アサギマダラマーキングのやりかた

信州アサギマダラ研究会

マーキングマニュアル


 アサギマダラは大型の美しい蝶で、夏の高原をふわふわと飛ぶ姿は人々を魅了します。秋になると、各地の海沿いでも見かけることがあります。バードウォッチャーからの報告では、秋の渡り鳥調査の時に白樺峠・伊良湖岬といった場所を飛んでいると言われます。
 ここ四半世紀ほどのマーキング調査で、アサギマダラは大規模な移動(渡り)をすることがわかってきました。アサギマダラの移動調査は、簡単なやり方さえ覚えれば誰でも参加できます。あなたも是非、アサギマダラの移動調査(マーキング調査)にご参加ください。

1.アサギマダラについて

 アサギマダラはマダラチョウ科に属する南方系の蝶で、羽を広げると10cmにもなる大型の蝶です。前翅は黒、後翅は茶色の地色ですが翅の中央部から基部にかけて白い透き通るような部分があり、夏から秋の高原を舞う姿は優雅です。この白い部分が新鮮な個体では青みがかっており、日本古来の色の名前で「あさぎ色」であることからアサギマダラと名付けられました。青いマダラチョウということから、中国名では青斑蝶と言います。北海道では稀ですが、夏季は日本中で見られ、ヒヨドリバナなどに集まって吸蜜します。休眠越冬態をとらないので、冬でも落葉しないキジョランなどの幼虫の食草がある関東以南の温暖な地方では越冬できます。

2.アサギマダラの渡り

 アサギマダラの生態で最も興味深い点は、非常に長距離の渡りを行うことです。この実態を明らかにするために全国でマーキング調査が行われています。シーズン累計で何千もの個体に標識する個人もいる他、昆虫関連の同好会が組織的におこなった調査会や自然関係の施設が主催した一般対象のマーキング会も開催されています。
 これまでに長野県から遠くへ行った記録には、美ヶ原→沖縄県(約1300km)、美ヶ原→鹿児島県与論島(約1200km)、奈川村白樺峠→鹿児島県喜界島(約1000km)などといった長距離を含め、岐阜・愛知・三重・和歌山・高知・広島・鹿児島・沖縄県への移動が確認されています。
 その後も白馬→沖縄県(約1700km)が確認され、国内移動の最長距離記録となりました。2000年には春の移動期に台湾から日本への北上が確認されたこともあり、次は国外へ渡るものを送り出すことができるのではないかという期待もあります。
 長野県の特徴としては、長距離移動をした個体の再捕確率の高さが目立つことから、更に多くのマーキングをして追試することが課題となっています。

3.マーキング調査の方法

 調査用具
  ・捕虫網(昆虫採集用のソフトな網のもの)
  ・油性フェルトペン(黒)
  ・アサギマダラ識別絵はがき(雌雄のチェックに使います。ご入用の方はお問い合わせ下さい)
  ・定規(前翅長で蝶の大きさを測ります)
  ・記録用紙(ダウンロードして下さい)
  ・調査マニュアル(この文章です。プリントアウトして下さい)

 マーキング(標識)とは、チョウの翅に「しるし」をつけることです。個体ごとに、決まったマーク(標識)をつけて放してやり、それがどこかで再捕獲されると、その個体の寿命や、移動分散の距離を知ることができます。
 アサギマダラのマーキングは油性のフェルトペン(マジックインクのようなもので、ふつうは黒を使います)で、翅に「しるし」をつけます。アサギマダラは丈夫なチョウですが、「しるし」をつけるときには、チョウの翅や脚、触角などを傷つけないように注意して下さい。翅を軽く持つくらいなら、大丈夫です。しかし「死んだふり」をすることもあるので、マークしている最中に逃げられないように注意して下さい。
 翅の裏側(翅をたたんだときに外側になっている方)に標識者が特定できるような記号と個体番号、標識した日付などを書き込んで下さい。細かなやり方は人によって多少違いますが、例えば、次のようにするとよいでしょう。

☆都道府県マークを書く
  「Nagano」などと書いてあってどこから来たのかわかりやすいと、一般の方に再捕獲された場合でも見捨てられにくくなると思います。
☆記号として、自分の名前(または名前の略号)を入れる。
  例:ハシモト、HAMA、うえまつ、など
☆個体番号は標識場所の略号+個体番号とする。
  例:UTU123、松−4、ミサト−3、しらかば125、など
☆細かい字を書けるようなら標識日を入れる。
  例:980806、98/08/06、98-8-6、など
☆再捕獲した人が連絡してくれるように連絡先の電話番号を書くと、もしかして直接電話がかかってくるかもしれません。楽しみですね。
  例:0263-36-12** 、TEL026-1**-00**、など

