| 私の読書ノート: 加藤栄一『天才がいっぱい』−つくば発知の贈り物36話 |
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読書ノートから、お勧めの書籍(文学作品の朗読を含む)をご紹介します。
該当作品にはAMAZON書店へリンクを貼りましたので、興味を持たれた方は見てみてください。
1992年とかなり古い本だが、発想法や未来の捉え方といった点でなかなか面白い本である。現在は古本でしか入手できないが、お勧めの一冊。 私がこの本のことを知ったのは、確かNifty-Servenサイエンス関係のフォーラムであった。インターネットではなくてパソコン通信の時代の話である。当時、旧藤沢薬品工業が画期的な免疫抑制剤FK506(現在はプログラフという商品名で売られている)を発見したことが話題になっていて、それはつくばの研究所でなされた研究なのである。当初、旧藤沢薬品の研究所の横にはエーザイの研究所が建っていて、そこの所長が「隣にはできて、何故うちにはできないんだ!」と激怒したという話が伝わっていた。そこら辺の下りが皮肉っぽく書かれている本、ということで興味を持ったので購入した。 著者の加藤栄一氏は公務員で、つくば学園研究都市を「知の集合体」として前向きに捉えている。つくばに関しては、少なくとも出来た当時は賛否両論あって、私が通っていた大学の先生はnegativeな意見の人が多かった(世間から隔離された環境で研究をするのはよくない、など)。現在はつくばエクスプレスも開通してずいぶんと開けていると思うが、相変わらず筑波大の自殺率は高いのだろうか? 「天才」はどこにでもいる、あなたの周りにいるちょっとした「天才」を見つけてみませんか、つくばにはそのような「隠れ天才」がいたるところにいますよというのが著者のメッセージである。つくばの現状(1992年当時)を語りつつ、知的生産のアイディアや日本の未来について語っていく。天才の一例として、「自分の頭の中に仮想の国を作って、そこに遊びに行っている人」というのが出てくるが、こういった想像力豊かな人が必ずしも世間に知れ渡るとは限らない。天才は、その能力を使って大いに仕事をする人と、その能力を使ってなるべく仕事をしないで済ます人に大別され、この人は後者に属するからだ(^^; 「天才」という言葉から連想されるイメージというものがあるが、人間の能力の種類は考えられているよりも遙かに広い。それに、人間は概念が頭にないと認識できないため、目の前にあっても見えない。もしかしたら私たちは、日常的に「天才」に接していても、それが見えていないのかもしれないのである。概念の引き出しを増やして、「天才」に逢いましょう! 注)書かれた時代が時代なだけに、構想の古さを感じさせる箇所があるのは否めない。例えばインターネットについてはほとんど何も書かれていないし、ワールドブックセンターの構想もインターネットが普及している現在から見ると時代遅れの感じがする。しかし著者の物の考え方や論理の運びは充分に楽しめるように思う。 p.s.以前に紹介した、ケビン・ミトニック『ハッカーズ』の中にも「天才」が多数出現する。コンピューターシステムへの不正アクセスは困った問題なのだが、そのハッキングのテクニックの開発やノウハウを持っている人は一種の「天才」と言えるだろう。
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| 読書ノート No.22 2008/12/6 | |