信州のコウモリ(日本語版)第4章 東洋蝙蝠研究所

信州のコウモリ 第4章


こうもりのはなし


コウモリの出す超音波について

 小型コウモリは、エコロケーションのために出す超音波の種類によってCF型とFM型の2タイプに分類されます。

CF(Constant Frequency)type 一定周波数型

CFコウモリの探索パルス


FM(Frequency-modulated)type 周波数変調型

  FM型コウモリのパルスは探索時に十数回/秒程度(種によって異なります)で、獲物を感知すると反復率が上がって、最終的には100〜200回/秒になります。普通の飛翔時にプツプツプツと聞こえるのに対して、ブブブズズッと聞こえる間隔の短いこのパルスを「バズ」と呼びます。

FMコウモリの探索パルス


パーチ中の超音波測定

このページの中では、種ごとのページでコウモリの超音波をBDでヘテロダイン 変換したサウンドファイルが流れるようにしてあるものがあります。
また、うまく流れない場合は信州のコウモリ→ヤマコウモリ、にヤマコウモリの 飛翔中の超音波を変換したFM音が、また、信州のコウモリ→キクガシラコウモリ、にキクガシラコウモリの枝にとまって空間スキャンする音が入っていますのでクリックでダウンロードして下さい。
 どうぞバットディテクター体験をしてみてください。


探索飛行時と捕獲の瞬間では超音波の使い方が異なります。

超音波を聞き取って、コウモリを見つけよう

 コウモリが出す超音波をキャッチするには、バットディテクター(BD)という機械を使います。これは、人の耳に聞こえない超音波をセンサーで感知して電子回路によって可聴音波に変換するものです。長らく国内ではなかなか手に入りにくかったり、入手して使ってみてもその結果が何だという話をする場があまりありませんでした。そこで、やはりBDを使ってる人で使い勝手の話が出来たりするようにしたいということから情報交流の場を東洋蝙蝠研究所で確保しようと言う動きがあります。また、海外からの輸入販売をすることで国内で普及を進めていこうと考えています。
 BD関係についてページを用意しました。
バットディテクター情報ページ

参考書

台湾的蝙蝠
 1997年11月に
台湾的蝙蝠が出版されました。中国語ですが内容がとても充実しており、近年アジア地域で出版された中でとても優れた本だと思われます。信州からは橋本が写真提供しました。

コウモリ−進化・生態・行動
 1998年5月にコウモリから生物学を学ぶ教科書「Bats Biology and Behaviour(John.D.Altringham著)」の日本語版が八坂書房から出版されました。下記は翻訳者グループからの紹介です。信州からは翻訳グループに久野、橋本、藤原が参加しました。
お近くの書店で入手が困難な場合はお問い合わせ下さい。

「コウモリ−進化・生態・行動」
監修:松村澄子
翻訳:コウモリの会翻訳グループ
ISBN4-89694-412-7
定価:7500円+税

 著者のJ.Dオルトリンガムさんはイギリスのリーズ大学生物学部所属の博士です。動物の移動運動と生体力学が専門で、長年、コウモリの生態研究や保護問題に取り組んでいます。アメリカのBat Conservation International(BCI)のメンバーでもあり、BCIが出しているコウモリの声のテープなどの制作にも携わっています。
 この本は、コウモリがどのように進化してきたのか、どのように飛翔能力を獲得したのか、超音波をつかって、どのように狩りをするのか、その生き残り戦略、繁殖戦略などを、美しい挿絵とともに解説したコウモリ学の集大成といえます。
 訳にあたってはなるべくわかりやすい言葉で表わすよう心がけ、専門用語については巻末に用語集を加えました。コウモリについてあまり知識のない方でも十分楽しめる本になっていると思います。

