◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ Welcome to G.I.A.&MEICHIKU's Home Page ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
巨匠・Stanley Kubrick
[Last update:08-07-03]

Stanley Kubrick:1928-07-26 ニューヨーク生まれ。 1999-03-07 没
13歳の時に父からカメラを贈られ、高校卒業後、カメラマンとなり、21歳から監督を志すようになる。25歳の時、「恐怖と欲望」('53)で長編映画デビューを果たす。尚、この作品は日本未公開である。新人時代はフイルム・ノワールを得意としていたが、次第に作家性を発揮し、問題作を多数発表する。そして'68年の「2001年宇宙の旅」は映画史上に残る金字塔となる。完全主義者として知られ、一つのシーンを撮影するのに50回も撮り直すなど、逸話は数え切れないほどある。また、作品のビデオ化やテレビON AIRに対しても口を出すため、テレビで作品が流れることは数少なく、ビデオもなかなか発売されないなど、映画館で作品を見ることを前提とした作品づくりは現在の商業主義に一石を投じるものとして高く評価できる。そんな彼に与えられた称号は「20世紀最後の巨匠」まさにその名に恥じない映画界を代表する監督である。
'87年の「フルメタル・ジャケット」以来、10年以上も新作がなかったが、'99年7月に待望の新作「アイズ・ワイド・シャット」が公開されることになっていた矢先の逝去は非常に残念である。

キューブリック監督のご冥福を心からお祈りいたします。


作品解説 ← お選び下さい →脱線メモ
作品解説

「拳闘試合の日」DAYS OF THE FIGHT
1950年 16分 アメリカ モノクロ作品
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック
撮影:スタンリー・キューブリック
音楽:ジェラルド・フリード
 (準備中・近日更新予定)
「空飛ぶ教師」FLYING PADRE
1951年 9分 アメリカ モノクロ作品
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック
撮影:スタンリー・キューブリック
音楽:ナザニエル・シルクレット
 (準備中・近日更新予定)
「海の旅人たち」THE SEAFEARERS
1953年 30分 アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:ウィル・チェイサン
撮影:スタンリー・キューブリック
 (準備中・近日更新予定)
「恐怖と欲望」FEAR AND DESIRE
1953年 68分 アメリカ モノクロ作品
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:ハワード・O・サックラー
撮影:スタンリー・キューブリック
出演:フランク・シルヴェラ、ケネス・ハープ、ポール・マザースキー、他
 キューブリック監督の長編デビュー作。しかし、キューブリック自身が本作のことを「間の抜けたアマチュア映画の習作」と語り、本作が上映されること妨げようとしていた。そのため、本作を見たことのある人間は殆どおらず、本当に「幻の作品」となっている。が、初公開時に評価されたことから、次回作「非情の罠」を撮ることになり、巨匠キューブリックが誕生することになるのであるから、面白いものである。
「非情の罠」KILLER'S KISS
1955年 67分 アメリカ モノクロ作品
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック、ハワード・O・サックラー
撮影:スタンリー・キューブリック
音楽:ジェラルド・フリード
出演:フランク・シルヴェラ、ジャミー・スミス、アイリーン・ケーン、他
 キューブリック監督の長編二作目の作品で、暗黒街に生きるギャングたちの抗争をドキュメンタリー・タッチで描いた作品。本作は、メジャーの一つである"ユナイテッド・アーティスト"によって配給されたのであるが、これによっていよいよキューブリック監督はメジャーになって行くのである。
「現金に体を張れ」THE KILLING脱線メモへ
1956年 85分 アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
原作:ライオネル・ホワイト
脚本:スタンリー・キューブリック
撮影:ルシアン・バラード
音楽:ジェラルド・フリード
出演:スターリング・ヘイドン、コリーン・グレイ、ヴィンセント・エドワーズ、ジェイ・C・フリッペン、マリー・ウィンザー、他
 ライオネル・ホワイトの原作小説「見事な結末」を映画化したサスペンス・アクション。ラストはその小説のタイトルの通り、見事な結末が用意されている。本作はキューブリックの本格的デビュー作であり、これによってキューブリック監督の名前が広く知れ渡るようになった。要チェックの作品である。
 5年の刑期を終えて戻って来たジョニーは婚約者との生活のために大仕事を計画する。その計画とは、ライズダウンの競馬場の売上金の強奪であった。計画を実行するために仲間を集め、周到な準備をして、いよいよ決行となる。計画通りに運び、売上金を強奪したものの、落し穴が待っていた。それは仲間の一人ジョージの妻であった。彼女はジョニーたちの計画を立ち聞きしてしまったのであった...
