大銀醸 「星の寒梅」
 GALAXY EXPRESS 999

 
 
     
「だいじょぶかなぁ?」
 

 


 
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さて、いつもながらの意味不明なイラストを描いてみました。

このページの基本スタンスは、

極力、誰かが書くようなコトは書かない

というところにあるので、どうしても不可解なところに落ち着いていくのです。

でも、誰かが書くようなことって、誰かが書いてくれてるから

今さら僕が書かなくてもねぇ…誰も困らないし。

さ。言い訳はこのくらいにして、久々の更新だー!


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■架空小説〜明日の星での面接試験〜


(補足)


『明日の星』とは

銀河鉄道999に実在する逸話の一つ。地球に酷似した星であり人々は希望に満ちて
いる。そんな星で鉄郎とメーテルは昼寝の途中、謎の少年にパスを奪われてしまう。
さらに(パスと一緒に宿泊ホテルのクーポンも奪われたらしく)ボロアパートに宿泊
することになるのだが、その夜あろうことか寝ている間に身ぐるみはがされてしまう

てなわけで、翌日から鉄郎はラーメン屋でバイトをしてお金を稼ぐことになる。

さて、その間メーテルは一体何をしていたのであろうか?というお話。


(補足おわり)


-------さて本編開始!-------


俺の会社は創業30年。やっとのことで、ここまで来た。
ようやく一部の大手から、宇宙船の設計を委託してもらえるようになったボロ設計
事務所だ。

…で、今日はうちの会社に入社したい若者の面接試験だ。
しっかし、どいつもこいつも使いものにならん!
図面も読めねぇ、強度計算もあやふやで…とてもじゃないが採用できねぇ。

全員不採用だ!不採用!!

「あの…社長。」
事務のおばちゃん(名前:シズちゃん)がおずおずと声をかけてきた。

「うるさい!」
と、一括して古い木の椅子に俺はどっかりと座り込んだ。

「あの…まだもう一名、面接の人いますけど」

「んあ、そうか、じゃ、通して」
どうせ使いものになるまい…などとつぶやきながら部屋に入ってきた彼女の姿を見て
俺は、一瞬絶句してしまった。そしてつぶやいた

「大美人だ…」

(間)…は!…いかんいかん。

俺は気を取り直してその大美人に椅子をすすめた。

高価な黒い服を着た彼女は完璧な仕草で安物の椅子に腰掛けた。しかし彼女が腰掛け
ただけで何故だかその椅子がとても高貴なものに見えてくるから不思議だ。
だが、姿かたちに惑わされてはいけない。いっちょうガツンとやってやるか!

「あー、なんだ。今うちは秘書は募集していないんだがね。」

「存じ上げております。設計者を求めていらっしゃるのですよね。表の貼り紙にあり
 ましたわ。」

「悪いがお嬢ちゃん、どこかで設計の仕事をしたことはあるのかい?下請けでもかま
 わねぇ。実際手を動かして機械図面を書いたことはあるかい?」

「いえ、機会がなくて…」

「はーはっは。それじゃお話になんねぇ。とっとと帰りな。それにな、アンタほどの
 大美人なら他にいくらでも働き口はあるだろうよ。」

「でも…」

「デモもへちまもねぇ経験のない奴の採用は無しだ!…しかし、どうしてうちの面接
 を受けようなんて酔狂なことを思いついたんだ?冷やかしか?」

「いえ、とんでもありません。事務所のたたずまいから、ここでは素晴らしい船を設
 計されていると確信したものですから。」

「お世辞を言っても俺の考えは何も変わらないぜ。」

「しかし、これは私の本当の気持ちです。こういっては何ですが、この事務所は老朽
 化しています。けれど、適切な補修がされているため、あと30年は使えるはずで
 す。ここまで完璧な事務所を構えていらっしゃるかたならば、さぞかし素晴らしい
 仕事をなさっているはずなのです。」

「うあ…お、お嬢ちゃん。いや、その…」

「メーテルと申します」

「あ、メーテルちゃんはわかるのかい?」

「はい、もちろんです。気持ちのこもった事務所です」

「はぁーうれしいねぇ。あ、そうだ。シズちゃーん。この人にお茶!」

お茶がくるまで、俺は最新式の宇宙船の図面をメーテルと名乗る女性に見せていた。

「こいつぁ、まだ誰にも見せていないんだが、どう思う?」

メーテルは図面を覗き込んで、しばし考え込んでいた。流れるような金髪が図面の上
で所在なさげにしていた。

「そうですね。スタビライザの角度をあと0.03度ゆるくすれば安定度が3割程度
 増えるように思います。ただし旋回性能が若干落ちてしまいますが。」

「お。そうきたか。そのとおりだ。だが巡航速度の要求スペックが厳しくてな。スタ
 ビライザをいじると最高速度が8パーセク落ちちまうんだ。」

「では、波動エンジンの出力を3%ほど増すというのは?」

「いや、今で限界だ。スペースが足りねェ。せめてこのフライホイールさえなんとか
 なればいいんだが」

「じゃぁフライホイールをなくしましょう!」

「てめぇはバカか!…いや、すまん。だがよぅ非常制動時の安定性はどうすんだよ」

「波動エンジン自体を短絡させるんです。」

「駆動系から切り離さずに、直結したまま自己消費エネルギをトルクコントローラに
 送り込むってわけか?」

「そのとおりですわ。」

「いや、わかる。言ってることはわかるんだが…。そもそもトルコンの軸が持つか?
 それと動力ケーブルの敷設経路は確保できるのかよ」

「さぁ、社長さんならできるはずですわ」

「簡単に言ってくれるぜ」

俺は笑っていた。すごい、こいつぁすげー奴だ!

