パリ滞在レポート

Report No.6
2004.8.19 rev.


§フランス人の食事スタイルについての一考察

一般的な話ですが、フランスの食生活スタイルというのは昼に一番heavyな食事が来るようです。朝はご存じのようにコンチネンタルスタイルの朝食(要するにパンとコーヒー。目玉焼きなどのアメリカンスタイルは一般的ではない)、夜は卵料理やスープのようなlight mealを食べているようです。彼らに聞いたところ寝る前に大量のカロリーを取るのは健康上望ましくないとのこと、確かに言われてみればその通りで、この食生活スタイルのおかげで過剰な肥満が予防されているのかもしれません。我々日本人は朝はフランス人よりも多く食べ(朝食抜きの人も最近多いみたいだけど)、昼はlight meal、夜はたっぷりと食べているというパターンですからフランスと昼夜が逆転していることになります。しかも”夜のつきあい”という名の元に宴会をやって、アルコール類と共にカロリーの高い食事をしていますので、日本人はあまり健康的な食生活を送っているとは言えなさそうです。

それではフランス式に昼を充実させればよいかというと、食事の問題は生活習慣と密接に関連していますのでそう簡単にいかないでしょう。まず昼を充実させるにはそれ相応の食事を出してくれるところを見つけなければなりませんし(それも毎日のことです)、食事時間も十分にとらなければいけません。私の日本の職場のカフェテリアはメニューの種類に乏しく、外で買ったり持参しても変化に富んだ昼食を用意するのはなかなか大変なことです。となると夜の食事を軽くし、代わりに朝にたくさん食べるようにするのがベターでしょうが(実は私はこのスタイルで生活していますが、体重はここ10年ほとんど変化していません)、朝食の重要性は多数の人が指摘するにもかかわらず実際には軽視される傾向にあるようです。前に20代30代男性のBMI(body mass index,肥満傾向の指標)が上昇を続けているという新聞記事を読んだことがありますが、これも食生活のスタイルに問題があるためと思われます。

さて、それでは私の周りの研究室の人たちがどのような食事スタイルを取っているのかをレポートしましょう。

1.レストラン・パスツール
まず、パスツール研究所のカフェテリアを詳細に語らずしてこの話は始められません。
カフェテリアの建物を入ると、まず入り口が2つあります。左側が料理コース、右側はサンドゥイッチやサラダなどの軽食を扱うビュッフェコースです。料理コースの入り口をくぐるとplat du jour(日替わり一品料理)が通常3点展示されています。通常魚料理、肉、卵などメインの素材を違えたものが3種類ほど提供されるようです(しかも付け合わせの野菜(legume,米もここに含まれる)を好みに応じて選ぶことができるんです。)
ここを通り過ぎて料理の配膳口に並びますが、料理の供給口は大きく4つのコーナーに分かれていて以下のようになっています。 1)肉関係を扱うコーナー 2)スパゲティ&ピザ&スープを扱うコーナー 3)日替わり1品料理を扱うコーナー 4)チーズ、デザート関係を扱うコーナー それからサラダ、フルーツ、ヨーグルト、ケーキ、ワインなどの飲み物が置いてある場所が別途あり、各自欲しい料理のコーナーに自由にアクセスできるようになっています。メイン料理のレパートリーの広さもさることながらヨーグルトやチーズ、フルーツなども実に豊富で、この世の天国とはまさにここのことを指すのではないかと思われました。好きなだけ取ってから最後に支払いを済ませ(これが驚くほど安い)、テーブルに向かいます。途中にドレッシングやバターなどを置いたコーナーがありますが、言うまでもありませんがこちらも種類が豊富です。
また、ここではテーマを決めて料理のフェアをやるようです。この間あったのはレバノン料理のフェアでした。何が起こるかというと、日替わり一品料理がすべてフェアのテーマで統一され、デザートなどもテーマに沿ったものが並びます。カフェテリアもレバノンの雰囲気を出すためのレイアウトになり、ちょっとしたお祭りの雰囲気です。