「突撃」PATHS OF GLORY脱線メモへ
1957年 86分 アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
原作:ハンフリー・コップ
脚本:スタンリー・キューブリック、コールダー・ウィリンガム、ジム・トンプソン
撮影:ジョージ・クラウス
音楽:ジェラルド・フリード
出演:カーク・ダグラス、ラルフ・ミーカー、アドルフ・マンジュー、ジョージ・マクレディ、ウェイン・モリス、ジョー・ターケル、ティモシー・ケリー、バート・フリード、他
 キューブリック監督の長編4作目となる作品で、反戦映画でもある。また、語りぐさとなっている冒頭の長い後退移動など、視覚的なアイデアが散りばめられている点はチェックポイントである。(流石は20世紀を代表する監督である。)
 第一次大戦下のとあるフランス歩兵連隊の悲劇の物語。「蟻塚」と呼ばれるドイツ軍の要所を48時間以内に攻略せよ、という命令が下されるが、隊長・ダックス大佐は兵士たちは疲れ切っていて自殺行為だと抗弁するが、作戦は実行に移される。が、予想通り敗退する。指揮官・ミロー将軍は、敗因は兵士たちの命令違反にあるとして連帯の全員を逮捕、軍法会議を行い、3人の兵士を処刑してしまうのであった...
 組織論により悲劇を招いた悲劇を当時29歳のキューブリック監督が反戦のメッセージをこめて世に問うた異色の問題作でもある。
「スパルタカス」SPARTACUS脱線メモへ
1960年 190分 アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
出演:カーク・ダグラス、ローレンス・オリヴィエ、チャールズ・ロートン、ピーター・ユスチノフ、トニー・カーチス、他
 ローマ帝国の時代、奴隷のスパルタカスは大将軍クラサスに対して反乱軍を率いて立ち上がった。本作は、スパルタカスを中心に、ローマ帝国の圧政に苦しむ奴隷たちの戦いを雄大なスケールで描いた物語です。本作のような作品は、映画館の大スクリーンで見てこそのものであります。(とはいえ、リバイバル上映もないですね...)
 また、後に名探偵ポワロ役を演じたことでも有名なピーター・ユスチノフが、本作によってアカデミー助演男優賞を獲得していることも見逃せない点です。若い頃のキューブリック作品は晩年の作品と比べて、一般受けしやすい作品であったこともこういう結果になっているのでしょうか...
「ロリータ」LOLITA脱線メモへ
1962年 152分 イギリス
監督:スタンリー・キューブリック
出演:ジェームズ・メイスン、スー・リオン、シェリー・ウィンタース、ピーター・セラーズ、他
 ウラジミール・ナボコフの異常性愛を描いたベストセラー小説の映画化。また、本作品は'99年にエイドリアン・ライン監督によってリメイクされます。最近のリメイク・ブームによって、過去の名作がリメイクされることはいいのですが、まさかキューブリック作品がリメイクされることになろうとは...何処まで再現されるのか、また新しい解釈はあるのか、というような注目点がありますので、公開になる前に本作をチェックしておきましょう。
 アメリカの田舎町に住むハンバート、未亡人シャーロット、その娘ロリータの三人の間で繰り広げられる物語。シャーロットはハンバートを愛するが、ハンバートはロリータの美しさに魅せられる。が、彼は彼女との絆を保つためにシャーロットと結婚するのだが...(以下は作品を見て下さい。)
「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」Dr. STRANGELOVE; OR, HOW I LEARNED TO STOP WORRYING AND LOVE THE BOME脱線メモへ
1964年 94分 イギリス・アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
出演:ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット、スターリング・ヘイドン、他
 余りにも長い邦題がつけられた作品ですが、初めてこの作品を知った時、この長いタイトルに興味を覚え、すぐに暗記して正式なタイトルを覚えていることを友人に自慢していたことを思い出します。それからしばらくは作品を見たことがなかったのですが、LDで発売になったことで入手し、見た日のことが今でもはっきりと覚えています。
 今は世界が変わってしまったが、冷戦下の米ソ核競争時代、偶発的な事故から第三次世界大戦が起こりかねない時代をブラック・コメディとして描いた傑作であります。モノクロの画面が本作のブラック・コメディのセンスを光らせていた上、主演のピーター・セラーズが三役をこなし、見事に演じ分けていました。
 アメリカ空軍の司令官が発狂し、ソ連攻撃を命令したため、爆撃機が出動。一方、ソ連では水爆攻撃に対向する人類滅亡爆弾が配備されていた。米ソ両国の首脳はホットラインで協議するが、通信系統の故障で1機が任務を遂行する。また、作戦室ではストレンジラブ博士が人類の存在について演説をしていた。
 現在ではソ連が崩壊し、時代が変わってしまったこともありますが、本作の事態がいつ起こるか分からないのは変わりません。あまりにも見事な作品だけに、怖さを感じるのもまた事実です。尚、本作と全く同じテーマの作品が、同じ年に製作されています。それはシドニー・ルメット監督の「未知への飛行」です。併せてご覧になるのも一興かと思いますが、そうするには本作が余りにも重くて...
