Bat design 東洋蝙蝠研究所

コウモリデザインと民俗


福を呼ぶコウモリ
台湾故宮博物院の窓の一つ

 中国では昔からコウモリは縁起の良いものとして扱われてきました。 台湾にある故宮博物院では、上のような窓の飾りもあるほどで、動物のデザ インを持つ収蔵物の特別展では次のような解説がしてありました。
「Bats(fu) are a homonym for Chinese word meaning "good fortune".」
 これは次のような意味です。「蝙蝠(こうもり)の「蝠」という字は 中国語の「良い運命」と同じ語音を持っている。」 すなわち幸福の「福」と同じ音で呼ぶのです。このためこうもりは、中国では 福を呼ぶ動物とされてきたのです。
 中国の重要な文化財を見て歴史をたどることができるこの故宮博物院は、 じっくり見ると本当に時間がかかりますが、中でも清の恭親王(1833-1898) の茶室は見事なもので、その中にも多数のコウモリデザインが登場します。

 ちなみに、私が見たことのある最古のバットウォッチングの記録は、やは り故宮博物院所蔵の美術品で1736-1765に作られた壷の絵柄に数人の人がコ ウモリの飛翔を見て笑っているというものです。さすがは中国です。
 アメリカにはBCI(Bat Conservation International)というコウモリ 類の保護団体があるのですが、ここのシンボルマークも中国のコウモリデザ インを使っています。コウモリの研究や保護について進んでいるアメリカの 団体すら中国のコウモリを愛してきた歴史にはシャッポを脱いでいるようで すね。リンク集から行けますので、BCIのトップページのマークを是非ご 確認して下さい。

台湾みやげとして、こんな刺繍のある小銭入れを買ってきました。


中国提灯の縁飾り

 中国製の小物には、あちこちにコウモリのデザインが使われています。これは体そのものが 「福」という字になっています。本場の装飾を取り入れた本格的な中華料理屋さんには、探すと かならずコウモリを見つけることができるでしょう。トライしてみませんか。

5つのコウモリ
壁掛け

 これは工芸品センターで購入したおみやげ品なのですが、とりわけ数字の5と いう発音も良い意味を持つ言葉と同じだそうで、5つのコウモリはとても縁起が 良いのだそうです。

5Bats Tシャツ

 これもみやげ物のTシャツです。なかなかイカしたデザインだと思うのですが、 よく見るとここにいるコウモリも5頭です。クリックすると絵柄をズームアップ した画像が見られます。

赤いコウモリ
 今の壁掛けやTシャツで見た中国のコウモリデザイン共通の配色にお気づき になった方はいらっしゃるでしょうか。それらはすべて赤い色をしています。 中国では赤い色がおめでたいとされているそうで、幸福を示すコウモリにしば しば使われるのも納得がいきます。
 コウモリと言えば普通は黒い動物と誰もが思います。赤いコウモリなどいるの でしょうか。実はいるのです。ある種のコウモリはとてもエキゾチックな赤い色 をしています。また、幼獣が赤い種類もいます。「今は減ってしまった赤い コウモリは、昔は中国にはいっぱいいたのではないだろうか?」と言う人も います。また、中国で赤色の持つ意味が関係しているのではないかという説も あります。私は赤は哺乳類の血の色、すなわち生命の色を示しているのでは ないかと考えています。その赤いコウモリ、今まで私が見たものでは1222-1307 に生きていた中国の画家が残した絵の中に登場するものが最も古いものです。 その絵のモチーフは鍾馗、端午の節句に立てる幟に描かれている「しょうき様」 です。鍾馗に逆らえない幽霊は彼の引っ越しを手伝うのですが、その途上、鍾馗 の妹をなぐさめるために幽霊の1人が赤いコウモリをつまんで差し出していると いうシーンがあるのです。

湯飲み


コウモリと血
 赤は血の色と言うと、コウモリの誤解ともからまった西洋の吸血鬼の話を思い浮かべてしまいますね。 しかし、日本では逆の言い伝えがあるのです。松本市の隣、四賀村のある地区 では「婦人血の道の薬にしたという話がある(四賀村誌)」という記録が あったり、長野市近郊の上水内郡では「黒焼きにして飲むと血の薬、増血 に役立つ(上水内郡誌自然編)」といったように、長野県では民間伝承薬 としてのコウモリの姿を見ることができます。つまり、コウモリが血を吸 うのではなく、人がコウモリを血のために摂っていた歴史を持っていたわ けですね。

日本の福

 冒頭に中国では「蝙蝠の蝠は幸福の福」と述べましたが、日本でもこの 伝統は歴史があるところには伝わっています。創業以来三百七十有余年と いう長い歴史を持つ和菓子店に、そのマークとしてコウモリのデザインを 用いているところがあります。

こうもりこっこ
 山梨県のわらべうたに、「こうもりこっこえんしょうこ」という歌い出し で始まるものがあるそうです。(岩波文庫『わらべうた』)
 また、『日本わらべ歌全集13 長野岐阜のわらべ歌』に「コウモリ来い」 という、岐阜県山県郡高富町東深瀬で採集されたものが載っていました。地 図で見たら、岐阜市のすぐ北隣だそうです。
 今のところ長野県にはコウモリ歌はみつけていません。
 「コウモリ来い」

     ラーソ、ソーソ、ラーーソ、ミーミ、ミーソ、ラー
     こーう も り こ  い じょり と り にー

近年の文芸作品に見られるコウモリ
 これまではやや歴史的なものを見てきましたが、現代の文化の中でコウモリが どのように扱われているかにも注目したいと思います。特に、コウモリ学者や バットウォッチャーの視点でない文芸作品の中に、現代における市民的視点から のコウモリの位置づけを知ることができるのではないかと考えています。
 そんなわけで、特に現代日本のコウモリ作品の情報がありましたら教えて いただきたく思います。

  • こうもりとおばあさん(菊沖薫著)
     1995年秋募集の毎日新聞社主催第13回<<小さな童話>>大賞入選作品です。 ギリシャの山あいでもコウモリは村の暮らしの中で人々に気にされることも なく住んでいるそうです。ふとしたきっかけからコウモリの存在に気づいた ことでこの作品となったそうです。

  • コウモリ(大島弓子著)
     月刊MOE(白泉社)1998年1月号 に掲載の書き下ろし絵本です。コンビニの深夜バイトをしている若い女性がひょんなことからコウモリと暮らし、分かれる までの短期間の生活を描いたものです。


    現代日本のコウモリデザイン
  • 柏崎市のシンボルマーク
    シンボルマーク決定では、 新潟県柏崎市が市の封筒などで使うマークが日本海とコウモリを表したものになったと報じています。

  • 那覇空港アクセス道路の街路灯

    空港から市内へ向かう道路の街路灯はオオコウモリをデザインしたものです。

  • 西表島クーラ橋のシンボル

    県道白浜南風見田線の橋にはそれぞれ島の自然をかたどったシンボルがあり、この橋にはオオコウモリをデザインしたものが取り付けられています。

    世界のコウモリデザイン
  • コウモリだこ
     八田村立八田村ふるさと文化伝承館 (山梨県)には、 スリランカのコウモリ凧を展示しています。


     中国にも鳥の形の凧にコウモリが描かれているものがあります。


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