| 私の読書ノート:鈴木孝夫『日本人はなぜ日本を愛せないのか』 |
読書ノートから、お勧めの書籍(文学作品の朗読を含む)をご紹介します。
該当作品にはAMAZON書店へリンクを貼りましたので、興味を持たれた方は見てみてください。
拝啓、あと1日で平成19年も終わりですね。皆さんは如何お過ごしでしょうか。
鈴木孝夫氏の著作は、今までに何回か読んだことがあります。今回ご紹介するのはその最新作ですが、氏のご専門である言語学の立場から論じられた日本論です。氏の以前の著書の内容を踏襲した論の展開になっていますが、以前の著作を読まなくてもこれ1冊だけで氏の主張が理解できるようになっています。自分は国際人だ、と自負されている方、外国(特に欧米)とのやりとりをされている方、異文化や外国に興味のある方にはお勧めします。
私が一番面白いと感じたのは、私たちがあまり知らない欧米の影の部分に光を当てた部分です。例えばイギリスは動物愛護の国というイメージがありますが、要らなくなった愛犬をあっさりと殺してしまったり、さらには英国南極探検隊が経済的理由によりハスキー犬100頭を射殺して処理してしまう(イヌを殺すのが一番経済的)といった話を取り上げ、日本人が考えている「動物保護」というイメージからはずいぶんと外れるのではないかと思います。私もイギリスでこのようなことが行われているとは知らずにびっくりしました。
鈴木氏は、これはイギリス人と日本人が持つ世界観の違いに由来することで、イギリスでは家畜は人間に絶対服従であり有用であるべきもの、日本では家畜は(人間と同じ)生を持つ存在として人間と同列に扱うべきもの、という考え方の差から来るものであると論じます。
さらには、大陸では長い歴史の中で民族同士が侵略したりされたりを繰り返したのに対して、日本は四方を海で囲まれていたため外国文化の良い面ばかりを吸収して発展できたという違いを挙げ、「外国」に対する考え方が大陸の人種と日本人では根本的に異なることを挙げています。そして、この違いこそが現在日本の抱えている種々の外交問題や日本文化が直面している様々な問題点の根底である、まずは日本人がこの違いをきちんと認識しなければいけないと主張しています。
我々にとって割と馴染みのある、捕鯨問題、侵略問題についても氏の視点から詳細な解説を行っており、他民族が共生するのがいかに難しいかを真正面から論じています。 日本の良さ、というと私なぞはなんとなーくこそばゆい気持ちがしますし、NHKラジオのお国自慢や四季折々の便りを想像してしまいますが、ここで氏が論じている日本の良さというのは、諸外国と対等に渡り合っていくために我々が是非認識すべきもの、という意味での非常に力強いメッセージです。
何らかの形で外国人と接触のある方々には是非お勧めしたい一冊です。
敬具 |
鈴木孝夫
『日本人はなぜ日本を愛せないのか』
新潮選書 (2006) |
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| 読書ノート No.13 2007/12/30 |

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