「2001年宇宙の旅」2001:A SPACE ODYSSEY脱線メモへ
1968年 140分 アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
出演:ケア・ダレー、ゲーリー・ロックウッド、ウィリアム・シルヴェスター、他
 キューブリック監督の代表作であると同時に、SF映画のバイブルと云える本作は、特撮技術、音楽などの点でも映画界に新風を吹き込んだ作品であり、本作がなかったら、「スターウォーズ」をはじめとするSF映画が誕生したか、また、特撮技術が現在のように進歩したか疑問に思えるような革新的な作品です。
 また、本作に登場するコンピューターHAL9000はコンピューターの世界では夢のコンピューターであると同時に、HAL9000を目標にして次々とコンピューターの世代が進歩しているのも特筆ものです。(HAL9000のようなコンピューターはまだ登場していませんが、いつの日かその日が来るのでしょうね〜)
 物語については、余りにも難しいもので、とても解説することができません。私は本作を既に二桁となる回数だけ見ていますが、今だに全部を理解しきっていません。このように記すと毛嫌いする方も出てくるでしょうが、とにかく本作を見て下さいと申し上げます。少なくとも心に語りかけるものを感じることでしょう。そしてそれを基にして再度見て戴きたいと思います。(2001年になるまでには理解できるように私も頑張ろうと思います。)
「時計じかけのオレンジ」A CLOCKWORK ORANGE脱線メモへ
1971年 137分 イギリス
監督:スタンリー・キューブリック
原作:アンソニー・バージェス
脚本:スタンリー・キューブリック
撮影:ジョン・オルコット
音楽:ウォルター・カーロス
出演:マルコム・マクダウェル、パトリック・マギー、エイドリアン・コリ、オーブリー・スミス、マイケル・ベイツ、ウォーレン・クラーク、スティーブン・バーコフ、他
 「博士の異常な愛情」「2001年宇宙の旅」と共にキューブリック監督のSF3部作を構成する一編である。本作では「雨に唄えば」('52年製作の有名なミュージカル映画・ジーン・ケリー主演)の同名主題歌(ポピュラーの世界ではスタンダード・ナンバーになっています)を見事なまでに使い、過剰な暴力描写を行ったことが余りにも有名です。
 近未来、麻薬と暴力とセックスに生き甲斐を感じ、幅を利かす非行グループ。その首領アレックスはある殺人事件で仲間に裏切られて投獄される。彼は攻撃性を絶つ洗脳の実験台となり、人柄が変わってしまう。そして立場が変わり、被害者だった者たちから暴力を受けることになる。自殺未遂の末、凶暴性を取り戻した彼は...
