「あぁ…素晴らしきデッキの世界」
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■あぁ…素晴らしきデッキの世界。
さて、今日は僕の、どうしても手に入れたくて
手に入れられることがなかった
でも、どうしようもなく煌びやか(きらびやか)な世界の話をしようと思う。
そうカセットデッキの話だ。
もちろん嘆いているわけじゃない。
むしろ、全くその逆で
掴むことが出来なかったからこそ、今でもその夢は鮮烈で、いとおしい。
それはまるで
銀河鉄道999のラストシーンで、メーテルの面影を追う
鉄郎のような清清しさで
いまでも、胸を熱くする。
さぁ。はじめようか
カセットテープの詳しい説明は、ここでは割愛するけれども
僕にとっては、魔法のアイテムでした。
たった一瞬で消えゆく『音』を、いつでも何度でも再現してくれる
摩訶不思議な記録デバイスの存在は、僕の心にクサビのように打ち込まれ
そして今でも、当時の興奮を呼び覚ましてくれるのです。
そのカセットテープを語る上で、どうしても欠かせないのが
その能力を極限まで高めてくれる、カセットデッキなのです。
僕がはじめて目にしたカセットデッキというものは
それはそれは、重厚壮大で
存在感に満ちたものでした。
手のひらにすっぽり収まるようなテープを再生するために、ここまで大きな機械が
必要だなんて…なんか、おかしいですよね。
でも
だからこそ
期待もぐっと高まるのです。きっと、すごいことが、その内部で処理されているに
違いない!(そして、まさにその通りなのですが)
そんなカセットデッキの魅力をいくつか紹介してみようと思うのです。
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■テープの弱点を克服したオートリバース
カセットテープにはA面,B面というものがありました。
つまりテープの進行方向に対して、2つのトラック(順方向と逆方向の記録列)があり
それぞれに右側録音と左側録音の2列が備わっていました。
これらの記録信号を全て再生するためには、通常のデッキではA面の再生が終了したら
一度テープを手で取り出して
180度ひっくり返して
再度、デッキにテープを挿入する必要がありました。
それを、デッキが自分でやってしまう。
それがオートリバースなのです。
その実現手段は実に単純。デッキ側のテープの信号読取部(再生ヘッド)を180度
回転させるというもの。
ただし、カセットテープの幅はわずか4mm。
そこにA面の右側信号、A面の左側信号、B面の右側信号、B面の左側信号、が記録され
ているため、その記録幅は当然1mm以下。
テープ自体の蛇行も考慮すると、正確に信号を読み取るのは至難の業なのです。
さらに少しでもヘッドがテープに対して傾いていたら、右と左の信号が同期しなくなる
ため、ヘッドの取り付け精度にはたいへんな精密さが要求されるのです。
そんな部品を180度回転させる。
テープとの角度(アジマス)調整はデッキにとって命ともいえます。
それをクリアして見せたのが、AKAIのデッキでした。
わずか0.3秒でテープを反転させる。
驚愕のメカニズム。
あまりにも見事なメカに魅了されました。
このオートリバースは各社が独自方式を採用していて、今振り返ってもワクワクします。
たとえばデッキメーカの王者である「Nakamichi」はヘッドの回転を良しとせず
ヘッドは固定したまま、なんとテープのほうを自動で180度回転させる奇行(機構)を
取り入れたりしてました。
さらに、アジマス調整のために、右信号と左信号をさらに2分割して、同じ右信号を2つ
のヘッドで読み込んで、その位相差を判別して、ヘッドの角度を自動調整する
オートアジマス調整機構を搭載させたり
もう…マニアックすぎて、ぞくぞくしちゃいます。
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■革命的だったLEDメーター
当時のメータは針が実際に動くものが多かったのですが、LEDのメータが出現してから
一気に、デッキのデザインは変貌をとげました。
メータは基本横長になり、それに伴い、操作ボタンの配列も横長になったのでした。
当時のSONYは、このデザインが多かったですね。
そして、それに引き摺られるかたちで各社このスタイルになだれ込んでいったのでした。
ていうか
LEDのメーターは、衝撃的に近未来的でした!
これでYMOを聴くというのが、当時の僕のお気に入りでしたね。
あぁ
今ぼくは
未来に生きている
そういった昂揚感に包まれていたのでした。
ピコピコ動くメータが、僕のシナプスのキラメキであり
電子音で構成されたメロディーラインが、僕の鼓動だったのです。
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■究極のモータコントロール
カセットデッキの性能を最も左右するといってもよいのが、回転のなめらかさです。
ワウ・フラッターと、表現されていましたが、要するにどれだけ一定回転数で動かせ
るか?という指標です。
モーターというのは、その特性上、軸にかかる負荷によって回転数がばらつくのが
当時の常識であったので、テープの出来不出来で再生が安定するかしないかが決ま
っていました。もちろん、カセットデッキの駆動軸(キャプスタン)にフライホイ
ールをつけることで回転の安定性を保つという処置はされていましたが、真の意味
での安定化は、機構上難しかったのです。
とかなんとかしていたら
とんでもないモノが出てきました。
それがクオーツロック・ダイレクトドライブコントロール!
いままでのデッキが自動巻きの機械式時計だとすれば、これはまさにクオーツ時計。
もう、精度が文字通りケタ違いなのです。
当時VictorがDDシリーズをリリースしていましたが、このデッキはまさに
秀逸の一言に尽きます。
走行安定性を優先していたので、当然オートリバース機能は無し。
でも、だからこそ、信頼できたのでした。
なんというか…そこにはメーカのポリシーがあって
各社とも
「ウチはこれが正しいと信じる!」
みたいな息吹が感じられて、ユーザーに媚びない強さがデッキそのものからオーラ
のように感じられたのでした。
最近の風潮として、ユーザーのニーズに応えるのが正しい、というのがあるけど
これは、モノによっては当てはまらないと思いますね。
もちろん、自分勝手で中途半端な趣味的製品はNGですけど
とことんまで突き詰めた趣味的製品って、そこに異常な情熱と、精緻なロジックが
あるならば、「あり」だと思いますね。
そういった視点から考えると、そもそもカセットデッキそのものが
常軌を逸した製品ともいえますね。
たかだか1000円の録音デバイスを再生するために、10万20万のお金をかけ
てるわけですから。
でも、そのアンバランスさが、とてつもない
魅力の源泉になっていることは、たしかだと、僕は思うのです。
当時手に入れられなかった夢。だからこそ、僕は夢の中を彷徨っていられる。
それは大人になった今でも、変わらず、夢の世界へいざなう道しるべになっている
のです。
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