大銀醸 「星の寒梅」
 GALAXY EXPRESS 999
 
 
     
「ある夏の想い出」
 

 


 
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さて、999と関係の薄いイラを描きつづけて久しいこの頃ですが
みなさんいかがお過ごしでしょうか?

ふと真夏の想い出について書きたくなったので
イラストを添えてお送りいたします


素敵な恋をしていますか?

夏がくると思い出します

初めて女の子と一緒に行った海


でも本当は海のことなんか

これっぽっちも覚えてないんだ。ただ・・・


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朝からずっとそわそわしていて、落ち着かなくて

「あーこんなことなら、もっと身体を鍛えておけばよかった」

などと言いつつ、1週間前から朝の腹筋と腕立てをしているけど

もちろん、効果は皆無に等しい

ため息ひとつ


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電車に揺られて1時間と少し

つり革につかまって見る車窓には、まだ海は映らない

車内には、仲の良い親子や、いかにもといったカップル

みんな楽しそうだ

こんな世界が僕は好きだ

車輪の刻む規則的な振動が、幸せな未来の訪れを予感させる


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改札を抜けると、強烈な日差し

意味も無く、太陽に目を向ける。直視することはできるけれど

それはほんの一瞬。大自然の脅威・そして恩恵

閉じた目蓋の裏に、まだ残る黒い影


それは命の源

そう実感する


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待ち合わせの場所には数名の影

片手を挙げて挨拶


あの子は来ているだろうか?

僕の視線はさまよいながらも惹きつけられる

まるで磁力線でも出ているようだ

彼女はビニール製のバッグを持って、じっと南を見ている

海の方角だ

でもまだここからは見えない。見えないのにね


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全員が揃ったのは約束の15分後

僕はそれまでずっと「人が生きる意味」について考えていた

もちろん答えなんて出やしない


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海岸の周りには自動車がいっぱい停まっていた

彼女の後姿に重なって、左右にゆれるビニールバッグ


まだ海は見えない


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やっと着替えられる場所に到着

あの子と会えるのは着替えたあとだ


どこかでサザエを焼いている香りがした

そうか、僕は海に来たんだ


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そして

僕が海岸に出ると、そこにはあたりまえの海が広がっていた

おおきな水溜り

生命の生まれた場所

よせてはかえす永遠の営み

巨大な時の流れに

飲み込まれそうになり、ふとめまいがする。


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そんな中

彼女の声が聞こえる

「ねぇ、ほら!」「海だよ 海!」

僕の耳には特別製のフィルターがあるのかもしれない


ひどく くっきりと

僕の耳にその声は届いた


ワンピースの水着と白い背中

そして砂浜に映る影

そのどれもが、僥倖だ


再び太陽を見上げてみる




あなたの与えてくれた命に感謝いたします

生命はちっぽけで

つたなく・はかないものだけれど

その喜びは永遠なのです




遠い夏の日の思い出が、再びよみがえる



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