 舞台が近未来ということで、未来社会の風俗や流行などのデザインもうならせるものがあり、流石は完全主義者のキューブリック監督作品だと感心させられる作品です。こういう部分まで理解するためには、やはり何度も本作を見ることです。とにかくSF作品としても傑作でありますので、見ておかなければならない作品であります。
 そういえば、本作公開の後に「○○じかけの△△」というセンテンスを結構耳にしたものですが、本作のタイトルに勝ものはなかったですね。よくもまあ、これだけの傑出したタイトルをつけたものだと、改めて感心しました。
「バリー・リンドン」BARRY LYNDON
1975年 185分 アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
原作:ウィリアム・メイクピース・サッカレー
脚本:スタンリー・キューブリック
撮影:ジョン・オルコット
編集:トニー・ローソン
音楽:レナード・ローゼンマン
出演:ライアン・オニール、マリサ・ベレンソン、ハーディ・クリューガー、スティーブン・バーコフ、パトリック・マギー、マーレイ・メルヴィン、レナード・ロシター、他
 ウィリアム・M・サッカレーの同名小説を原作とした大河ドラマ。成り上がり貴族の半生を描き、18世紀のヨーロッパの田舎や貴族社会を細部に至るまで再現している。特に、室内撮影では、ろうそくの光の下での当時の暮らしぶりを表現するために特殊レンズと高感度フィルムを用いて撮影され、素晴らしい映像を生み出している。また、アカデミー賞では、撮影賞と美術監督、衣装デザイン、編曲賞という4部門を受賞している。
「シャイニング」THE SHINING脱線メモへ
1980年 143分 アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
出演:ジャック・ニコルソン、シェリー・デュヴァル、ダニー・ロイド、他
 ホラー映画と言える作品。ジャック・ニコルソンの怪演が見事。  コロラド・ロッキーのホテルにやってきた小説家一家。彼らは冬の留守管理のためにやってきたのだったが、そのホテルは、前任者の管理人が一家を殺し、自殺したという曰わくのあるホテルであった。そして、小説家一家も次第にホテルの持っている不思議な魔力の餌食になろうとしていた...
「フルメタル・ジャケット」FULL METAL JACKET脱線メモへ
1987年 116分 アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
原作:グスタフ・ハスフォード
脚本:スタンリー・キューブリック、マイケル・ハー、グスタフ・ハスフォード
撮影:ダグラス・ミルサム
音楽:アビゲイル・ミード
出演:マシュー・モディーン、アダム・ボールドウィン、ヴィンセント・ドノフリオ、R・リー・アーメイ、ドリアン・ヘアウッド、アーリス・ハワード、ケヴィン・メイジャー・ハワード、エド・オロス、ジョン・テリー、他
 新作の発表間隔が長くなり、7年ぶりの新作がようやく完成したと思ったら、ベトナム戦争をテーマにした作品と言うことで、再び驚いたという記憶がありました。'80年代の中盤には、「ブラトーン」をはじめとして、一時期「ベトナム戦争」をテーマとすることが流行ったのですが、それらのブームも下火になった頃に登場(製作の遅れが原因)したのですから、完全主義のキューブリックらしいのですがねぇ。
 前半は軍隊の訓練基地での物語で、後半はベトナム戦線における物語となる二部構成となっている。これらの差は激しく、別作品を見ている錯覚を感じると共に、人間の豹変ぶりの凄さも感じさせてくれます。
 そして、いくら何でもそろそろ新作(「アイズ・ワイド・シャット」が登場します)を、と思った矢先の訃報には驚きました。ということは、「ビデオ」(=映画館以外という意味)で鑑賞するにしても、パッケージソフトにまでも口を出していたキューブリック監督ですから、自らの手による完全版としての本作の「ビデオ」というのは、遺作の一つと言えるのではないでしょうか??
「アイズ・ワイド・シャット」脱線メモへ
1999年 159分 アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック
、フレデリック・ラファエル
美術:レス・トムキンズ、ロイ・ウォーカー
出演:トム・クルーズニコール・キッドマン、シドニー・ポラック、マリー・リチャードソン、リリー・ソビエスキー、トッド・フィールド、スカイ・デュモント、ジュリアンヌ・デイヴィス、ヴァネッサ・ショー、マディソン・エジントン、トーマス・ギブソン、レイド・セルベッジア、他
 「フルメタル・ジャケット」から10年以上の年月が流れ、新作の噂はあったものの、いっこうに姿が現れず、どうなっていたのかと思っていたら、ようやく完成し、公開を待つばかりになりました。が、キューブリック監督の訃報が届き、まさか遺作になるなんて、考えたこともありませんでした。完成させて僅か1週間後というそうです。
 トム・クルーズ夫妻(当時、現在は離婚しています。)が主演で、しかもキューブリック監督の遺作となった本作は、ひょっとしたらこの夏の公開作品の台風の目となるような気がします。皆さん、必ず見るようにしましょう。情報によれば、R指定にはなるが、それほどキツい表現はしていないそうです。また、当初言われていたほどの性的描写はされていなかったと思います。(ただ、これがキューブリック監督の手によって描き出されたものであるかは、今となっては分かりませんが...)
