私の読書ノート |
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読書ノートから、お勧めの書籍(文学作品の朗読を含む)をご紹介します。
今回また、宮沢賢治の作品朗読CDをご紹介します。 宮沢賢治の詩集を朗読したもので、私が好きな「春と修羅」の中の「永訣の朝」も収められています。 宮沢賢治の作品は、小説も、詩も有名なので、おそらくこのサイトを訪れてくださっている方の大部分は一度は作品に触れたことがあるのではないでしょうか。作品は小学校の国語の教科書にも採用されているようです。私もどこかで一回は詩集に触れたことがあるはずなのですが、全然覚えていなかったのですけれど、村上もとか『修羅の剣』という剣道マンガを読んで、その中に「春と修羅」からの引用が出ていて、それに感動して早速購入しようと思った次第です。私は詩については私はあまり詳しくないし作品もあまり読んだことはないのですが、三好達治の「測量船」の中に出てくる「乳母車」という詩が好きで、高校生の授業の時に暗記するのにこの作品を選んだものでした。この作品は今でも好きですが、「永訣の朝」もいいですね。 「永訣の朝」は、これまた超有名な作品なのでご存じの方も多いと思います。臨終の床に就いている幼い妹を詠ったもので、明け方に夭折してしまう幼い命のために一碗の霙(みぞれ)を取りに行く、その動作と妹の苦しむ様子、苦しみながら言葉を発する妹とのやりとりひとつひとつが詩の中に凝集されていて、非常に強いインパクトがあります。 人間は本当の窮地に立たされたとき、神に祈るという行為を行うものなのですが(曾野綾子氏が講演会の中でそのようなことを述べています)、この作品の中に出てくる祈りも、人間が味わう最も悲しいものの一つではないかと思います。ここで出てくる祈りというのは、特定の宗教、神に対して祈るのではなくて、本当に太刀打ちできない自然の力に対して、人間が畏怖を感じて屈さざるを得ない時に出てくる行為のように、私には思えます。 この詩に詠われている情景から、私はてっきり賢治が小学生かせいぜい中学生、妹の方は小学生低学年くらいかと思い込んでいました。詩全体から私が受けた情景と、妹とし子の言葉(朗読された文言)から、ずっとそのように感じていました。この作品を読んだり聞いたりした皆さんは、心の中にどのような情景が浮かんだのでしょうか?私は、両親のいない幼い兄弟2人が、今にも潰れそうなボロ家の中で二人、食べ物も暖も取れずに暮らしている、妹は結核のような不治の病でずっと寝たきり、そして今夜いよいろ臨終の床に就いている、といった設定です。霙を清く美しいものとして詠い上げ、その清く美しいものが黒く恐ろしく乱れた天から降ってくる、そして妹は今晩その天に召されようとしているという様子が、この詩句から思い浮かんでいます。野坂昭行『火垂るの墓』のプロットと重なるものがありますが、「永訣の朝」の方が詩だけあって密度は桁違いに濃いですね。
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http://www.shinchosha.co.jp/book/830041/ 新潮朗読CD
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読書ノート No.28 2009/3/09 |