考えられている。カール氷河がまっすぐ流れるのではなく、傾きを持って流れてくる。日本にも小規模ながらカール氷河の存在したことがわかっている。山頂部に氷河源が形成され、これが多くの場合山地を半わん形に侵食し(カール)、これらが氷河が流れ出し氷食谷(U字型になる)が形成され、ある高度に達すると氷河は融失して、そこに運んできた土砂や岩石を堆積する。

日本には約70のカールが報告されている。北アルプスの槍、穂高、立山、剣岳付近。涸沢のカールは日本一の規模である。日本では、古くから、異なった呼び方をしている。千畳敷、すりばちくぼ、まやくぼ。なお、カールの訳語として圏谷と言う字を当てている。
カール低湖:涸沢の池、野口五郎の池、天狗原の池、中央アルプスの濃ケ池。
カールの下方にモレンが存在する:槍沢、白萩革上流。


(6)氷河周辺地形と多雪地形
白馬岳や後立山連峰、谷川岳、中央アルプスの主稜など、いろいろなところで稜線の東側に急崖が多い。西側に緩傾斜があるというような非対称の山稜がある。白馬岳頂上付近など典型的な例である。このような非対称になるのは、偏西風帯で西風が卓越すると、東側斜面が西側斜面に比べて日射が少なく、大地の放射冷却による気温上昇が少ないので、雪の蒸発、融解もよわく、カールなど谷頭侵食のつよい地形の東側に多く出来ることなどに起因する。



 D、山の地質と岩石

1.総論
山は火山型と造山型に大別できる。その他に、断層形や地下のマグマ、がえん岩塩ドームの上昇などで出来ているものがあるが、数はきわめて少ない。世界の高い山脈はその高さゆえに激しい浸食作用にさらされている。しかし、その割には低くならない。大陸地殻と海洋地殻は質が異なっており、前者は花崗岩質、後者はもっと密度の大きい玄武岩質の岩石で出来ている。大陸は、氷山が海に浮いているように、より密度の大きい海洋地殻に浮いているようなものである。氷山は表面が溶けても、水中の部分が浮き上がって、表面の高さはあまり減少さない。これと、まったく同じことが山脈ににおいても起こると考えられる。地殻構造と地殻均衡(アイソスタシー)を考えれば理解できる。

2.各論

(1)高山の岩石
高山をつくる岩石の大部分は火成岩または、変成岩で堆積岩で高山になっている山は少ない。

@火成岩
火成岩はマグマに由来するもので地下深所で固結したものを深成岩といい、火山となって噴出したものを火山岩と言う。その中間的なものは半深成岩と言う。

A変成岩類
変成岩は動力変成作用あるいは広域変成作用によってもとの岩石が変成されてできた岩石である。厚紙を重ねたような岩石を千枚岩と呼ぶ。この岩石は白馬岳、から朝日岳に至る山稜に見られる。

B堆積岩
堆積岩は砂や泥や火山灰や石こるが堆積したもので、砂岩、泥岩、凝灰岩、礫岩などの判断は比較的容易である。堆積岩は古いものほど固くなっている。


(2)火山型の山

@古い火山
グリンタフ型とも言うべき火山で、新第三紀の主として海底火山の噴火堆積物で構成された岩石が、隆起し、侵食されて形成されたもので、安山岩、凝灰岩などで構成され、山体の侵食がすすんでいるため、比較的低い山を造っていることが多い。     その中でも集塊岩などで構成されている山は周囲の堆積岩よりも侵食に対する抵抗が強く、独立した奇峰をつくることがある。(妙義山など)。


A新しい火山
火山型の山の内、独立して高い山をつくるには、第四紀以降の新しい火山である。標高の高い火山では、冨士山、および、乗鞍火山群はその代表的な例である。白山は安山岩が600mほど積み重なって形成されている。(楯状火山)楯を伏せた地形を示す火山はハワイのマナロア、マウナケアで代表される火山である。傾斜がゆるやか5度から10度である。わが国では伊豆の大室山や福島の吾妻山や長野県の霧ケ峰など。


(鐘状火山)
このタイプの山は溶岩円頂丘またはつりがねを伏せたような地形を示す火山で、祖父岳、焼岳。(砕屑火山)火山の放出物、砕屑物など交互に噴出させて形成された山で、成層状謡で円錐形を示し冨士山型ともいわれ、玄武岩、や安山岩の火山にもっとも普通に見られる。蔵王のおかまでその成層状が観察される。やまの傾斜は10〜40度ぐらいで。山頂に火口があることが多く、火口に対して山体の面積は大きい。


(複成火山)
一つの噴火口を中心に何回も噴火が行われ形成された山は、外輪山や、中央火口丘を持っていて、二重式、三重式になっている。阿蘇山、箱根。箱根山は外輪山と中央火口丘の間に水をたたえて湖を形成したのが芦ノ湖である。


(3)造山型の山
造山帯に地向斜としてはじまった地殻の細長い山脈をつくっている地帯である。地向斜の中にたまった堆積物の厚さは所によって異なるが10000m以上におよぶところがある。地向斜の地層の中には火山性の堆積層がふくまれている。これらの堆積物が褶曲をうけ断層をうけ、突き上げられて多かれ少なかれ変成作用を受けている。隆起のような一連のプロセスをえて山地が形成される。

新しい造山帯の山々はアルプス型の高峻な山地を形成している。その典型的な例は中世代から第三紀にわたっておこなわれたアルプス、ヒマラヤで代表される山地である。南アルプス:この山地の東側は不変性古生層や中世層の山地で、西部では三峰川流域あるいは天竜川流域には多くの片麻岩や結晶片岩が見られる。南アルプスの主稜の山々の岩石は古生代の地層と考えられている。中央アルプス:この山地にも片麻岩が中御所谷や黒川の流域にしられているが、しかし、大部分は変成岩ができた直後に続いてできた花崗岩からなっている。北アルプス:北アルプスの主稜山地の西側に接して飛騨変成岩体が分布している。



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