 若き医師・ビルとその妻・アリスは心から愛し合っていて、裕福で満ち足りた生活を過ごしているはずであった。ある日、アリスから思わぬ性的欲望を告白されたビルは衝撃を受け、彼女が男に抱かれる妄想に囚われながら夜の街をさすらっていく...

脱線メモ

「現金に体を張れ」作品解説へ
 時制を大胆に飛び越えるこの大胆な犯罪映画を、クエンティン・タランティーノがデビュー作「レザボア・ドッグス」で引用していることも有名な話である。主演のハーベイ・カイテルの強力なバックアップによって完成した「レザボア・ドッグス」は、ホワイト、ピンク、オレンジ、ブロンドなどコードネームでのみお互いを呼び合う犯罪チームが強盗計画を立てるものの、実際の現場でのシーンを飛ばして、いきなりそれが失敗した後に話が進むというもの。ティム・ロス、スティーブ・ブシェーミ(「アルマゲドン」「ウェディング・シンガー」)、マイケル・マドセン(「スピーシーズ/種の起源」)、クリス・ペン(「ラッシュアワー」)などここから巣立ったスターは多い。タランティーノ自身も顔を出している。本作の他にはブライアン・デ・パルマの「ミッドナイトクロス」の影響も多分に見ることができる。
 本作に話を戻すと主演のスターリング・ヘイドンは、犯罪映画の定番主演俳優だったようで、この人が出てくると、緻密な犯罪計画のどこで綻びを見せるかという点で観客を楽しませたということである(表現におけるモラルにきびしかった当時、犯罪者が成功をみる映画はありえなかったとも言えるのだが)。「博士の異常な愛情」でもエキスにこだわる異様な人物を演じているが、現在もビデオや衛星放送で見ることのできるその他の出演作としてはジョン・ヒューストンの「アスファルト・ジャングル」などがある。
「突撃」作品解説へ
 若きキューブリックを抜擢したカーク・ダグラス、その先見の明が確かなことは作品が証明している。俳優としても、製作者としても優れたこの資質は、息子のマイケル・ダグラスにも受け継がれている。第一次大戦下のフランスを舞台にしているとは言え、軍上層部の非人間性を告発した作品を、この時代に作ることは相当な反骨精神がなければできないことであろう。「愛国者、と言う言葉はそれを利用しようとする人たちのためにある言葉だ」といった意味合いの台詞など、勇気ある製作者でなければ、使えないだろう。
 また、数名の末端の兵士を見せしめのために処分しようとする当局に対し、彼らを弁護し奔走するダグラスの姿が断然いい。銃を撃ちまくったり、建物から決死のジャンプをすることがなくても、英雄(ヒーロー)を演ずることが充分可能であることも本作は示している。ただし、結末は苦く重い(ゆえに結果、成功しているとも言えるが)。
 脚本に参加しているジム・トンプソンは「ゲッタウェイ」(スティーブ・マックイーン、アリ・マッグロー主演のサム・ペキンパー監督作アレック・ボールウィン、キム・ベイシンガー主演のロジャー・ドナルドソン監督作があり)「グリフターズ 詐欺師たち」「ファイヤーワークス」などの映画化作品がある。本作の、ハードボイルドな展開はこの人の参加によるところが大きいのかも知れない。
「スパルタカス」作品解説へ
 本作が製作された60年代初頭にあっても、表現の自由は完全に保証されてはいなかった。ことにキリスト教団体の影響力が大きいアメリカにおいては、同性愛傾向を(それが例え暗喩としてでも)表現している作品に対する検閲は非常に厳しいものであった。ただし、ハリウッドで映画製作に関わる同性愛者たちはその中にあっても、自分たちの存在を検閲の眼をすり抜けながら発信し続けた。これらの歴史を実際のフィルムの映像をふんだんに使いながら綴ったドキュメンタリー映画が「セルロイド・クローゼット」である。トム・ハンクス、ウーピー・ゴールドバーグ、またカミングアウトした映画のスタッフからの貴重な証言にも聞き所の多いこの映画には、本作「スパルタカス」も登場する。証言者としてトニー・カーティス(「お熱いのがお好き」)が登場。本作中のシーンで、カーティスが小姓として将軍に仕える際、浴室で「貴様は牡蠣が好きか、かたつむりが好きか」と聞かれ、「牡蠣でございます」と返す(それに対する将軍の台詞は「私はかたつむりも好きだぞ」というようなもの)シーン。この部分は当時の検閲にあって削除され、後に完全版として復活している。言われてみれば露骨のようだが、90年代、劇場公開された完全版公開の折にも、筆者は気づかなかった。「セルロイド・クローゼット」には、本作の他には、無声映画の時代から、「モロッコ」「クルージング」などを経て、「フィラデルフィア」「ボーイズ・オン・ザ・サイド」や多くの日本未公開作が登場し、多くの映画群から新たな発見ができる異色作である。