2.食事を楽しむって
周りを見ていると、主菜、パン、それからチーズやデザートはみなさん必ずといってよいほど食べています。先生はいつもビールを飲んでいるしワインを飲んでいる人もいます。私の見たところ量、質ともに日本の夕食相当のものを食べています。かなり甘いと思われる、チョコレートがたっぷりと載ったケーキも皆平気でばくばくと食べています(これは少し意外でした)。食事の時間中はずっとおしゃべりが続いていて、途切れることはまずありません。いったい何を話しているのか詳細はわかりませんが、仕事の話はまずしていない(※)ですね。後から確認するとバカンスの予定、映画、週末にどこへ行く/行った、といった話題が多いようです。それから上記に書いたように料理のフェアの時には各自少しずつ食べ物を交換して品評会に早変わりします。盛り上がってくるとワインでも1本開けようかということになってきて、実に楽しくやっています。

ビジネスランチという言葉があります。これはすなわちランチを食べながらビジネスの話をするということで、アメリカでは盛んだという話を聞いたことがあります。本で読んだ話ですがNASA(アメリカ航空宇宙局)ではディスカッションしたい内容に応じて昼食時に座るテーブルが分けられており、他分野の研究者と気軽に情報交換できるとか。こういうスタイルはアメリカでは一般的なのかもしれませんが少なくとも私がお世話になっている部屋では一般的ではないようです。仕事の話をしながら食事をすると必ず消化に悪いとか、味が落ちるとかいうことはないのでしょうが、常に仕事、仕事という雰囲気の中に浸り続けるのはフランスのスタイルではないのでしょう。
※仕事の関係でお客さんが来たときには、1日くらいは食事の時に仕事の話もする、とのことでした。でも研究室内でそういうことはまずないらしいです

3.フランスの食事スタイル〜日仏の違い
もちろんこれは人により様々でしょう。自分が聞いた範囲ではフランスでは昼に最もheavyな食事を取るようです。ある人は昼間には肉を食べるが夜に肉を食べることはない、といっておりました。日本の場合は夜に最もheavyな食事が来るのでここの部分が反転してます。朝食には大きな違いがあるようには思えず、シリアルやパンにコーヒー、ヨーグルトといったものが一般的なようです。それではフランス人の夕食はどんなものかというと、自分が聞いた範囲ではゆで卵にスープ、それからワインというパターンが多かったです。もちろん町のレストランに行けば日本と変わらないディナーを食べることができますが、家庭で食べる料理はそれとは全く異なるとのことです。ある大学院生は夕食は食べないで、フルーツとヨーグルトで済ませていると言っていました。

それから、日本では飲み会と称して終業時間後に街へ繰り出し飲み食いします。ここには歓送迎会などの行事が重なるのは言うまでもないですが、こちらではそのような習慣はなく、仕事が終わってから職場で集まり飲み食いというのはしないようです。夕方になるとカフェにはたくさんの人が入って賑わっていますが、大部分の人はカフェへ行くのかと聞いたらそんなことはなくて、聞いた範囲では終業後カフェで時を過ごしている人というのはいませんでした。

つまり、まとめると、朝はコンチネンタルスタイル(パン、ヨーグルト、、チーズ、シリアル、コーヒーや紅茶)、昼はカフェテリアでメインの食事(主菜、デザートとそれからコーヒー、紅茶、酒も)、夜は卵料理とスープのような軽い物とワインということになるでしょうか。よくよく話を聞いてみると甘いもの(ケーキなどの菓子)も昼間には食べるが夜には食べないようで、就寝前にお腹に食物が残っていることはないのでしょう。ワインに関しては本当に水代わりといった感じで大量に消費されているようです。夜の飲み会など、生活習慣の違いがあるので一概に比較はできないですが、街をゆく大衆で異様に太った人をあまり見かけなかったのはこのような食生活のパターンによるものなのかもしれません。


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