大銀醸 「星の寒梅」
 GALAXY EXPRESS 999
 
 
     
「 寒梅ショートショート(その2)」
 

 


 
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 銀河学園物語999


                  −1−

突然の疾風で、校庭の砂は高く舞い上げられた。登校途中の男子は一斉に学生帽
を押さえ、女子は片手で髪を、もう一方の手に持つ鞄でスカートを押さえるのに
忙しい。
程無く突風はおさまったが、その中心あたりには一人の少年が立っていた。見た
ことのない男子だ。この学校の学生服を着ているが、まだ新しい。いったい誰な
のだろうか?
そんな期待と好奇のまなざしを背に受けつつ、少年は校舎の中に入っていった。


                  −2−

教室の入り口から先生が入ってきた。先ほどの少年を連れているためか、教室内
は騒がしい。
「はいはい、みなさん静かにしてくださーい。今日はみなさんに転校生を紹介し
 まーす。」

黒板の前に立たされた少年は、チョークで名前を書いている。男子にしては髪の
毛は長く、襟にかかっている。これはもしかして校則違反では?などと考えてい
るうちに名前が書き終えられ、少年は大きく済んだ瞳を生徒たちに向けていた。
先生に促され、少年は自己紹介をした。
「オレの名は『星野鉄郎』みんな、よろしくな。」

どちらかといえば女子のほうが好印象を持ったようである。
『背は高くないけど、ちょっとワイルド入ってるって感じ』
『マジ可愛いくない?』
『ほっぺたぷにぷにしてそうだしぃ。きゃは』
あちこちのひそひそ話で教室がざわめき始めた。

べしべしと教卓が叩かれた。
「はいそこ、うるさい」
特に指向性のないまま先生はお決まりのセリフを持ち出した。


                  −3−

女子生徒の熱いまなざしに囲まれつつ、授業は無事終了、放課後である。
帰宅しようとする鉄郎に女子がわらわらと群がった。
「ねぇねぇ鉄郎くんはどこから来たのぉ」
「ゆっこずるーい。鉄郎くんにわ〜あたしが先に声かけるつもりだったのにぃ」
「ごめんちゃい、でも鉄郎くんマジ異国風味かもしてなくない?」
「あ、するする。マジやばくない?」
「うん、ヤバいヤバい」
「って、ミチルが鉄郎くんの袖にぎってるぅ!超ずるくね?」
「ていうか、鉄郎くん。ミホと一緒にかえろ!」
「むきー!」
なにがなにやら、どこでどうなったのか、それがこれで、まぁどうしたものやら
いわゆる揉みくちゃにされつつ鉄郎は・・・
「あ、あのぅ・・・」
と声をあげた。

「キャー!鉄郎くんの声って」
「チョーかわいいぃぃぃ!」

「では、あの、僕帰りますんで」
黄色い声に囲まれながら呟く鉄郎の前に不穏な雰囲気の男が立ちふさがった。
すると、クモの子を散らすように女子は逃げ惑った。


                  −4−

西日を受けたそのシルエットは、いかにも、といった感じの不良であった。長い
マントを風になびかせ、無造作にのばされた長髪が風になびいている。
「この学園に来て、この俺様に挨拶もなしに帰るとはいい度胸だな」
いきなりのぶしつけな言葉に鉄郎はムッとして問い返した
「そういうお前はいったい誰だ?」
そんな鉄郎の問いに、不良の影から出てきた無数の取巻きの一人が馬鹿にしたよ
うに答えた。
「おうおうおう、テメェこの学園の大番長ハーロック様を知らないとは、たいし
 た度胸だな!ええ!」

啖呵を切ったチンピラ学生はしかし、その直後『ハーロック』といわれた大不良
にいきなりの右フックを食らうことになった。バシィィィ・・・というエコーの
かかった効果音を残しつつチンピラは上空に舞い上がり、空の彼方へと飛び去っ
ていき遥か遠くその姿が見えなくなるあたりでキラリーンとひとつの星になった。
「ったく、いつも『キャプテン』と呼べと言っているのに・・・」

すさまじいまでの強さを目の当たりにしながらも、鉄郎は一歩も引くことはなか
った。むしろ挑みかかるような視線でハーロックを見上げたのだった。
「そうか、あんたがこの学園の『番長』か?」
あえて『番長』と呼びかけたのは挑発である。