「ロリータ」作品解説へ
 傑作・佳作揃いのキューブリック作品群の中では、案外評価の低い作品であるが、幼女愛好という禁断のテーマが世の常識人からは嫌悪の眼で迎えられたことは想像に難くないが、社会の一部に当たる愛好者からも好評は得られなかった。それは、原作にある少女の年齢(12から14くらい)が、映画化においては、(16から18くらいに)引き上げられてしまったため、"危ない"味が薄められたということらしい。あえて世紀末にリメイクしようというエイドリアン・ライン(「危険な情事」「幸福の条件」)は勝算あって挑むのか、注目したい。
 少女の母に扮するシェリー・ウィンタースは、モンゴメリー・クリフト、エリザベス・テーラー主演の「陽のあたる場所」でも、本作と似たような境遇(主人公であるクリフトは、ウィンタースという恋人がありながらテーラーに惹かれていく)で、かわいそうな役柄の印象が強いが、パニック映画の代表作の1本「ポセイドン・アドベンチャー」における、あの「潜るおばさん」といった方が、一般の映画ファンには通りがいいかもしれない。
「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」作品解説へ
 ピーター・セラーズの怪演が光るブラックな一編。後期には、「ピンク・パンサー」シリーズのクルーゾー警部として知られる彼であるが、デビュー当初より、奇抜な作品で注目を集めた。また、本作や、遺作「天才悪魔フー・マンチュー」などを見ると分かるように、変装による2役、3役も軽くこなした。変装芸における彼のライバルは、「スター・ウォーズ」のオビ=ワン・ケノービで知られるアレック・ギネスであったという。デビッド・リーン作品(「アラビアのロレンス」「戦場にかける橋」「インドへの道」)を見ると、この人がそれぞれの作品で、まったく国籍も人種も異なった役柄を演じていることに気づかれるだろう。セラーズとギネスが共演し、複数役を競った作品もあるらしい。なお、007シリーズの傑作パロディ「オースティン・パワーズ」において、主演のマイク・マイヤーズが、タイトルロールと敵役Dr.イービルの二役を演じているのは、007番外編「007/カジノ・ロワイヤル」主演のピーター・セラーズへのリスペクトがあってのことである。また、ドタバタコメディの印象が強いセラーズではあるが、もうひとつの最後の作品「チャンス」は、大邸宅の庭師の生活しか知らない主人公が、主人の逝去と共に解雇され、突然世間に投げ出されるが、彼の俗世とかけ離れた言動から、政界の実力者から助言を求められる立場になっていく様を描いたもので、もの静かな初老の男を味わい深く演じている。
「2001年宇宙の旅」作品解説へ
 SF映画の金字塔としてのみならず歴代映画における傑作中の傑作との誉れ高い1作。筆者初見は、淀川長治さんが解説していた『日曜洋画劇場』においてであった。当時の感想は正直言って、意味不明。それもそのはず、この映画、居間でごろ寝をしてみる映画ではなかったのだ。そのことを知るのは、もっと後になってのことであった。この作品、今は無きテアトル東京、OS劇場(現在の同名館とは別)などのシネラマ館での定番の番組であった。複数の映写機を同期して上映することにより巨大な映像を可能にしたこの方式、画面に継ぎ目が見えるなどの難点はあっても、他では見ることのできない臨場感により当時の観客には話題の的となった。ただし、特殊な器材を必要とするこの方式、それほど多くの作品は作られず、巨大スクリーンを半ドーム上にするため無数のテープ状素材で構成したシネラマ館では、代わりに70mmで撮影された本作のような大作の上映館として定着する。後に、70mm作品も撮影されることがなくなり(多くは35mmからのブローアップとなる)、映画館が複数スクリーンによる効率化の動くが進む中、シネラマ館は閉館や小規模館への改装となっていく。かくして、筆者が、本作と再会するのは、上記OS劇場の“さよならフェスティバル”における上映でのこととなった。足元まで続こうかという、その巨大スクリーンに「ツァラトゥストラはかく語りき」の大音響と共に映し出された宇宙は、まさに、そこに投げ出されたかのような感覚を呼び、ここに作品の真価を見るというよりは、体験することになる。ボウマン船長が対面する未曾有のクライマックスを、観客も実際に共にしてみると、もはや言語に置き換え不可能な「何か」を感じる以外なくなるのだ。ストーリーは言葉にすることができたとしても、例えば山頂で星の海を見た時、その感覚をすべて言葉に置き換えることが無理なようなものである。