★長野県内でのマーキングには、「長野」、「ナガノ」、「ながの」、「Nagano」といった県名を示す文字をどこかに書き入れをお願いします。

 なお、マークは4枚の翅、全てに記入したほうが見つけてもらいやすくなります。左右の翅に同じマークをつけても結構ですし、それぞれの翅に記号、個体番号、標識日、電話番号を別々に書いても構いません。あなたのマークした蝶を捕まえた人がどこか遠くから電話をかけてきたら、とっても素敵なことですね。


4.調査結果の記録と報告

 蝶へのマーキングが済んだら【マーキング調査報告用フォーマット】個体カードに記入しましょう。個体カードには、可能な範囲で記入すれば結構です。ただし☆をつけた項目は必ず記入して下さい。
 もし可能なら、マークした蝶の写真を撮っておいて下さい。蝶にマークをしてカードに記録をとったら、アサギマダラを驚かさないように、そっと放してやります。草か何かに、静かに止まらせるのもよいでしょう。一日の調査が終わったら、自分の手元に残す記録として個体カードから一覧表の記録用紙に必要事項を書き写しておきます。

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          【マーキング調査報告用フォーマット】

☆標識   :右前翅       ←標識した記号や番号等を翅ごとに記録します。
           右後翅
           左前翅
           左後翅
☆性別   : ♂・♀・不明   ←性別を記録します。
前翅長   :大阪式   mm   ←前翅裏面基部の2つの白点うち、
                  胸側の大きい白点から前翅端までの長さ
                  (大阪式)を測って記入します。
鮮度    :新鮮・やや汚損・汚損
その他   :          ←翅の切れ、汚れ、シミなどチョウの状態を
                  記入します。
☆標識場所 :     県    ←マークをつけた場所の地名を
                  できるだけ詳しく書きます。
☆標識日時 :  年 月 日   ←マークした日付(とできれば時間)を
         時   分    正確に記入します。
☆標識者氏名 :         ←マークした人の名前を略さずに書きます。
☆標識者連絡先:         ←マークした人の住所、
   住所  :          電話番号等を記入します。
   電話  :
   E-MAIL :
標識時の天候:          ←マークした時の天候を記入します。
標識時の気温:  ℃       ←気温がわかれば記入します。
標識時の様子:          ←マークしたときのチョウの行動などを
                  記録します。
備考    :          ←何かメモがあれば書きます。

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 前翅長の測定方法は、胸側の大きい白点から前翅端(翅頂・apex)までの長さ(大阪市立自然史博物館方式)で測ります。
 個体カードに記入したデータを家に帰った後でアサギネットに報告します。各地でマーキング調査をした人の標識データをまとめておけば、再捕獲されたときに、誰がどこでマークをしたのかすぐ確認ができるようになります。
 アサギネットへの報告方法は、インターネットやパソコン通信が便利です。 インターネットを使い慣れた方は、CGIで直接アサギマダラ・マーキングデータブックへ調査報告を書き込んで下さい。 慣れない方は電子メールで pen@japan-inter.net まで送って下さっても結構です。
 アサギマダラマーキングで最も重要なことは、「このマークは誰がどこで書いたものなの?」ということが分かるようにすることです。そこで、マーキング調査をされた方は必ず報告をお願いします。信州アサギマダラ研究会へ報告されたものはマーキング関連の情報網全体に流しています。少なくとも、各自の調査者記号を早めにご報告下さい。

 アサギネットでは、送っていただいた情報は「標識の番号や記号」および「電話番号や住所などの個人情報」を伏せ字にして、原則として公開しますが、非公開を希望される場合はお知らせ下さい。

5.他人がマークしたアサギマダラを採集・目撃したときは

 マークした時と同様に、標識の記号や番号、性別、場所等を下記の報告用フォーマットに記入してアサギネットへご連絡下さい。アサギマダラ大移動研究会や各地の蝶類研究者へ連絡し、標識者を探してお知らせします。採集した蝶が飛べるなら、もう一度放して下さい。もしかしたらあなたの採集地を中継して、もっと遠くに行くかもしれませんよ。
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          【マーク蝶確認報告用フォーマット】

