私の読書ノート

読書ノートから、お勧めの書籍(文学作品の朗読を含む)をご紹介します。
紹介のスタイルとして、読んでくださっている皆さんに手紙を出すという想定で文章を作っています。
該当作品にはAMAZON書店へリンクを貼りましたので、興味を持たれた方は手に取ってみてください。

拝啓

さてさて、街はすっかりクリスマスムードになっております。私の通勤路でも夜になると美しいイルミネーションがこれでもかっ、というくらい綺麗に輝き、実は毎日そこを通って帰るのが楽しみだったりします。白色と青色の発光ダイオードでライトアップした木々には、北欧の雰囲気が漂って冷たい美しさを感じます。

今回ご紹介するのは、フェミニストの社会科学者として知られる上野千鶴子が書いたエッセイです。私は上野千鶴子の本を数冊読んでいますが、この本は上野千鶴子が自分の考えを軽く綴ったもので文体は軽め、しかし上野千鶴子の視点の鋭さや頭の良さといったものが非常に良く出ている本かと思います。

第一章では、「もと優等生」という章が現れ、「私は優等生だった、優等生のつらさを話してあげましょうか。」といった挑発的な文章で始まります。うー嫌なやつだなあ(-.-)と思いつつ読み進みますと(嫌な奴、だけれど読み手を惹き付ける強引さと、読み手を裏切らない内容がそこにはある)、上野千鶴子がどんな視点で物事を見ているのか、感じているのか、話が次々と展開していって、大変面白く読めます。

この本は意見が分かれるようで、「らしくない」という声もあったとか。ここら辺の事情は上野千鶴子が後書きで述べられていますが、これはひとつのささやかな「冒険」であったそうです。

精神的な贅沢ってなんだろう? その答えの一つが、今は死にたえた言語を一心不乱に勉強すること。
上野千鶴子は、京都の喫茶店でたまたま居合わせた女子学生が一心にラテン語の教科書を読んでいるのを見て激しい嫉妬にかられます。こういった、ワンシーンを鋭く切り取って読者に緊張感を持って提示する、というのがはとても上手いです。(実は、この箇所は大英博物館で過ごした夏の思い出とセットになっているのだが、そこにある山のような本に触れる喜びも鋭く語られています)

上野千鶴子、イコール、ジェンダー論というイメージは強いし、私もその線をイメージしてこの本を手に取りました。もちろん、ジェンダー論からの視点での文章もあるのだが、それだけではないところがこの本の面白いところです。「知的な喜びとは何か」についての、ひとつの(模範)回答を示した本かと思います。

                                                           敬具


上野千鶴子
『ミッドナイト・コール』
朝日新聞社(1993)


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読書ノート No.3 2006/12/11

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