クビワコウモリJ 東洋蝙蝠研究所

 信州のクビワコウモリ(Eptesicus japonensis


分布 : 中信 (白馬・大町・木曾でも記録がある)
環境庁(1998)レッドデータブックランク : 絶滅危惧IB類(Endangered)
長野県(2004)長野県版レッドデータブックランク : 絶滅危惧IB類(EN)

バットディテクター25KHZでタタンタンタンタン・・・
信州乗鞍高原には、世界でただ一ヶ所しかわかっていないクビワコウモリ繁殖地があります。しかし今、その存亡が危ぶまれています。これに対して繁殖環境の維持のため、民間の環境保護助成を受けて日本で2例目のバットハウスが1996年に建設されました。毎年クビワコウモリをはじめとした乗鞍高原のコウモリ調査のほか、間違ったイメージを持たれがちなコウモリの真実を伝える一般向けのお話会やコウモリ観察会を開いています。
乗鞍高原に完成したコウモリ小屋(クリックで大きな画像が出ます)
愛称:乗鞍高原バットハウス
   長野県乗鞍高原のクビワコウモリの発見とその後の経過

1989年  ・奈良教育大学の前田喜四雄先生により乗鞍高原にてクビワコウモリ発見される。
1990年 ・山本がクビワコウモリの生態調査を開始する。
1991年 ・クビワコウモリの生息場所(旅館の壁の中)の改修工事の話が持ち上がる。
1992年 ・クビワコウモリの生息場所(旅館の壁の中)の改修工事が行われる。
・クビワコウモリ用の小屋2個が設置される。(利用されず)
1993年 ・クビワコウモリの生息場所(旅館の壁の中)の改修工事が行われる。
・世界自然保護基金日本委員会(WWFJ)の助成を受ける。
 ・「コウモリの会」の「クビワコウモリ保護研究部会」としてクビワコウモリの生態調査を開始する。
1994年  ・文部省の補助金を受ける。
・長野県乗鞍自然保護センターにてコウモリの講演会と観察会を各2回開く。
1995年  ・乗鞍高原で日本初のコウモリフェスティバル開催
       ・「クビワコウモリを守る会」発足
       ・アムウェイ・ネイチャーセンター第7回環境基金助成金の交付が決まる。
1996年  ・乗鞍高原で第2回コウモリフォーラム開催
       ・長野県乗鞍自然保護センター敷地内に「乗鞍高原バットハウス」建設

コウモリ観察会

 長野県乗鞍高原で一般対象のコウモリ観察会を行います。どなたでもお越し下さい。

  乗鞍高原は多くの種類のコウモリが住んでいる自然豊かな地域です。クビワコウモリ、ヒメホオヒゲコウモリ、ウサギコウモリ、コキクガシラコウモリといった街のコウモリとは違った種類が活動しています。

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 クビワコウモリを守る会による乗鞍でのコウモリ調査は初夏から秋までの予定です。
 コウモリをじっくり学びたい方の参加をお待ちしています。

バットハウス清掃作業
 毎年、清掃作業と利用状況調査を11月におこないます。
持ち物:大きめのドライバー、軍手、かなづち、釘、ペンチ、等々その他必要と思われるもの
服装:汚れてもいい服装(終了後すぐ近くでお風呂にはいることもできますので、着替え等の用意も)

長野県内でのコウモリ関係の行事は信州の自然環境リンク集も参照してください。

BIG NEWS!! バットハウスにコウモリが入居
〜信州安曇村から成功の報告〜 (1997年7月速報)


1.クビワコウモリについて

 クビワコウモリは、体長約10cm体重10g前後で、大人の手のひらにちょうど入る くらいの大きさのコウモリです。体毛に黄金色の毛が混ざっていて、とまって休ん でいる状態を見るとちょうど首の回りに黄金色の輪が有るように見え非常にきれい なコウモリです。

 クビワコウモリは日本固有種です。1951年に発見されてから1979年までの約30年 で10頭程が確認されていたにとどまり、その後10年間まったく発見されずにいまし た。1989年に中部山岳国立公園・乗鞍高原で初めて集団が発見され、これが繁殖集 団である事が分かりました。

 クビワコウモリは、ヒナコウモリ科クビワコウモリ属のコウモリで、世界に35種 中の1種です。日本には、本州に生息しているクビワコウモリと、北海道に生息し ているホリカワコウモリ(キタクビワコウモリ)の2種がいるという考えと、両者 は同一種(クビワコウモリ)とする考えがありましたが、別種という結論が出まし た(前田 1983・1984・1994、Yosiyuki 1989)。