 上記文章は、多分に個人的かつ回顧的であるが、この作品ほどノスタルジーと無縁の作品もあるまい。もしも、近くの劇場で、上映する機会があったなら、是非とも駆けつけて、その真価を改めて確認して欲しい逸品である。
 さて、この作品、アーサー・C・クラークの原作ではいくつかの謎は既に解明されていたにも関わらず、謎は謎のままとしたのは、キューブリックの取捨選択によるものであろう。このキューブリックが捨てた部分を拾い出し、クラークによる続編を原作としたのが、ピーター・ハイアムズが果敢に挑んだ「2010年」である。ロイ・シャイダー、ジョン・リスゴウ等、芸達者が顔を揃えているが、キア・デユリアが再び顔を見せていることには、驚いた記憶がある。ハイアムズの99年末公開の作品は、製作費150億円と言われる超大作、シュワルツェネッガーの「エンド・オブ・デイズ」である。
「時計じかけのオレンジ」作品解説へ
 暴力にあふれ、またそれゆえに厳格に管理社会化された暗い近未来を描いた傑作。「ハラショーな気分」といったロシア語がまぶされた未来の俗語は原作から使われているものである。キリスト像が3体くらい並んでいるシーンは、日本人の眼にも奇異に映るのだから、カトリックが多大な力を振るう欧米においては、一神教としての宗教を揶揄したうえに大量生産大量消費を善しとするコマーシャリズムにも一石を投じた問題箇所だったのだろう。往年のMGMミュージカルに慣れ親しんだ世代には、あの名曲“Singin' in the rain”が眩暈さえ感じさせかねないほどに残酷に使用されるものの、本作も、そしてミュージカルの金字塔「雨に唄えば」も、同時期にビデオやリバイバルによって楽しむことのできる世代には、どちらも等価に楽しむことができるのだから、これは幸運なことと言えるかもしれない。
 暴力の申し子のような危険をはらんだマルコム・マクダウェルは、このイメージが後々にまで尾をひいた。気弱なH・G・ウェルズに扮した「タイム・アフター・タイム」はこのイメージを逆手に取った成功作であるが、ナスターシャ・キンスキーの兄に扮した「キャット・ピープル」でも、黒豹となって惨殺を繰り返す役柄だった。有名スターが実名で登場したロバート・アルトマンの「ザ・プレイヤー」では、アンディ・マクドウェル(「フォー・ウェディング」「グリーン・カード」「バッド・ガールズ」)が「私は、あのマルコム・マクダウェルとは、親戚でもなんでもないのよ」と念を押しているのが、楽しい。90年代は、日本のコミックの映画化「北斗の拳」(ケンシロウらの師匠役、善玉)や、メラニー・グリフィス主演の「ミルク・マネー」(売春組織のボス、悪玉)、人気シリーズ「ジェネレーションズ/STAR TREK」(2人の艦長を敵にまわす、悪玉)アリッサ・ミラノ主演の「ヒューゴ・プール」(酔いどれ親爺役でいい味を出している)などに出演している。
「シャイニング」作品解説へ
 現在では、その作品のほとんどが映像化され、アメリカを代表するホラー作家となったスティーブン・キング。本作が製作された時点では、ブライアン・デ・パルマが「キャリー」を監督した程度であり、キングの映像化としてはごく初期の作品に位置する。この後、デビッド・クローネンバーグが「デッドゾーン」を、ジョン・カーペンターが「クリスティーン」を、ジョージ・A・ロメロが「クリープショー」を、というように、名だたるホラー系監督が映画化していく時期を経て、やがて映画、TVムービー(ミニシリーズ)などに、その作品が長編・短編を問わず、また別名義で書いた作品(「バトルランナー」)なども映像化されるほどの大人気となる。
