私の読書ノート

読書ノートから、お勧めの書籍(文学作品の朗読を含む)をご紹介します。

佐藤可士和の超整理術、日本経済新聞社(2007)

売れっ子のデザイナー、佐藤可士和氏が提案する整理術の本。整理ノウハウの公開とそれにより仕事の効率、精度がアップするという内容。

私はデザイナーや美術には疎くて、佐藤可士和氏のことは知らなかったのだが、この本を読んで彼が携帯電話や国立新美術館のデザインを手がけた有名なアーティストであることを知った。私の感じるところによれば、彼のデザインはシンプルで力強く、無駄なところが一切無く、しかも妥協を許さないという緊張感があるようだ。

日本経済新聞社から出版されていることからもわかるように、仕事の効率、精度の向上についてのかなりのページを割いて説明している。アートデザイナーというのは空間に対する感覚が非常に鋭いのでどんなことを言っているのかと興味を持ちながら読み進めたが、彼の提案は至ってシンプル、法則を決めて無駄をそぎ落とせ、だ。それからモノを出来る限り絞り込むことも勧めている。

私がこの本を読んで心に留めたことは2つ。 1つは、氏が、「言葉で作品(=考え方)を説明するということも非常に大切」と述べていること。これは私の偏見なのだが(そして、その偏見は文学小説の中に描かれた芸術家の様を読むことで培われたと思われるのだが)、芸術家の仕事というのは自分が渾身込めて作り上げた作品を、他人が一目見て評価するものだと思っていた。しかしこの本の中では佐藤可士和氏は、作品を認めてもらうには自分が対象に対して考えて表現したことを、相手(クライアント)にきちんと言葉で説明できなければならないと指摘する。それは、芸術家ではなく広く一般的に仕事で行われている、ミーティングやプレゼンテーションと同じ考え方である。クライアントから仕事が依頼されて作品作りにとりかかり、完成したらそれをクライアントに提出して評価してもらう。それは私が考えていたような、一目見て評価するというものではないらしい。それはどのような意図でそれを作ったのか、意味するところは何かをクライアントにきちんと説明し納得してもらうという作業なのである。そしてなぜこのデザインにしたのかという過程を相手に理路整然と語れるように、思考回路の整理をきっちりと行うようにしたら、作品から曖昧な部分が消えていったという。これは、整理することによって自分の思考回路が影響を受け、それこそ価値観が変わってしまったということである。”整理”に対してここまで力強く、創造的な意味を語った人を私は他に知らない。

2つ目は、アイディアの創出に関する佐藤可士和氏のコメントである。「整理と問題解決は、同じベクトルでつながっている」、と。整理することは新しい視点を見つけることにつながるという発想で、現時点で材料としてあるものをうまく並び替えてみるのを勧めている。新しいものをゼロから生み出すのは難しいので、目の前のものを的確な視点で組み替えると精度がぐんと上がるとのことである。このことから、整理するというのは義務に駆られて行う事務的なものではなく、答えを導き出すための非常にクリエイティブな作業であると言える、と氏は提唱している。practicalな氏の視線が生きた、非常に良いアドバイスであると思う。

以上

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佐藤可士和 著
『佐藤可士和の超整理術』
(2007)


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読書ノート No.39 2009/8/16
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