| 私の読書ノート |
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読書ノートから、お勧めの書籍(文学作品の朗読を含む)をご紹介します。
『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか』、ひろゆき(西村博之)著、扶桑社新書(2009) 先日感想文をアップした、『ウェブはバカと暇人のもの』の中で引用されていた書物である。巨大匿名掲示板、2ちゃんねるの管理人が現場について語った書。読了後に感じたのは、冷静で論理的な展開をする人だなというのが第一印象であった。梅田望夫氏がネットの理想論を語っているのに対し、中川氏と同様に管理者の現場からの物の見方である。 私は、梅田望夫氏の文章はpositiveに満ちていて好きなのだが、インターネットの全てを包括的に語っているわけではない。ネットを通じたコミュニケーションにしても、梅田氏が唱える「集合知」が綺麗に当てはまる(実際にそのように現実が動いている)部分もあれば、意味のないメッセージが延々と続き、誹謗中傷合戦が繰り広げられる場所も存在する。梅田氏は後者の部分について積極的に語っているようには思えないのだが、そのような世界が存在している以上は、どこかで誰かが説明する必要はあるだろうと思っている。中川氏とひろゆき氏の著書は梅田氏がカバーしない部分をフォローしているので、一読の価値がある。特に2ちゃんねるを実際に使用している人であれば尚更面白みが増す。 インターネットが普及する前、パソコン通信が流行った時代があった。PC-VANやNifty-Serveといった名前を懐かしく思い出す方もいるだろう。これらのサービスの中での主なコミュニケーションは、SIG(Special Interest Group)やフォーラムといった特定のテーマの元に参加者が集まってメッセージをやりとりするのであるが、そこにはシスオペと呼ばれる管理人がいて話の流れやメンバー同士のいざこざをコントロールするのが普通であった。SIGやフォーラムで実態は様々だったと思うが、定評のあるフォーラムには数人の常連さんがいてメンバーの様々な要求に対応していたように思う。私はパソコン系のフォーラムに参加して随分といろいろなことを教えてもらった。今現在、インターネット上でも同様のコンテンツは存在するのだが(例えばYahoo!の知恵袋など)、パソコン通信のフォーラムほどは密度が濃いやりとりにはなっていないように感じる(あくまでも私の印象である)。2ちゃんねるにもパソコンやソフトウェアの板があって、自分が関連する内容については利用させてもらっているが、回答がもらえるかどうかは本当に運任せの状態という気がする。私は当初はパソコン通信のフォーラムの感覚で入ったのだが、うーん、ここはそういうことを期待してはいけない場なのかなあというのが率直なところである。 ひろゆき氏は、「2ちゃんねるのようなサービスの需用はなくらならい」と説くが、それは真実だろう。それは酒場やギャンブルの需用がなくならないのと同じで2ちゃんねるだけが特別な場所だとは思われない。ただインターネットは全世界と瞬時につながるという幻想を皆が持っているため、ここで起きたことは地球規模でものすごく大きなインパクトを与えると期待(?)を持つ人が多いのもまた事実であるが(実は、私もweb siteを立ち上げるまではそのように思っていた)、インターネットの影響は皆が考えているよりはずっと小さいのである。この著書の中でひろゆき氏が語っているコア・メッセージはそれに尽きると思っている。 梅田望夫氏の説く「webの理想郷」は私は今でも好きだし、地球規模でそのような理想郷が分野限定でも実現できれば大変すばらしい。以前に梅田氏は一日の大部分をネット漬けになって生活し、とても充実していたと述べていたが、でも自分にはできないな(^^;と正直言って思った。梅田氏の場合は氏が何かアクションを起こすと、それに反応する人たちがたくさんいて集合知につながるのかもしれないが、少なくとも私を含め大部分の個人ウェブマスターやブロガーにはそのようなことは生じない。これは良くも悪くもある。良い面としては、もし仮にそんなにドラマチックな反応が起きてしまえば対応しなければならずリアルの生活の方に少なからぬ影響が出てしまうこと。通常はこのようなことは起きないので、私たちはwebやblogを作って楽しんでいられるのである。悪い面は、自分が発したメッセージに対する反応がほとんど無く、否応にも自分の影響のなさを味わうことになる。梅田望夫氏の著書を読み、よしっ、自分も何かメッセージを発信してやろう、世界中のどこかにレスポンスしてくれる相手がいるかもしれない!と思って実行に移しても、大抵その望みは打ち砕かれる。(ひろゆき氏によると「そんなのが当たり前だ」で終わってしまうのかもしれない)本書は、自分でwebやblogを運営している方に特にお勧めできる。
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| 読書ノート No.33 2009/7/5 | |