大銀醸 「星の寒梅」
 GALAXY EXPRESS 999
 
 
     
「夕陽に満ちたベランダのある場所」
 

 
 
 
 


はうー!イラストを描いているヒマが無い。

ってことで、今回は秘蔵の(?)チラシ特集の第一弾。

銀河鉄道999フェスティバル in 銀河高原(もう数年前のモノ)


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さて、突然だが学生の頃の体験談。

ある数ヶ月間、長い長い夢を見たことがある。

同じ夢を何度も見るという不思議体験だった。


もちろん毎日ではないが、ほぼ毎日同じ夢だった。

それどころか、意識さえすればその夢を、ある程度自在にみることができたのだ。


さぁ、今日はまたあの夢の街に行ってみよう。


そう考えながら床につくと、かなりの確率でその世界に迷い込むことができた。

そこには、夕焼けとマンションとホテルと雪山があった。



初めは夕焼けに照らされたマンションだった。

その建物は懐かしく、僕を迎え入れてくれた。

オレンジ色に染められた無機質なドアが並ぶ廊下で、その温かさにほっとした。

どの扉も僕を優しく迎え入れてくれる。そんな気がした。


扉の向こうには

懐かしい友の姿や、幼なじみや、初恋の人が

見ることはできないけれども、確かに感じることができた。


そしてほとんどの場合

ドアノブに手をかけても、そこから先に行くことはできず

静かに後ずさりすることになるのだった。



街の風景は揺らぎながらも、ほぼ一定の姿を見せていたので、僕は散策をはじめた。

マンションは坂の途中にあり、坂を下るとそこには古びたホテルがそびえていた。

ホテルには1台のエレベーターがあり

そして、それに乗ると、ほぼ間違いなく

押したボタンと違う階に連れて行かれることになる。


4階を押せば、2階で止まり

1階に下りようとすると必ず

地下まで降りてしまう。


各フロアには特徴があり、カジノや、披露宴会場や、広大なゲームセンターに
なっていた。

そして記憶にある限り48階から52階まではぶち抜きのフロアで、そこには
室内プールが広がっており、いつでも多くの宿泊客がゆったりとくつろいでいる
のだった。



ホテルからしばらく歩くと、商店街があり、交差点脇には建設中のビルがある。

そこに忍び込むと、最上階近くのフロアでは多くの労働者に混じって

一人の彫刻家が一心不乱に何かの作品を仕上げていた。

しかし、彼に話し掛けようとすると必ず

ヘルメットをかぶっていないという理由で追い出されてしまうのだった。



この街の地図を書くことに決めてから、さらに数週間

僕はこの街に通い続けることになる。

歩いてゆこうどこまでも。目覚めるそのときまで。



それから僕は様々な発見をする。

やたらと長い渡り廊下のある温泉宿とか

7階が食料品売り場のデパートとか

坂の上の雪山と、そこにぽつんとある教会とか。

教会には、僕の高校の友人が無線技師になって住み着いていた。



そんな素敵な街の地図が出来上がる頃に、僕はだんだんその夢をみることが
難しくなってきた。

僕の歩き回れる場所も、一番最初の夕陽に照らされたマンションの周りだけ
になってきた。


それでも、温かいマンションの扉たちの

そのひとつに、僕はついに入ることができた。


そこには確かに誰かがいて、僕を優しく迎え入れてくれたのだけれど

それが誰なのか、どうしても思い出せない。

ただ、僕はその人とベランダに並んでたたずんで

その世界の圧倒的なまでの夕陽をじっと眺めていた、それだけを覚えている。



それが僕の最後の記憶だ。



友人はまだ雪山の教会で無線を打ちつづけているのだろうか。

ホテルのエレベータは相変わらず修理されていないのだろうか。

そして彼女はまだベランダで夕陽を見続けているのだろうか。

   
   
   



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