そんな鉄郎を見下ろしながら、ハーロックは言った。
「いい目だ。しかし、この俺様を挑発した罰は万死に値するぞ」
次の瞬間、鉄郎もまた星となったのであった。


                  −0−

さて話は、この星に到着する少し前にさかのぼる。

「えー、次の停車駅は『超青春の幻影』『超青春の幻影』ですハイ」
「チョーせいしゅんのげんえい?変な名前の星だなぁ」
「あ、鉄郎さん、この星では誰もが高校生なんです。」
「は?」
「ですから、星に生きている人は国家公務員以外は詰襟の制服かセーラー服を着
 なければならないんですねぇ。こわいですねぇ。」

学校に行ったことがない鉄郎にとっては意味不明である。
「じゃぁ、メーテルもセーラー服を着るってこと?」
「あ、いえいえ、メーテル様は特別ですから、好きにされていいんです。」
「そなの?」
「なんでも、メーテル様のお知り合いがこの星のPTA会長らしくて、この星で
 は自由に過ごしていいらしいんです。先に下車されてますからどこかで会える
 といいですね。」
「なんか納得いかないけど、まぁいいや。」
そんなこんなで、鉄郎は生まれて初めて学生服というものに袖を通したのだった。

「さぁ。無次元迷彩を使って校庭の真ん中に停車しますから、そこから入学開始
 です。ハイ」


                  −5−

一方、星になった鉄郎は保健室に運ばれていた。
「あつつつ、あいつめ本気で殴りやがって!」
そんな鉄郎の気配に気づいて保険の先生がゆっくりと振り返った。ぽわわーんと
いうソフトフォーカスの中、白衣が揺れた。バラの花でも散らしたいところでは
あるがそれでは装飾過剰であろうか?視界を上に向けると流れるような金髪が。

「気がついたのね鉄郎」
聞き覚えのあるその声は
「メーテル!」
鉄郎は思わず叫んでいた。
「意外に早く会えたわね」
「なんでこんなところにいるんだいメーテル!」
白衣の胸元はお約束のようにブラが見えるか見えないかのギリギリのラインであ
る。男心をくすぐる演出ではあるが、鉄郎はそんなことにはいっこうにおかまい
無しに話をすすめてしまうようである。はぁ、もったいない。

メーテルは、備え付けの丸椅子をガタッと言わせて立ち上がり、ベッドの鉄郎に
近づいてきた。西日の差し込む保健室で・・・二人きり。彼女は鉄郎のほっぺた
を両手で包み込むようにして、鉄郎の瞳の奥底を見つめた。

なんか鉄郎の鼓動が早まっている。というより心臓が踊っている。
「ちょちょちょっとメーテル!なにするむんどぁ・・」
鉄郎の言葉はメーテルの透き通るように白い指でその動きを奪われた。
どっくんどっくん、いま鉄郎の血圧はかなり高めである。メーテルの長いまつ毛
が心なしか潤んでいるようにみえる。
「鉄郎、心配したのよ。あのハーロックに歯向かうなんて。でも、生きてて良か
 った。」
至近距離で話されると、メーテルの吐息がほほに当たってくすぐったい。目の前
には桜色の唇がある。ここでだれかがドンと背中を叩いてくれたならば、きっと
その人に生涯をかけて感謝することになるだろう。強い西日でうなじが熱い。


                  −6−

「メーテルせんせー!オキシドールくださーい!」
ガラー!と保健室の扉が開かれた。
ぐは!鉄郎はベッドに叩きつけられた。

メーテルは「はい、はーい」とか言いながら、棚から薬を取り出して入ってきた
生徒の治療をしている。瞬間的にベッドから丸椅子へ3メートル近い距離を移動。
どんな仕組みだろうか?瞬間物質移送、ワープ、まさか加速装置では?
(ここでイシノモリはないだろう?)
謎の言葉が鉄郎の脳裏をよぎったが、理解不能なまま流されてしまった。


うーん、とか唸っている鉄郎の横に再び危機が迫っていた。
「こらぁ鉄郎!こんなところで寝ている場合じゃないだろう!」




次回予告:エメラルダスのブルマは海老茶色(乞うご期待!)

<つづくのか?>



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