 つまり、乗鞍高原の繁殖集団は、現時点において世界で唯一確認されている大変 貴重なものであると言えます。この繁殖個体群の確認された最大時の個体数は、約 250頭(親の個体数)と非常に少なく、保護しなければ知らないうちに絶滅してし まう恐れがある種であると言えましょう。

 同時に、これはクビワコウモリの生態をはじめとした種々の調査研究が可能な場 所でもあるのです。前田(1994)の分布図(「日本の哺乳類(東海大学出版会)」) にもあるように、クビワコウモリは本州の中部と関東でしかその分布が確認されて いません(前田・川道1991、前田ら1993、三笠1993、前田・山本1995)。これは他 の場所で調査が行われていないために確認されていないのではなく、おそらく分布 していないためと考えられます。飛行により広範囲の移動が可能と考えられるコウ モリが、このような特異的な分布をしている事は珍しく、生態的または地史的、遺 伝的等の原因によるものと考えられるますが、そのほとんどがいまだ不明です。


2.クビワコウモリ発見と保護の経過

 1989年に奈良教育大学自然環境教育センター長の前田喜四雄教授により、まさに 10年ぶりに中部山岳国立公園・乗鞍高原でクビワコウモリが発見されました。さら にこの集団が繁殖集団である事が分かりました。この繁殖集団は、日本で唯一の可 能性が高い大変貴重なものです。

 翌年1990年より、山本がこの繁殖個体群の生態調査を開始しました。この生態調 査は現在まで8年間継続して行われています。この間に生息場所である宿泊施設の 改修工事が行われることになり保護活動が始まりました。この間には、コウモリの 会や松本ナチュラリストクラブ、信州大学自然科学研究会をはじめとする各方面の 方々の人的な協力を得て行われてきました。

 1995年には、安曇村の有馬佳明村長を顧問に迎えた「クビワコウモリを守る会」 も設立されました。

また調査は、1993年から1995年の3年間に世界自然保護基金日本委員会の補助金 を受け(事業番号9304)、1994年には文部省の平成6年度科学研究費補助金(課題 番号06918016)の交付を受けて行いました。
 繁殖環境保護用の小屋(愛称:「乗鞍高原バットハウス」)の建設は、アムウエ イ・ネイチャーセンター第7回環境基金助成金を用いて行いました。


3.バットハウス建設と保護調査活動の経過

1989年  8月 奈良教育大学の前田喜四雄先生により長野県乗鞍高原にてクビワ
              コウモリ発見される。

1990年    5月  山本がクビワコウモリの生態調査を開始する(〜現在に至る)。

1991年    ・  クビワコウモリの生息場所の宿泊施設の改修工事の話が持ち上
                がる。
          ・  前田喜四雄先生と山本が長野県安曇村にクビワコウモリの保護
                を申し込む。

1992年    4月 クビワコウモリの生息場所の宿泊施設の改修工事が行われる。
          5月  安曇村によるクビワコウモリ用の巣箱の設置が行われる(利用
               せず)。

1993年    4月 クビワコウモリの生息場所の宿泊施設の改修工事が行われる。
          5月  安曇村によるクビワコウモリ用の巣箱の設置が行われる(利用
               せず)。
           ・  世界自然保護基金日本委員会(WWFJ)の補助金を受ける。
           ・ コウモリの会の協力を得た生態調査が始まる(〜現在に至る)。

1994年    4月 クビワコウモリの生息場所の宿泊施設の改修工事が行われる。
          5月  世界自然保護基金日本委員会(WWFJ)の補助金を受ける。
           ・ 松本ナチュラリストクラブ、信州大学自然科学研究会の協力を
               得た生態調査が始まる(〜現在に至る)。
          6月  コウモリ観察会を行う。
          8月 コウモリ観察会を行う。

1995年    4月 クビワコウモリの生息場所の宿泊施設の改修工事が行われる。
          5月  世界自然保護基金日本委員会(WWFJ)の補助金を受ける。
          6月  コウモリ観察会を行う。
          8月 日本初の「コウモリフェスティバル」開催
               コウモリ観察会を行う。
          アムウエイ・ネイチャーセンター第7回環境基金助成金の交付が決まる。
          10月 「クビワコウモリを守る会」設立
          12月  「NEWS LETTER No.1」発行

1996年    5月  「NEWS LETTER No.2」発行
          6月22日  クビワコウモリを守る会総会
          6月22日  第1回コウモリ観察会
          7月13日  第2回コウモリ観察会
         7月29日〜8月 4日  コウモリフォーラム 乗鞍高原  
          9月18日 「NEWS LETTER No.3」発行