コウモリと病気

 ときどき、「コウモリから変な病気なんて感染らないんですか?」という質問を受けます。「家にコウモリが住んで糞を落としていくけど、病気が心配」という声もあります。最近、海外で新しいウィルスがコウモリから見つかったり、オーストラリアではオオコウモリのケアをしていた人が死亡するというニュースが取り上げられたために、少し敏感になっている方も多いようです。一般的に人家に住み着くコウモリが人の家に入ってくるようになってから非常に長い歴史と伝統があるにもかかわらず、日本では病気の元になったという例がありません。コウモリの寄生虫を研究している人には「コウモリそのものを見ても何だか見分けがつかないが、寄生虫を見ると何コウモリだかわかる」と言う方もいます。それは、コウモリをめぐる他の生物の流れがそんなに広くないことを示しているのかもしれません。つまり、コウモリにはコウモリ用のスペシャルな病気や寄生虫の世界があり、だからこそ日本では人とコウモリの共通の病気が見つかっておらず、また家に住むコウモリ以外でなら探せばあるかもしれないが、基本的に人との接触の無い生活環では問題になってこなかったということなのかもしれません。
 しかし、自然や野生生物観察がブームになりつつある中で、様々な自然観察会、エコツアーがおこなわれようとしており、中に不十分な雑誌記事や能力の低い指導者によるコウモリを扱ったものが出てくるのを見ると危惧の念を感じます。自然の、例えば洞窟に住むようなコウモリがいる環境の中へ人が入っていくことは通常の生活ではありえません。だからこそ、まだまだ不明なことが多く、もしかしたら未知の病気もあるかもしれません。
 例えば既に正体が分かった病気で話をしましょう。日本は世界の中では数少ない狂犬病が根絶された国です。現在、世界では年間4万人程度が狂犬病で死に、感染源はその名の通りイヌ、そしてネコといったペット動物が圧倒的に多い中で、年間3、4人はコウモリから感染したとされる人が含まれているようです。それは不用意に(コウモリのいる)洞窟へ入ったなど無謀な人の行動に原因があるもののようです。面白半分の洞窟探検には、そんなリスクを自分で負う責任を知ってもらいたい物です。
 今までに国内のコウモリ研究者がコウモリ由来の深刻な病気になったという話は聞かないものの、実のところ野生コウモリにおけるサーベランスは今まさに始めようという話が持ち上がったばかりなのです。アメリカは既に始めているそうですが、何しろ住んでいるものが新大陸とはかなり違いますから、日本人のコウモリ研究者の健康のためにも、本当はもっと日本政府に力を入れて欲しい分野であると思います。以前、南米へ行った日本人の健康管理のためにコウモリの狂犬病情報が知りたいという質問が国の機関から寄せられたことがありましたが、国内がこんな状況で海外のことまで情報はきっと蓄積されていないでしょう。
 これに加えて、今の日本は「ペット輸入大国」と言われるほど、色々な野生動物が新しいペットとして持ち込まれるにも関わらず、その検疫体制は十分なのかどうかよく分かりません。特定種に対する一定の検疫期間中に発病・死亡しなかったもの、付随しているかもしれない未知の微生物には対策があるのでしょうか。この点について、安心できると自信を持って語れる動物関係者がいないことだけが現状を示していると言えるでしょう。
 今言えるのは「今までは、今のところは大丈夫だった」という現実だけなのです。



バットボックスのすすめ


 近年、大きな樹の生えている自然の深い森が減少したのに伴って、生態がよくわかってすらいない樹洞棲コウモリが実態が明らかにされないまま減って行っていると言われます。大木がなくなったのは、他ならぬ人間の利用・伐採によるものです。
 我々は、代償措置としてのバットボックスやバットハウスを設置することでコウモリ達の生息環境の創造をはかり、その間にできれば自然林を回復させるような努力をしなければならないのではないかと考えます。




人とコウモリの文化史

97年コウモリフェスティバルで展示された中川コレクションの一部

 かつて、中国やその影響を受けた日本ではコウモリがとても縁起の良い生き物として大切に扱われていました。その名残が色々なモノの中にデザインされたり描き込まれたりしており、そんな自然と人が仲の良かった時代のコウモリの姿を探しています。またそんな時代が訪れることもあるのでしょうか?文化は日々生まれて過去へと変わっていきます。現代社会におけるコウモリの受け止められ方をリサーチするため、最新のコウモリ文芸作品も探していきたいと考えています。

