私の読書ノート

読書ノートから、お勧めの書籍(文学作品の朗読を含む)をご紹介します。
紹介のスタイルとして、読んでくださっている皆さんに手紙を出すという想定で文章を作っています。
該当作品にはAMAZON書店へリンクを貼りましたので、興味を持たれた方は手に取ってみてください。

拝啓

しばらく大和和紀『あさきゆめみし』を通巻で読んでいたり、自然科学書を読んだりしていましたもので、更新の間隔が空いてしまいましたm(__)m 『あさきゆめみし』はなかなか面白かったです。

酒井順子は私の好きなエッセイストの一人です。内容も文体も好きなのですが、なんといっても日常のちょっとしたことに対する考察の視点のユニークさがたまりません。全部ではありませんが、彼女の著作は大部分読んでいます。

今回ご紹介する本は、古本屋で偶然見つけました。彼女の書いた『負け犬の遠吠え』という著作がかなり話題になり、講談社エッセイ賞と婦人公論文芸賞を受賞したそうですが、この『負け犬の遠吠え』をネタに、様々な女性陣と対談をした、その対談集がこの本です。対談の相手は、私が知っている範囲では、内田春菊、小倉千加子、瀬戸内寂聴、田辺聖子、林真理子、香山リカの名前があります。

『負け犬の遠吠え』自体も私は読みましたが、文学との関わりがあまり強くないのでこおサイトでは取り上げる予定はありませんが、この『先達の御意見』の中に収められている、瀬戸内寂聴との対談は源氏物語がテーマになっています。中身もなかなか面白かったので、ここでご紹介する次第です。ちょうど大和和紀『あさきゆめみし』全巻を読了した所でもあり、源氏物語に出てくる姫君に対して親しんでいるところでもありますので。

酒井順子が言うところの、”負け犬”とは、”30歳以上、独身、子供無し”を言うわけですが、瀬戸内寂聴は紫の上を「負け犬」であると断じています。まぁ確かに紫の上は光源氏との間に子供は無く、女三の宮と光源氏との結婚で淋しい思いをし、結局命を落としてしまうわけで、よくよく考えると彼女は幸福か、と言われると考え込んでしまうかもしれませんが。

六条御息所は光源氏よりも年上でかつプライドが高いですが、そこが哀れで、源氏物語を味わい深いものにしていると、二人は割と高く評価しているのは面白かったです。この当時は一夫多妻が普通で、かつ身分が高い貴族は多数の女性を囲うのがあたりまえの世界でしたから、私は女性は「男はそういうもの」と割り切っているのかと勝手に思っていました。しかし、源氏物語の世界で展開される女性たちの苦しみを見ると、やはり意中の男性は独占したいという気持ちが非常に強く働いていたことがわかります。酒井順子と瀬戸内寂聴のトークは現代の感覚でなされていますけれど、それでもこの二人の源氏物語談義が面白く読めるのは、独占や嫉妬というのは色恋沙汰には時を超えて普遍的な感情なのかもしれません。

私は、源氏物語の中では末摘花が比較的好きで(あの不器用さが好き)、花散里も悪くないと思っていたのですが、花散里はハナから降りている、という2人の考察を読んで、ふうん、こんな風に捉えるんだと新鮮でした。酒井順子は「花散里のことを女から見るとイライラする」と言っていますが、残念ながらちょっとこれは男の私にはわからない感覚ですね。

敬具




酒井順子著
『先達の御意見』
文藝春秋刊

文庫・単行本


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読書ノート No.7 2007/4/12
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