私の読書ノート

読書ノートから、お勧めの書籍(文学作品の朗読を含む)をご紹介します。

外山滋比古『男の神話学』、中公文庫(昭和57年)

外山先生の本は読みやすく、面白いので見つけたらなるべく買うようにしている。この本は自宅近くの古本屋にて購入。昭和57年に書かれた本なので、今の感覚で読むとちぐはぐな感じがするが、外山先生独特のユーモアでそこは克服。第1部と2部は男と女についての話題なので、時代的にずれているのは否めないが、それもまた楽しく読み進めることができるだろう。外山先生の「ことば」に対する鋭い感覚はこの本でも充分に発揮されている。

第1部は、男にまつわる話。「男は強くなきゃ」という世間一般(この当時)の雰囲気と、それにまつわる言い回しを軽妙に解説する。そしてその根底に流れているのは、男の強さはやせ我慢の強さ、実は女の方が実質的にはずっと強い、という観察である。高校生の男が朝、ドライヤーを一生懸命かける、つまりおしゃれをしていることを取り上げ、そこから男の化粧の話に発展する。さらには、男が化粧をするようになってから女の化粧が減ったことを挙げ、「お化粧不変の法則」なるものを披露する(^^; ここまで来るとさすがに読者も外山先生のユーモアだとわかる。外山先生は女の化粧度が低下したので男が化粧するようになった(女と男の化粧度を合計したものは常に不変、というのがお化粧不変の法則である)とする仮説を立てるが、私はこの仮説が正しいようには思えない(^^;

第2部は、第1部の内容を引き継ぎ、男女平等に関する話題になっている。男と女の強さを比較し、男の強さはやせ我慢の強さだと指摘する。やせ我慢が通用しているうちはよいが、それが壊れるとあっけないほどの弱いと。一方女はやせ我慢はしないから、結構しぶとくて長持ちするという指摘だ。男が短期決戦、女が長期戦で最後は勝負をものにし、長い目で見た場合は女の方に軍配が上がるという話。女は現実主義との指摘もあり、ここら辺は外山先生の勤務先での女子学生の観察結果に基づいたものだろう。ただ残念ながら、昭和57年にこの本が出た当初(初出典は昭和54年に出た単行本)には新鮮なコメントだったのかもしれないが、今現在ではあまり新鮮味があるようには思えなかった。

第3部は読書のヒント、第4部はことばと文章と、外山先生のご専門である文章に関するエッセイが続いている。乱読の効用や読書メモのすすめのような雑文が収録されている。軍隊にいたころ何日も活字を見ない日が続いた後で古新聞を拾って読んだのが実に面白かったこと、子供の時に禁止されていた小説を隠れ読んだのも実に面白かったことが熱心に語られ、読書を愉しむには適度の(精神的な)餓えや制限があった方がよいとする指摘は興味深い。外山先生は読書を精神の食事に例えておられるが、食べ物が有り余っていれば有り難みも感じないし食指も動かない。読書もそれと同じで、喜びを増幅するためには物理的な制限をかけることも重要なのである。本そのものが入手できない、読書のために使える資金に厳しい制限がある、というのは、読書の質を上げるためにも有効かもしれない(笑)。

「私の読書ノート」には、外山滋比古が著した下記の本の感想文もアップロードされています。

言葉のある暮し
ライフワークの思想

以上

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外山滋比古 著
『男の神話学』
(昭和57年)


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読書ノート No.40 2009/8/23
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