コウモリフェスティバル



 毎年、こうもりウオッチングの普及やコウモリの生態調査メソッドの講習などのメニューと共に、全国のこうもりファンが集まるお祭りが開かれています。
 第1回は長野県の乗鞍高原で1995年に開催され、「コウモリに市民権を」というスローガンでした。その後青森、奈良、北海道、広島と全国各地で開催されています。2001年は岐阜と山梨で誘致合戦がおこなわれています。





コウモリ観察会情報

 このページを読んだ方から、「コウモリのことがだいぶ分かった、しかし実際に見てみたいけど一人では難しそうだ。そういう機会はないか?」という声がよく聞かれました。自然の中でコウモリが占める重要性に比べ、まだ国内ではコウモリをテーマにした自然観察会は少ないようです。そこで、数少ないコウモリ観察会の開催状況をお知らせするページを用意しました。この他にも、一般の方の参加に門戸を開いているコウモリ観察会がありましたら、ぜひ教えて下さい。マイナーな分野の情報こそは、やっている人から発信することが重要な気がしています。


コウモリ会議

 実地のコウモリ観察会以外に、コウモリの保護状況や調査・研究について話し合う「コウモリ会議」が時々開かれています。最近の重要な話題は日本におけるコウモリ保護アクションプラン(Action Plan for the Conservation of Bats in Japan)の策定についてです。


巡回博物館「コウモリ展」

 普段、なかなか本物のコウモリを見る機会というのは少ないものです。オオコウモリは比較的多くの動物園でも飼育されていますが、小型コウモリとなると、生きている姿はおろか、標本を持っている博物館すら少ないのが現状です。
 そこで、コウモリとはいったいどんな生き物なのかの理解を進めるため、「コウモリ展」という移動博物館構想によって、全国を巡回して正しい理解と知識の普及を進める予定です。

東洋蝙蝠研究所の案内

 このサイトでお伝えしているコウモリの現状を明らかにしたり、そして保護策をこれまで以上に推進していくため、従来あった国内のコウモリ関係者の集まりである「コウモリの会」の中から実際に調査や保護の現場に出ることができる人によって「特定非営利活動法人東洋蝙蝠研究所」を設立しました。その名の通りいわゆるNPO法人として法人格を得ることで行政や企業からの自然環境調査などの業務委託を受けやすくして、専門家の持つ学術情報を広く市民の利益に還元する接点となれるような機会を探ったり、同時にコウモリファンの親睦団体的な役割であるコウモリの会とは違った手法で保護につながる実質的な調査研究活動を追求していくことも目的のひとつです。研究所独自の調査や研究を進めるほか、アジアの研究者、野生生物NGOとの連携をはかっていきます。


質問へのお答え・その他

 ときどきメールでコウモリに関する質問などを受信しますが、名前も住所もないものも少なくありません。そういうものは問題外として対応しませんが、内容によって有用なアドバイスをすべきものや、回答するに適当な研究をしている人から答えてもらった方が良い場合があります。また、色々な相談に対してボランティアから実際に対応可能かどうか判断して回答した方が良いと思われるものもあります。
 こうしたことから、質問や相談のメールは適当な人物やMLにどんどん転送していくことにしました。ボランティアワークで対応可能な物については返事があるでしょうし、派遣費用を伴う物は各自で交渉して下さい。
 その際、どんな状況かも解らないまま答えるのは至難の業ということで、何を訊いておいたら予測がつけやすいか検討したものを「コウモリ問診票」として出してありますので、それくらいは記入して添付した方が回答してくれるかもしれない人に対して印象が良いでしょう。
 また、内容が繰り返し多くの方から寄せられる質問であったりするものは、ご質問を匿名として使用させていただき、順次Q&Aのページに入れていくことにしました。返事が来ていない方は覗いてみてください。質問メールを寄せられる場合は、こうした使用の可能性をご承知おき下さい。


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