1997年   4月 1日 「NEWS LETTER No.4」発行
     7月19日  NHKTV「ふるさとの自然発見 幻のクビワコウモリを見た
           〜長野県 乗鞍高原〜」放映

4.バットハウスへのコウモリ誘致の活動と利用の確認

バットハウスから飛び出すコウモリ
1996年
     10月27日 「乗鞍高原バットハウス」完成式
1997年
      4月26・27日「乗鞍高原バットハウス」臭いつけ作業
      5月28日  コウモリ(種不明)がバットハウス付近から飛ぶのを確認
      6月〜7月  標識個体のバットハウスでの放獣
      7月20日  クビワコウモリ数頭による「乗鞍高原バットハウス」の
           利用が確認される。
           25日  クビワコウモリ20数頭による「乗鞍高原バットハウス」の
           利用が確認される。

 1996年に新築したばかりのバットハウスは現在でも木の香りがするほどで、この 香りが抜けるまでの数年間は利用しないかもしれないとも予想されていました。 1992年、1993年におこなった巣箱設置の実験では以前のねぐら場所の板を使った 巣箱の上までやってきていた例があったことから、予め採集しておいたコウモリ の糞を水にとかしてバットハウス各所に塗り込むことで匂いをつければ早い時期 に誘致できる可能性がありました。実際には作業していた私達人間の鼻では感じ ない程度の薄いものでしたが、匂いづけによる効果が高かったのではないかと考え、 冬になってコウモリがいなくなってから検証したいと考えています。


 クビワコウモリの生態調査として、寿命や乗鞍高原への毎年の回帰といったこと を明らかにしていくため、捕獲して個体識別を継続して行っています。この、捕獲 したクビワコウモリの測定や標識をつけた後に放す場所として、バットハウスの位 置や内部構造を覚えてもらうことにならないかと考えて今年度はバットハウスの中 を選びました。コウモリの出入口はたくさん用意してあるので、中に閉じこめて死 んでしまう危険性は全然なく、長く滞在した個体で2時間程度いたあと、バットハウ ス内から姿を消しました。コウモリの記憶力や学習能力は高いと言われており、 十分に内部を飛んだり歩き回った後で出ていったことが再び訪れるきっかけになった 可能性も考えられます。


5.今後の研究と保護の方針

 日本で2例目のバットハウスに初年度から自主的に入ったというのは驚くべきスピ ードで、快挙であると言えます。本年はまずデイルースト(昼間の休息場所)として の利用を確認できたので、来シーズン以降はこの場所が出産・子育てで使われる本当 の意味での繁殖場所として利用され続けていけるように環境整備の調査研究をして いく予定です。
 また、「乗鞍高原バットハウス」はクビワコウモリ以外のコウモリにも利用される 可能性を考慮して、内部や表面に色々な構造を設計してあ ります。実際に5月28日、 7月20日には種が不明のコウモリも観察されており、自然林の減少によって生息環境 が失われ、実態が明らかにならないまま減少していると言われている数種の樹洞棲 コウモリの生息環境を危急避難させる代償措置の研究をおこなうことも可能であると 思われます。このようなクビワコウモリ以外のコウモリによる利用の研究は、森林と コウモリの減少が言われる国内の他地域への適用と共に、先進地の欧米に比較して 進んでいないアジア地域での先鞭を付けるものとして期待しています。

 このバットハウスへのコウモリ誘致成功の詳細は、1997年8月2日に長野県乗鞍自然保護 センターで行われるクビワコウモリを守る会総会で報告したのに引き続き、 日本初のバットハウス 20周年を記念して1997年8月9・10日に青森県で開かれた日本のコウモリファンの全国 大会(1997コウモリフェスティバルin天間林村)で報告しました。


6.謝辞

 これまで調査保護活動に協力ご指導いただきました、安曇荘前管理人青柳淳夫妻、 環境庁の中部地区国立公園の歴代の担当官石田文子氏・曽宮和夫氏・鈴木渉氏、 長野県乗鞍自然保護センター館長中原冨貴登氏・岩原恵美子氏、安曇村の有馬佳明 村長、観光商工課長百瀬昌次郎氏の方々、地元での協力を頂きました方々、奈良教 育大学の前田喜四雄教授、金沢大学理学部名誉教授の大串龍一先生、金沢大学理学 部の中村浩二教授、コウモリの会・松本ナチュラリストクラブ・信州大学自然科学 研究会の皆様方には、心より感謝の意を表します。


 以上の文章は、1997年7月の「【緊急ニュース】バットハウス成功のお知らせ」より 作成しました。

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