標識    :右前翅_________
           右後翅_________
           左前翅_________
           左後翅_________
性別    : ♂ ・ ♀ ・ 不明
前翅長   :        mm
鮮度    :新鮮・やや汚損・汚損
その他(翅の切れなど):
確認場所  :____(都・道・府・県)_____(市・町・村)______
確認日時  :  年   月   日     時   分
確認者氏名 :
確認者連絡先:
  住所  :
  電話  :
  E-MAIL :
確認時の天候:
確認時の気温:  ℃
確認時の様子:(吸蜜・休息・産卵・死体拾得)、吸蜜の場合は植物名_____
備考    :
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 データはわかる範囲で書き込んで送って下さい。記入方法は2.マーキングの方法に準じます。

6.調査の上での注意事項

 秋には平地でも見かけるアサギマダラですが、夏に多く見られる高原は県内では国立・国定公園等の自然公園に指定されているところもあります。従って、自然保護には十分に配慮した行動をして下さい。遊歩道以外の草原への立ち入りや植物を傷つける行為は禁止されている場所があります。アサギマダラは花に吸蜜にくることが多く、植物を踏みつけてしまってはその後やってこなくなります。見えているところにいても定められた道から網が届かない場合は、植生に入り込んで無理に捕獲するよりも見逃す余裕を持ちましょう。また、草原に立ち入るなどのマナー違反をする人を見かけたら、昆虫採集・植物観察を問わず、積極的に注意する勇気を持ちましょう。自然を守るのは一人ひとりの義務であり、権利でもあります。
 自然公園内は多くの自然を愛する方が訪れる場所ですので、調査だからと言って横柄な態度をとったり、通行の邪魔になるのは避けましょう。たずねられた場合には、なぜアサギマダラのマーキング調査をしているのかを親切に教えてあげたりするのも、調査に対する理解を得るために必要なことです。

7.アサギマダラに関する情報やご質問

 アサギネットは色々な方法でマーキング調査をやってみようという方のサポートをします。
 インターネット:藤井恒(pen@japan-inter.net
 郵便     :福田晴夫(〒890-0024 鹿児島市明和4−5−32)
 パソコン通信 :Niftyserve 昆虫フォーラム(FKONCHU)

 インターネットで「アサギマダラ情報」というホームページが公開されています。ここではマーキングの方法や標識情報、アサギマダラ大移動研究会が発行した「アサギマダラ・ニュース」のバックナンバーなどを読むことができます。
 URL : http://www2h.biglobe.ne.jp/~pen/asagi-news-index.htm

 マーキング方法のわからないことやアサギマダラに関するご質問は、電子メールでpen@japan-inter.net に送るか、Niftyserve(パソコン通信)の昆虫フォーラム10番電子会議室【アサギマダラ移動情報】でお訊ね下さい。なお、他の方へも有益と思われる質問事項については名前を伏せて問答集にさせていただくことがあることをご了解下さい。

8.アサギマダラマーキング会

 一般が参加できるマーキング会がときどき企画されています。
 マーキング会や昆虫観察会は、各地域の愛好会行事で行われることが多く、一般公開していない場合もあるようです。そうした虫の会などの団体を探して参加してみると良いかと思います。また、一般公開のマーキング会を企画・開催する場合の技術的援助や広報などをしたいと思いますので、お気軽におたずねください。

9.信州のアサギマダラネットワーク

 信州アサギマダラ研究会が主体となって標識情報を集めたり、参加希望者への調査会の紹介をします。また、アサギネットを通じて全国の標識情報を集中管理するアサギマダラ大移動研究会への連絡もします。シーズン終了後に県内の調査結果をまとめた年報を発行しますので、長野県内でマーキングをおこなった方はぜひ記録をお寄せ下さい。この研究会には次に挙げる県内の自然観察愛好団体等が参加協力しています。協力いただける個人・団体を随時求めていますのでご連絡下さい。

  信州アサギマダラ研究会
 顧問    :浜栄一(信州昆虫学会会員)
 事務局   :橋本肇
 参加協力団体:
        松本ナチュラリストクラブ
        三郷昆虫クラブ
        豊科町田淵行男記念館友の会・虫の会
        美ヶ原高原自然史研究会
        信州ワシタカ類渡り調査研究グループ
        日本野鳥の会軽井沢支部研究部
        美ヶ原の自然と風土を考える会

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