私の読書ノート:
梅田望夫『シリコンバレー精神』グーグルを生むビジネス風土 |
読書ノートから、お勧めの書籍(文学作品の朗読を含む)をご紹介します。
該当作品にはAMAZON書店へリンクを貼りましたので、興味を持たれた方は見てみてください。
拝啓、平成20年になってから、初の読書ノートをアップロードします。
梅田望夫氏の本は、このウェブサイトのコンテンツでも紹介しています(『ウェブ時代をゆく』の解説)が、この本は梅田氏の一連の著書の原点となるものです。氏がWEb 2.0時代と呼んでいるものがどのようにして立ち上がってきたのかがわかりすく解説されています。
私は、インターネットを個人で使うこと、特に知的生活や知的生産への活用に以前から興味を持っていていろいろと情報収集に努めてきました。WEB 2.0時代では地球規模で相手探しやコミュニケーションの確立が進むと思いますが、これがその発信地である米国シリコンバレーでどのように生まれてきたのかが興奮を持って語られています。氏は実際にシリコンバレーのベンチャーに投資した経験もお持ちで、著書ではそのときの緊張感あるやりとりや投資を決心したときの充足感も読み取ることができます。
私は、米国という国があまり好きではないのですが(理由は、医療制度がかなりお粗末だからです)、この著書を読むと世界を大きく変える新しいものを創造する力は、米国が強いのかなあと感じされられます。シリコンバレーで活躍する人々が持つ特別のバイタリティー、心底まで好きなことに打ち込む姿勢、才能に恵まれ、とことん努力する姿勢を目の前に見せつけられると、未来というのはこういうところから作り出されてくるのだろうと思ってしまいます。梅田氏が投資を決めたベンチャー企業も、ビジネスのアイディアもさることながら、力強い情熱に支えられた知性を持つスタッフが揃っていたようです。
この本の中にある、自分と相性の良い対象を突き詰めていった先にある、対象を「好きで好きで仕方がない」と感じる境地、これを梅田氏は「好きということのすざまじさ」と表現しています。シリコンバレーとは、この「好きということのすざまじさ」が世界を変えることを力強く示した一例でしょう。今後はシリコンバレーの東洋版(単にシリコンバレーのコピーではなくて)が日本初になるか、日本が大きく貢献できるように願ってやみません。
しかし、まぁこれが世の中の面白いところなのかもしれませんが、梅田氏が投資したベンチャーは結局清算しなければならなかった(=失敗)ようです。梅田氏が感じた情熱だけでは世界は動かないのか、あるいはそもそも成功確率が異様に低いのだから失敗はごく当たり前のことなのか、この本を読まれた方々がどのようにお考えになるかは人により違うのでしょう。日本は一度失敗してしまうと敗者復活は難しいので、この本に述べられていることをそのまま日本にコピーしても失敗するだけでしょうね。
シリコンバレーの強さというのは、(理系の)知性の強さ、理論の強さと言えるかと思います。これらを真っ正直にどこまでも推し進めていくのは、それはそれで一つの道でしょう。この本の中に、ビル・ゲイツやライナス(Linuxの生みの親)の発言を取り上げて「幼児性豊か」だと指摘していますが、問題は「幼児性豊か」な考え方をする人間が世界を変えるほどの発明をしてしまう、巨額の富みを生み出してしまうところにあるのです。今のところこれはシリコンバレーの世界だけで生じている出来事ですが、他の技術分野でも同様のことが起こるとなると困ったことが起きるかもしれません。人間にとって技術は大事なのは確かですが、技術だけが大切なわけではないのは忘れてしまってはいけません。ここで是非合わせてお読みいただきたいのが、藤原正彦氏『数学者の言葉では』です。私も、藤原氏の考え方と同様に、理系の技術だけで突っ走ってしまうのは非常に危険だと思うのです。
よろしければ梅田望夫氏の他の著書、『私塾のすすめ』の読書感想文もご覧下さい。こちらから。
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敬具
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梅田望夫
『シリコンバレー精神』
(2006) |
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| 読書ノート No.14 2008/1/19 |

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