 世間から隔絶されたホテルを舞台に狂気の淵に墜ち、斧を振り上げるジャック・ニコルソン、そして眼をひんむいて叫ぶシェリー・デュバル、このスチール写真を見ただけで、充分怖そうなこの作品、キャスティングの段階でホラーとしての成功は約束されたようなものであるといったら、亡きキューブリックは、怒るだろうか。当然、主人公が次第に狂っていく演出の盛り上げも見事だし、廊下を走る子供の三輪車のシーンも迫力あり、かつ怖い(このシーンのために開発されたステディカムは、その後、移動撮影の必需品となる)。それでも、このニコルソンに迷路化した庭を追いかけられたら一生夢に見そうだ、と感ずるのは筆者だけではないと思うのだが、実はこのキャスティングに不満だった人物が一人いたのである。それは誰あろう、原作者スティーブン・キングその人であった。彼の主張では、見るからに、異様なニコルソンではなく、普通の作家(おそらくは自分を投影している、でもキングも見るからに'普通の'作家じゃないんだけど)が次第におかしくなっていくところに作品の醍醐味がある、ということで、その後、自身の指揮の下に、もう一本の「シャイニング」(TVムービー)を完成させることになる。
 なお、ヘア解禁前の当時、バスルームに現れた女幽霊の正面ヌードがあるため、税関(映倫だったか)よりカットを求められた際、完全主義者キューブリックはまたも自らの手で、修正作業をおこなったという。
「フルメタル・ジャケット」作品解説へ
 70年代、ベトナム戦争を題材に「ディア・ハンター」「帰郷」などの名作が生まれた。その後、コッポラが壮大な観念論的戦争大作「地獄の黙示録」を、私財を投じ作りあげた。80年代は、レーガン政権下、シルベスター・スタローンチャック・ノリスがベトナムに乗り込み雪辱を晴らさんとするかのような、鷹派傾向アクションが続出する。その中、自らも兵士としてベトナムに赴いた経験を持つオリバー・ストーンが自身の戦争体験をまとめんと手掛け、アカデミー賞受賞となった「プラトーン」が公開され、ベトナム戦争映画の製作がこの時期再燃する。タイトル通り、兵士が無残に肉塊となった激戦地を舞台とする「ハンバーガー・ヒル」、コッポラが再び挑む「友よ、風に抱かれて」。そして、一連のベトナム映画群の決定打となるだろうと噂されていたのが、キューブリックの手になる本作である。軍隊の非情性と言う意味で「突撃」をさらに推し進めたかのような本作では、上官が下士官しごきの最中に発するダーティワード(いったい何度“FU*K”が出てくるのだろう)が当初の字幕ではぬるい表現にされていたそうで、字幕翻訳者が降板させられるという前代未聞の事態になったのも、この監督ならでは。しかし、キューブリックが日本語を解すると言う話は聞いたことがないので、だれかが再び英語に訳し直したものをチェックしたのだろう。完成した作品は、果たしてベトナム戦争という範疇を超え、人間が兵器とされていく過程を刻一刻と描き上げた傑作となった。ただし、前半部の訓練シーンがあまりにインパクトが強いため、本来の戦争映画の見せ場となるはずの実戦シーンの印象が薄くなった感は否めない。
「アイズ ワイド シャット」作品解説へ
 タイトルの“眼を大きく(広く)閉じる”こととはいったい何?この謎のタイトルの意味は、映画を見た後には、明晰に説明しきることは無理でも、じっとりとまとわりつく暑さのように感じ取ることが出来るに違いない。美貌の妻、かわいい子ども、裕福な生活、すべて満ち足りたかに思える主人公が、自らはまっていく淫靡な罠。その圧迫感はただものではない。並みのホラーより遥かに恐い。さすがはキューブリック。
 重要な登場人物として、シドニー・ポラックが出演している。ロバート・レッドフォードとのコンビが多く(「追憶」「コンドル」「ハバナ」等)、最近では「サブリナ」「ランダム・ハーツ」でハリソン・フォードとも組んでいるベテラン監督。俳優として本作に出演した縁でか、キューブリックの幻の企画「A.I」の監督候補として、スティーブン・スピルバーグとともに有力なひとりと言われている。


戻る:銀幕英雄伝説Top Page 脱線メモTop Page

MEICHIKU HOME PAGE ヒーローのあしあと


意見、感想、その他のメールはこちらまで
メール送信のページ へ または、こちら

本HPは映画研究機関G.I.A.の監修の下、エンタテイメント研究会MEICHIKUが製作しています。
本ページの全部または一部の無断複写複製を禁じます。
(C)1999-2008 G.I.A.,MEICHIKU&Matsu-Red All Rights Reserved.