Kumi's Web-Site
<--You can start or stop the BG music here.


怖い話・・・術中覚醒

2004.2.1

ひとりのホームページ読者からのメールを、ご本人の承諾のもと、ここに転記する。術中覚醒の怖い怖い話である。

Kさんからのメール
 昨年12月に、某病院で、卵管腹腔鏡検査及び卵管形成術の手術を受けた者です。

 手術時間は、およそ3〜4時間だったと思います。
 手術室に入ってからは、硬膜外麻酔、その後、点滴からお薬が少しずつ入って、目が回ってきました。
(このとき、リラックスさせる為に、私が持参した音楽のCDをかけてもらいました)
 口にマスクを被せられて、ゆっくり呼吸を何回かして、そこで意識が一旦なくなりました。

 目をつむって、すぐ次の瞬間意識が戻りました。(夢なんて見てません)

 その時の音楽CDの順番から時間を計算すると・・・・意識が戻ったのは、意識がなくなってから、たぶん、20〜30分後ぐらいになると思います。もう一度CDの曲順を見ないと分かりませんが、かかっていた曲は覚えているので。

 口から出てる管が右の口にテープで貼られていて、そこがすごく痛くて気になりました。

 腹部はとっても熱い感じがして、ごそごそ触ってる感じもしました。

 自分で呼吸も出来ないし体も動かないので、本当に自分が死んでしまったのではないかと 怖くて怖くて、何度も心の中で寝ろ!眠たくなれ!って叫びました。

 何度か急に痛くなり、意識が遠くなりましたが、またすぐ元に戻ってしまって 、看護士や医師の会話もハッキリ覚えています。

 手術後は、泣きながら「何で意識があるんですかー!なんで痛いのー!」って叫びました。

あれから毎晩うなされます

 この辛かった経験が将来自分の為に役立つことを信じて前向きに頑張ろうと、頭では理解して思っているのに、毎晩手術台の夢にうなされます。。。

 全身麻酔でも意識があることなんて、1万人に3人の割合とかって麻酔科の先生は言ってましたが。。。過去にそういう例ってあったんですか? その人たちは、もう元気になられたんでしょうか。

 私も、早く元気になりたいです。その為には、やはり心療内科へかかるしかないのでしょうか。

 先日、会計に行ってきましたが、結局、怖い思いをしても、支払う金額は同じなんだぁ・・・仕方ないのかぁと少し寂しくなりました。

 同じような思いをした人と話してみたいです。どういう風に改善されたとか聞いてみたいです。何か良い方法をご存じであれば教えてください。

麻酔科医にはこれだけで十分でしょう

 これを読んでおられる方の内何割が麻酔科医かはわからないが、麻酔科医達はこれを読んですべてを理解されたであろう。・・・ 彼らにはなんの解説もいらない。

 しかし、読者は麻酔科医だけではないので、私の推測を記載する。

 この麻酔はおそらく、硬膜外麻酔併用の全静脈麻酔、または亜酸化窒素(笑気)の入らない揮発性麻酔薬(セボフルラン?イソフルラン?)による麻酔。麻薬の投与量が少なく、しかも健忘作用の強い薬(ホリゾン=セルシン、ドルミカムの類い)が、ディプリバンまたは導入のチオバルビツレート以外、ほとんど使われていない。その状態で、シリンジポンプがこわれたか使い方を間違えたか点滴路がはずれたかつまったか、あるいは、気化器の揮発性麻酔薬の残量がゼロになっていたのである。

 つまり、意識をとるために用いた薬が単一で、その薬が何かの事故で設定通りに入らなかったのである。

 私自身、セボフルランやイソフルランが使われるようになる前に、いわゆるNLA麻酔で、患者を術中覚醒させてしまった経験はある。しかし、その場合、笑気を使い、麻薬も使っていたので、患者は多幸感を保っていた。術中痛みがあったという訴えもなかった。彼らは術中聞いて記憶している術者の会話を、術後、笑いながら語ることができるのである。

 それに対し、全静脈麻酔で患者が術中覚醒していた時の術直後の反応は明らかに異なる。筋弛緩薬の効果が切れるあるいは抜管するなり、患者は泣き叫ぶ。・・・ こちらは私は自分では1例も見ていないが、そういう事故を起こしてしまった麻酔科医やたちあった看護師は、一様に、そういう様を語っている。

 だから私にはわかる。Kさんの受けた麻酔は、笑気が入っていないし麻薬も足りない。それでいて、硬膜外麻酔と筋弛緩薬が入っている。そこに、何かの事故が起きた・・・シリンジポンプがこわれたか、麻酔科医が寝ぼけて設定を間違えたか点滴がはずれていたか・・・

 通常全身麻酔が浅ければ、血圧上昇、頻脈で麻酔科医は気がつくはずであるが、この症例は硬膜外麻酔のために血圧、脈拍とも低かった・・・だから麻酔科医は気がつかなかった。

麻酔科医以外の読者には

 麻酔科医以外の読者に、私は何を言ったらいいのだろう・・・ こんなことはめったにないという以外、私には何も言えない。

 麻酔科医の読者には、これ以上何も書かなくても、私のいいたいことはわかっていただけたと思う。即ち、術中覚醒という合併症の恐ろしさを、決して忘れてはいけない・・・

 麻酔深度に細心の注意を払うべきである。そしてさらに、注射器や気化器に麻酔薬は入っているか、点滴がちゃんと落ちているか、ディプリバンの白色が点滴ラインに見えるか、呼気ガスモニターで使っているはずの麻酔薬が出ているか、etc., etc..... それらは麻酔科医ならみんな知っていることである。その知っていることをちゃんとやらなければいけない。

さらに私は言いたい。君子危うきには近づかず・・・ 特に、硬麻や筋弛緩薬を併用している時には、術中覚醒を防ぐ保険として、意識をとることを単一の薬に頼らない方がいい、麻薬か亜酸化窒素(笑気)かベンゾディアゼピン誘導体なども、十分に併用した方がいい、と私は考える。


Home
Mail