涼しい目をして、とんでもないことを言いやがる。

でも、間違ってはいない。

俺は叫んでいた!

「あー!くっそー。今までアンタほどうちに欲しいと思った奴はいないぜ!…けど」

「けど?」

「無理なんだろ」

「…あの」

メーテルは少し困った顔をしていた。

「みなまで言うな。あんたはいま金に困っている。だから仕事が欲しい。そうだな」

「…はい」

「でも、あんたはずっとここにはいない。いられないんだ」

「…すみませ」

「あやまる必要なんてない!」

「…でも、どうしてそれを?」

「馬鹿にしちゃいけない。俺だっていままでいろんな人間を見てきた。あんたほど
 設計センスをもっている奴は見たことがない。だがしかしだ」

メーテルは、じっと俺を見つめている。俺は言葉を続けた

「だがしかし、あんたの居場所はここじゃない。それくらい俺にだってわかる。
 きっと、大切な人のために、あんたは何だってやってのける。そういう生き方が
 あんたの本当なんだ。だから、ひとつところに縛られるわけにはいかないんだ」

言い終わって、俺は赤面した。

シズちゃんがようやくお茶を持ってきた。

俺はそれをひとくちすすって一息ついた。にしても、お茶を入れるのにどんだけ
かかってるんだ!

「おい、シズちゃん。お茶をいれるのにどんだけかかってるんだ!」

「でもー、社長が面接でお茶をだすなんて初めてじゃないですか。お茶っぱ切らし
 てたんですよー。走って買ってきたんですからねー」

ったく。

振り返ってみると、メーテルは出されたお茶をいとおしそうに手にとっていた。

つくづく、よくわからねぇ女性だ。

だが、俺がもっと若くて、もっともっとたくさんの夢を持っていたら、きっと彼女
は別の顔をみせてくれるような、そんな気がした。

「社長さんの心は、いまでも夢に満ちているじゃありませんか?」
メーテルが微笑んで、そう呟いたとき、俺は心底驚いた。

「ふ…。とてもかなわないな。」

窓から差し込む陽射しは西に傾いていた。

わかれるのが惜しかった。

でも、俺は男だ。

メーテルがお茶を飲み終わるのを待って、切り出した。

「あー、なんだ。そのぅ。あんたの宇宙船の設計はずいぶん参考になったよ。」

「そんな、しろうとの思い付きですわ」

「いや、思いつきなんかじゃあそこまでは無理だ。俺はあんたに感謝している。」

メーテルは、はにかんで首を横に振った。

「でだ、感謝の気持ちを金で示すっていうのは無粋だが、これを受け取ってくれ」

メーテルは、手を出そうとしない。

「気にするな、うちの会社の1日分の給料だ。それ以上でもそれ以下でもない」

すると、メーテルはぱっと微笑んだ。
「ありがとうございます。本当は、今日の食べ物も買えないくらい困っていたん
 です。」

「ああ。あんたは立派な仕事をした。その対価だ。胸を張って受け取ればいい」

おれは給料袋を手渡すと、事務所の扉を開けた。

「さあ、あんたの大切な人のところに帰りな。
 あ、それとな、あんたのアイデアは銀河連邦の特許に申請しておくから。上手
 く受理されたら、いつか使用料を受け取りにくるといい。」

メーテルは会釈をすると、再度給料のお礼を言って事務所をあとにした。

扉が閉まる一瞬の、西日に染まる彼女の姿を、俺は一生忘れないだろう。


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〜後日譚〜

銀河連邦の特許に関する不思議がいくつかあるが、今でも語り継がれている最も
有名な話はこれだろう。

銀河を航行する宇宙船のスタビライザとトルクコントロールに関する基本特許が
あるが、これは今やどの教科書にも載っているので誰もが周知の技術ではある。

この発明は宇宙船の巡航速度と航行安定性の二律背反をドラスティックに解決す
る画期的なアイデアであったため、あらゆる宇宙船製造者が使用を余儀なくされ
ることとなった。

当然のことながら特許の使用料は莫大なものとなったが、申請者である設計事務
所の社長は受け取りを拒否。発明者にこそその権利があると主張し、一銭たりと
も受け取らず現在にいたっている。

使用料の総額は、小さな星であれば国家予算の100年をゆうに上回る金額であ
るが、はたして発明者は名乗出るのであろうか?

そしてその肝心の発明者の名前であるが、それは申請者の胸のうちにあるのみで
あると主張しており、未だ明らかになっていないのである。

ただわかっているのは、蜂蜜色の髪を持つ大美人という容姿のみである。はたし
て彼女は実在するのであろうか?

いずれにしても、現在の宇宙航行技術はその大美人の頭脳によって生み出された
ということは揺らぎようもない事実なのである。









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