私の読書ノート

読書ノートから、お勧めの書籍(文学作品の朗読を含む)をご紹介します。

岡田睦生著『音楽の聴き方』−聴く型と趣味を語る言葉、中公新書(2009)

クラッシック音楽を例に、音楽との関わりを考察した論文である。名曲紹介や自分の趣味を語るといった内容ではない。音楽との関わりを言語、リズム、地域、歴史といった側面から考察する論文であるが、「音楽を楽しむためには」という視線を常に保ちつつ論考を進めているので、親切な書と言える。

<目次>
第1章 音楽と共鳴するとき
第2章 音楽と語る言葉を探す−神学修辞から「わざ言語へ」
第3章 音楽を読む−言語としての音楽
第4章 音楽はポータブルか?−複文化の中で音楽を聴く
第5章 アマチュアの権利−してみなければわからない

音楽を理解するには豊富な言語を持たなければならないこと(→言語が豊富なら、それを駆使して音楽の表現を豊かにし、他人とコミュニケーションできるという意味)、音楽は時代や状況と切り離せないこと、従って録音されたものばかり聴くことは楽しみを狭めてしまうこと、極限状態の音楽(戦火の中で演奏されるベートーヴェンなどは非常に強く人の心に訴える力を持っていること、等々、私にとって興味深いことばかりであった。

かっての交響曲はアマチュアが連弾(ピアノの場合、一つの曲を二人で弾くアンサンブルのこと)にして弾き、自宅で楽しめるようになっていたというのも、私は初めて知った。著者は音楽を身近に感じ、さらに一歩進めた楽しみを目指すのであれば「聴く」から「する」へ進むことを推奨している。もちろん、「する」のはプロ並みに「できる」ようになる必要は全くなく、あくまで「聴く」楽しみを補助するためのものである。そしてここに豊かな言語が加われば、「聴く」楽しみは一層レベルアップするだろうということである。

著者は、音楽を語るためにはそれ相応の言語を取得する必要がある、ということをはっきりと打ち出している。我々がものを感じ、考える際には必ず言語を介在させるため、言語が不十分だと「感じる」という行為自体を充分に行えないかもしれない。そのような場合は他人と音楽を語るにも不自由するのはもちろん、なによりも自分の内面で音楽と充分にコミュニケーションできない。だから、音楽に関する勉強は必要だ、というわけだ。これはおそらく美術や文学など、他の芸術についても当てはまる。

音楽の鑑賞は、別に他人にとやかく言われる筋合いのものではないし、そこに掟があるわけでもない。いくらアナーキーと言われようとも自分が良ければ良い、というのが根底にある。しかし、楽しむためには踏んでおいた方がよい手続きや知っておいたほうが良い知識がある、それはこんなものでそれを取得するとこのように世界が広がりますよ、というのを非常にクリアに示してくれている、という点で本書は大変有意義だと思われる。


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岡田睦生 著
『音楽の聴き方』
(2009)


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読書ノート No.43 2009/12/05
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