大銀醸 「星の寒梅」
 GALAXY EXPRESS 999
 
 
     
「BASF子」
   
 
 
 
また、いつものラクガキをひとつ。

そして、少しだけ昔話をしよう。


あるところに,とても優れた才能を持った娘達がおりました。

その娘達は,どんな人の声も,どんな生き物の鳴声も,風の音すら正確に再現する
ことができる記録媒体でした。

時の流れとともに消え去っていく素敵な調べを,彼女たちは永遠に,何度でも歌い
続けることができました。

その評判は,たちまち世の中に知れ渡り,多くの者たちが世界中でその歌声を披露
し,人々を魅了しました。

休日の窓辺で,優しく歌うこともあれば,多くの人が集る講堂でその美声を響かせ
ることもあり,時には旅の道すがら,列車の席で静かに歌ってくれることだってあ
りました。

いくつもの歌を覚え,決して忘れない。
そして,いつだって誰かのために真摯に歌い続けるその姿は,ただただ素敵で美し
く,世界は鮮やかに彩られていくのでした。


しかし,時代は移り変わっていきます。

娘達の助けが無くても,素敵な調べをより正確に再現する魔法が生み出されました。

その魔法はとても優秀で,指先ひとつで起動することが可能であり,しかも彼女達
のような記録媒体を全く必要としませんでした。

そして,彼女達のように,記憶がある一定時間に限定されることもなく,ほぼ無限
に音声を奏で続けることができたのでした。

そうなると,世の中はしだいに彼女達を必要としなくなってきました。

彼女達の姿は,街の中から姿を消していきました。

今では,ほとんど彼女達と出会うことすら無くなりました。


淋しいか?と問われれば,

淋しいさ,と答えるしかない。しかし…


彼女たちは,その役目をしっかりと全うしたのだ。姿あるものは,その姿ある限り
永遠ではいられない。

その時代の最先端を生き,その時代の人たちの生活に溶け込み一体化し,その時代
の時間に定着した。定着したからこそ,次の時代では他のものにその席を譲った。

失われゆく時間に,輝きを残して,今なお彼女達の存在は決して色あせたりしない。

人間もその存在は永遠ではありえない。

日々,失われていく時間を生きている。

大切なことは,その時間の中で,どれだけ輝くことができるか,ということなので
はないだろうか?


彼女達の静かな歌声を,ときどき思い返してみては,そんなことを考える。

永く生きることは尊いことではあるけれど,輝いて生きることも同じくらい大切な
ことなのだと思う。

 
  
  

    
    

 
 
彼女達と出会えたことを

幸せか?と問われれば,

無上の幸せだ,と答えるだろう。


そういう存在だったのだと,確かに,思うのです。

  
  


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